見出し画像

SideStory⑨:本編四章前-稔之が守る日常の規律と、峻烈なる一本 学園小説relationship

←SideStory⑧
初めての方へ(SideStory用)    Side Story目次
relationship (本編)目次へ  キャラ紹介

Act.1:予期せぬパトロール
十月中旬。沈んだばかりの太陽が残した青い気配が細い通りを薄く満たしていた。

立華大学付属高校写真部、唯一の一年生である阿佐見悠平は二階建てコーポの自室で、今日配達予定のゲームソフトを心待ちにしながらソファでスマホを眺めていた。

突如、玄関のチャイムが鳴る。期待に胸を膨らませて飛び起きた悠平は、入口に駆け寄り扉を元気よく開けた。だが、そこに立っていたのは宅配業者ではなく、切れ長の眼光鋭い稔之だった。

「うわっ!? 関谷さん……! な、なんでここ分かったんですか!?」

短く悲鳴を上げ、反射的に扉を閉めようとする悠平。だが、稔之のつま先が一足早く滑り込んだ。扉の端を力任せに掴まれ、強引にこじ開けられる。

学園小説relationship挿絵イラスト。アパートの玄関で、驚きと恐怖の表情を浮かべながら、右手で反射的に扉を閉めようと身構えている男子高校生・阿佐見悠平のイラスト。黒に近い茶色(ウォームダークブラウン)の髪は、全体的に毛束感があり外側に跳ねている無造作な質感のスパイク状のスタイル。少年らしさを残した幼く柔和な顔立ちに、丸く大きく表情豊かな茶色の瞳と、非常に太く明瞭な「くっきりとした二重のライン」が特徴的。予期せぬ恐ろしい来訪者に冷や汗を流し、口を大きく開けて短い悲鳴を上げている。服装は黄色のTシャツ姿。背景にはアパートの廊下、木製の靴箱、観葉植物の鉢植え、花柄の壁紙などが描かれている。
扉を開けると予想外の
訪問者に驚く
阿佐巳悠平

後ずさる悠平に向かって、稔之は威圧感を込めて一枚の紙を突き出した。

「場所は堀田から聞いた。……部活動行事の一環として、後輩の居住地に訪問とはどういう事だ?」

各部に配布された後期予算決定通知書を低い声で読み上げながら稔之は悠平を睨みつけた。

(それ、自分も一番知りたいですわ! 先輩ら、人の家を自分の部屋みたいにパトロールすんの、マジで勘弁してください!!)

悠平は心の中で絶叫したが、稔之は構わず、彼にとっての「本題」を口にした。

「綾香、一人で来てねーよな? 部活動の一環で来るんなら、西谷や堀田と一緒以外の時は、絶対に部屋にあげるなよ」

学園小説relationship挿絵イラスト。夜のアパートの共用廊下で、右手で一枚の紙(書類)を突き出し、相手を鋭く睨みつけている男子高校生・関谷稔之のイラスト。躍動感のあるツンツンと跳ねた金髪(ブロンド)と、少年らしい精悍な緑色の瞳を持つ。バスケットボールで鍛えられているが少年らしい細身な身体つきをしており、瞬発力のある生のエネルギーの塊であることを感じさせる。普段の強気な笑みは潜め、口を固く結んで威圧感を込めた不機嫌な表情で相手を見据えている。服装は彼の活発さを象徴する青色のジャージ(上着)で、インナーに白のTシャツを着用している。背景には夜の帳が下りたアパートの外観や外灯が描かれている。
威圧感を込めて
釘をさす関谷稔之

