レラとの出会い
レラと初めて会ったのは、夫と交際を始めて間もない頃でした。
夫の家に遊びに行くと、そこには一匹の北海道犬がいました。
最初に会った時、奥の部屋の引き戸の影からそっと私を見ていたのを覚えています。
名前はレラ。
アイヌ語で「風」を意味する言葉です。
北海道犬という犬種は知っていましたが、実際に会うのはレラが初めてでした。
北海道犬といえば狩猟犬としての歴史もあり、やや気の強い一面を持つ犬も多いと聞いていました。
ただレラはそうした印象とは少し違い、小柄で童顔で、お散歩をしているとよく柴犬に間違われるような見た目でした。
性格も穏やかで、人の様子をよく見ている子でした。
誰かが真面目な話をしていたり、少し険しい空気になったりすると、どこか心配そうな顔で近くに来ることもありました。
当時のレラは13歳。今思えば立派なシニア犬ですが、とてもそうは見えないほど元気で、お出かけが大好きでした。
車に乗るときはピョンと軽く飛び乗り、年齢を聞いて驚いたのを覚えています。
実はレラは、もともと夫の元交際相手が飼っていた犬だったそうです。
二人が別れることになった際、元交際相手は実家に犬を戻すつもりだったそうですが、夫はレラを引き取ることを選びました。
それほどまでに、レラは夫にとって大切な存在になっていたのです。
そう聞くと、複雑に感じる人もいるかもしれません。けれど、実際にレラと接していると、そんなことはすぐにどうでもよくなっていきました。
レラは、人間の事情とは関係なく、ただそこにいてくれる存在でした。
夫が遅い時間に帰ってきて夕食をとっていると、それに付き合うように一緒にご飯を食べる。
夫が具合悪そうに寝ていると、寄り添うように横で眠る。
そんな姿を見ているうちに、私も自然とレラのいる生活に馴染んでいきました。いつの間にか、夜遅く帰ってくる夫に代わって、レラと散歩をすることが私の日課になっていました。
当時の夫は仕事が忙しく、帰宅が遅くなることも珍しくありませんでした。
それでもレラは静かに留守番をし、帰ってきたらうれしそうにお迎えをしていたそうです。
私はレラと暮らし始めて初めて、「犬は家族なんだ」という言葉の意味を実感しました。
ペットというより、一緒に生活する存在。
言葉は通じなくても、気持ちはちゃんと伝わる存在。
そんなことをレラから教えてもらった気がします。
この頃の私は、レラと過ごせる時間があとどれくらいあるのか、深く考えてはいませんでした。
ただ、次の休みにどこへ散歩に行こうか。
そんなことばかり考えていました。
それが、レラとの時間がずっと続いていくような気がしていた頃の、私たちの日常でした。
