知らんぷり、知らん振り、知らぬ風
このところ私が記事でよくつかっている言葉に「振り」があります。
身振り、知ったかぶり、素振り、知らんぷり
振り子、空振り、大振り
この「振り」という言葉の言葉振りと文字の文字振りが、たまらなく好きです。
振りは言葉にしにくいのですが、振りを他の言葉で言い換えている辞書に当たってみましょう。
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以下は、「振り」を愛用の辞書(広辞苑)で引いて、目に付いた言葉です。
・振ること:
単純明快。当たり前すぎて、こけそうにもなりますが、すぱっと切り取っています。振ること。事ですから、出来事。私の好きな言い方をすると、始まりと途中と終わりがあるのです。なるほど。
・振り動くこと:
分析的ですね。「動く」と変奏されると当たり前ながら、すとんと落ちます。こういう語義の定義を見ると、語義とはレトリックだと感じます。ものは言いよう。
・振りぐあい:
ぐあいと来ました。具合という文字を当てます。ぐあいというのも、とりとめがなく感じられます。いいぐあい、いい感じ、いいころあい、いいあんばい。ぐあい、ほど、度合い。何かが身に迫ってくる「程度」という感じでしょうか。
・「バットの振りが大きい」:
「振り」の例文なのですが、文の中でつかわれているのを見ると、「振り」が生きている気がします。言葉はフレーズや文といったつながりの中で生きるのですね。
・外形・姿・なり:
このように言い換えると、異化を覚えます。言葉を置き換えることによって、はっとするわけです。要するに、「振り」は見えるのです。「振り」とは視覚的に知覚するものと言えるでしょう。
以上のうち、気に入った言葉は、こと、ぐあい、かたち、です。
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最近、私の考えている「振り」には二通りある気がします。
1)意志・意思・意図・意識がある。「つもり」という感じ。
2)意志も意図も意識もない。「つもり」が感じられない。
1)は意味に近いのです。メッセージと言ってもいいでしょう。ただし、意味やメッセージは見えませんが、「振り」は見えます。視覚的にダイレクトに迫ってくるのです。
2)は非人称的で匿名的でニュートラル。つまり、「振り」とは、見る人(観る人)の意志・意思・意図・意識の影であり鏡みたいなイメージ。
簡単に言うと、
・振りが勝手に振りをしているのか
・人が勝手に振りに振りを見ているのか
です。
言い換えると、
・振りが勝手に意味を演じているのか
・人が勝手に振りに意味を見ているのか
です。
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辞書での記述は、まだあるのです。
・習慣、しきたり、ふう:
「そんなふうになってしまう」と読んでおきます。「振り」には弾みがあるという感じ。慣れ親しんだ風潮という意味で、風習という言葉が浮んできます。三つのうちでは「ふう」が好きです。
「ふう」と言えば、「振り」は「風」とも書くらしいです。「どこ吹く風」という言い回しを連想します。
知らんぷり されて仕返す 知らぬ風
・ふるまい、動作、挙動:
「振り」という、とりとめのない言葉の挙動不審振りがよく出ている語義ではないでしょうか。和語の愛好者としては「ふるまい」をひいきしたくなります。「立ち振る舞い」なんて、いい響きと字面ではありませんか。
・それらしくよそおうこと、ふう:
これです。これなんです。私の振りのイメージは。ここにも「ふう」があって「?」となりますけど、しらんぷりを決め込みましょう。この語義での例文は「知らぬふりをする」ですから、やっぱりこれです。
「ふう」は意味ありげの「ありげ」というか、「げ」(「気」でしょうか、「気配」の「気」)にも、その存在感というか不在感というか非在感というか、似ています。
あと、「ありげ」に似た感じのものとしては、「なにげに・何気に」の「気・げ」、「もののけ・物の怪」の「怪・け」(「物の気」という表記もあります)、ゲゲゲの「ゲ」。
「ありげ」ですから、実は意味なんて「ない」のです。ありそうで「ない」。意味があるかどうかは分から「ない」というより、決められ「ない」。
ついでに申し添えますが、振りには内容なんてないよう、です。
切りがないので、これで決まりにしましょう。知らんぷりを決め込みます。
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気になったので、「決め込む」を辞書で調べてみました。こんな語義があります。
きめこむ【決め込む・極め込む】
④そしらぬ顔をして意図的にそれをする。ぬけぬけとやる。「ねこばばをきめこむ」
気になったので、「ねこばば」を調べてみました。気になったところを抜きだします。
ねこばば【猫糞】(猫が脱糞後、脚で土砂をかけて糞を隠すからいう)悪行をし隠して知らぬ顔をすること。「ねこばばをきめこむ」
うーむ。
これって、ヒトがやっていることじゃないですか。これこそ、まさに、どこ吹く風。馬耳東風。馬の耳に風。
ねこばばを 猫にすりつけ 知らんぷり