半分脅しつけるように釘を刺す稔之。その視線が、玄関奥にある風呂場の入口前の床を捉えた。

「おい、床濡れてるぜ? そのままにするなよ」

悠平が応える前に稔之は上がり込み、風呂場の扉を開いた。

「何だよ、カビだらけじゃねーか。洗剤とブラシ持ってこい」

稔之はジャージを脱ぎ捨てて白い丸首Tシャツ姿になると、手慣れた様子で裾を捲り、風呂場の中へと入っていった。

Act.2:ライムの香りと不器用な恩義
カビ取り用洗剤を壁に吹き付けながら、稔之は呟くように悠平に言った。

「綾香に対して、構いすぎだと思ってんだろ?」

「……まあ、水瀬さんも天然のレベルが突き抜けすぎてますからね。関谷さんが心配する気持ちも、わからんでもないですけど……」

案外、誰に対してでも面倒見の良い性格なのかもしれない——悠平がそんな風に思い直しながら風呂場へと入り、換気窓を開けた。

「悠平、西谷らが来る数を減らしたいんだったら、もっと生活態度をしっかりしろ。あと勉強は……俺は人のこと言えねーけど、何かに打ち込め」

壁や浴槽の内側にまんべんなく洗剤を吹き付けたのを確認しながら、稔之は続けた。

「何かあれば、他人はすぐに言うからな。『あいつは親と暮らしていないから駄目なんだ』ってな」

言わないだけで、綾香や水瀬夫妻も、自分の存在のせいで批判されているかもしれない……。
稔之は込み上げてきた思いを、ライムの香りと共に飲み込んだ。なるべく、彼女にそんな思いはさせたくない。

学園小説relationship挿絵イラスト。関谷稔之(Sekiya Toshiyuki):90年代アニメ調セル画イラスト】
象徴: 物語の「熱」と「実存(ALIVE)」を象徴する、生のエネルギーの塊。
デザイン: toshiyuki.jpg の顔立ち、髪型、雰囲気を100%継承。AIのテンプレート顔、整いすぎた造形は排除。
瞳: 緑色(グリーン)。野性的で力強く、挑発的な眼差しをしている。
表情: 鋭い眼光(挑発的な眼差し)は健在だが、その奥に、ライムの香りと清潔な空間に救われたような、一瞬の静かな安堵を滲ませ、遠く(窓の外、または彼女の家の方角)を見つめている。
髪型: 金髪(ブロンド)。躍動感のある、ツンツンと跳ねたスタイル(toshiyuki.jpgのデザイン)。
服装・装備: シンプルな白の丸首Tシャツ姿(カッターシャツではない)。バスケ部のジャージを脱ぎ、捲り上げた袖から逞しい forearms を晒している(精悍な生の熱量)。
シーン構成: 小さなコーポの清潔になった風呂場。カビが洗い流された白いタイル壁、洗剤のボトル、ブラシ、スポンジ。
空気感: 空気中に小さな光の粒(清澄さ=ライムの香り)が舞い、柔らかい夕陽の光が差し込んでいる。
悠平の部屋の
風呂掃除をしながら
綾香や綾香の両親の事を
思い起こす関谷稔之

壁の汚れが白く洗い流され、洗剤のライムの香りが立ち込める。その清潔な香りに触れた瞬間、稔之の胸の奥に、かつての孤独な夜をかき消すような静かな安堵が広がった。彼にとって、この『整えられた日常』こそが、自分を救ってくれた水瀬家への、不器用な、けれど精一杯の報い(恩義)だった。

「終わったぜ、悠平。お前も一人暮らしなんだから、気を付けるようにな」

Act.3:禁断のピックル
稔之は風呂場を出ると、玄関口に近い台所へと向かった。

「ありがとうございます、関谷さん」

稔之のことを誤解していたかもしれない——神妙な気持ちになりながら礼を言う悠平を尻目に、稔之は冷蔵庫の扉をすかさず開けた。

「それにしても喉が渇いたな。何かもらうぜ」

冷蔵庫を見回した直後、稔之の動きがぴたりと固まった。

「あっ!!」

冷蔵庫の中に視線を向けた悠平は、その理由を一瞬で理解し、絶句した。

そこには、前回のパトロール時に綾香が飲み残していった、ピックルのペットボトルが入っていたからだ。

ボトルには、綾香の丸っこい文字で訪問時の日時が書かれていた。

悠平が何か言うより先に、稔之はボトルを手に取ると、一切のためらいなく口をつけて一気に飲み干した。

(ひ、ひえーっ!!!! 水瀬さんの飲み差しを直飲みしたぁーーーーーーっ!!!)

予想外の、そしてあまりに直情的な稔之の行動。悠平は戦慄し、その場に硬直した。

稔之は空になったボトルを置くと、凄みを効かせながら振り返った。

「悠平……。綾香に少しでもおかしな真似をするとどうなるか、分かっているんだろうな?」

鋭い殺気に、悠平はただ身震いするしかなかった。

(やっぱりこの人、ちょっとおかしいーーーーーっ! 大丈夫です。関谷さんから水瀬さんを奪おうとする男なんて、この世には存在しませんから!!!)

Act.4:緊急対策会議と「神域」の一本
翌日の昼休み。

朝一番で悠平から『水瀬さんの持ってくるお菓子は、関谷さんも咀嚼している可能性有』との報を受けた写真部部長・西谷は、綾香を除く部員を緊急招集した。

放課後。綾香が元気よく部室に入ってくるなり、西谷は内心の動揺を一切見せず、いつもの穏やかな表情のまま告げた。

「水瀬さん。今度から部活にお菓子を持ってくる時は、必ず個包装の物にするようにしてね」

学園小説relationship写真部部室の机で両手を組んで座り、こちらへ向かって穏やかに話しかけている男子高校生・西谷武久のイラスト。柔らかい質感を思わせる短く整えられた栗色(チェスナットブラウン)の髪と、年齢よりも若く見える親しみやすい「童顔」で、温厚で人当たりの良い雰囲気を醸し出している。碧色(エメラルドグリーン)の大きな瞳には普段の優しい光を宿し、口元には常に絶やさない柔らかな微笑みを浮かべている。服装は白いワイシャツに落ち着いた赤色のネクタイを締め、濃紺のブレザーを端正に着こなしている。机の上や背後の棚には、複数の一眼レフカメラやフィルム、印画紙(PHOTO PAPER)の箱などが整然と並び、窓からは穏やかな光が差し込んでいる。
内心の動揺を隠して
穏やかに忠告する西谷武久

「え? いきなり? どうして?」

不思議そうに首を傾げる綾香に、西谷の脇に控えていた悠平と堀田が、声を揃えて発した。

「感染予防対策です」

「僕の家の冷蔵庫のピックルも、念のため処分しました。これからは飲み切れるサイズの物でお願いします、どうか!」

「むー。わかった。了解!」

大して疑問を持たない綾香の返事に、三人は一斉に安堵の溜息を漏らした。


——さらにその翌日。立華大学付属高校の武道場では、西谷が所属する『特別進学科』の柔道の授業が行われていた。

対戦相手である教師の身体がふわりと浮き、畳に吸い込まれるように弧を描いた。

乾いた音が一つ、静寂を切り裂く。

「一本! それまで!」

勝負が決まった号令と共に、試合を見守っていた生徒たちから歓声が上がった。

「彩賀、凄い!! 先生相手に一本決めたぞ!」

彩賀と呼ばれた少年——亮哉は、乱れひとつない呼吸のまま、静かに礼をした。最初から結末が決まっていたかのような、あまりに鮮やかで合理的な一本だった。

彩賀 亮哉(Saiga Ryouya):90年代アニメ調セル画イラスト】
象徴: 物語の「極限」と「知性の断罪」を象徴する、神域の観測者 。
デザイン: 圧倒的に端正な顔立ちを、90年代アニメ特有のシャープな主線とセルシェーディングで現像 。AIテンプレート顔、左右対称すぎる造形、現代的なエフェクトは100%排除。
瞳: 知性と冷徹さを宿した 鳶(とび)色の瞳 。激しい試合の後であっても、その眼差しはどこまでも清涼で、揺るぎない。
髪型: さらりと整えられた 鳶色の髪 。額に張り付いた僅かな汗が、物理的な衝突があったことを唯一物語っている。
服装: 真っ白な 柔道着 を着用。帯をきっちりと締め、乱れひとつない着こなしが彼の合理性を象徴している。
シーン構成: 立華大学付属高校の武道場 。背景には畳(マット)が広がり、遠くにスコアボードや驚愕する生徒たちの気配がぼんやりと描かれている。
動作・表情: 試合終了後、対戦相手に向かって静かに 一礼(頭を下げる) をするポーズ 。表情には傲慢さも高揚もなく、ただ「予定通りの結末」を迎えたことへの淡々とした諦念が漂っている。
柔道の対戦相手の教師に
勝利し、静かに一例する
彩賀亮哉

その一部始終を観測していた西谷は、思わず呟いた。

「……柔道はやった事ないって言っていたけど。受け身も鮮やかだし、彩賀、君はいったい……?」

親友に対する疑問は、深まる一方であった。

(SideStory⑨終わり)
次の話へ↓

初めての方へ(SideStory用)    Side Story目次
relationship (本編)目次へ  キャラ紹介



いいなと思ったら応援しよう!