家族が突然入院。お金のこと、何から手をつければいい?──病院の相談員が、順番に全部書きます
深夜2時。眠れずにスマホで「入院費 払えない」と検索しているあなたへ。
今後病気はどうなるのか。いつ退院できるのか。退院したあとの生活は、今まで通りではなくなるかもしれない。不安しかない。どうしよう。相談できる人なんて、いない──。
この記事は、そういう夜を過ごしている家族のために書きました。
私は病院で医療ソーシャルワーカー(MSW)として働いてきた社会福祉士です。突然の入院でお金と手続きに直面した家族に、現場で何百回と説明してきたことを、ここに順番に全部書きます。読み終わる頃には、明日の朝、何から手をつければいいかが見えているはずです。
ある家族の話
実際にあった相談をもとにした、ある家族の話をさせてください(プライバシーのため、複数のケースを組み合わせて細部は変えています)。
30代の息子さんと、お父さんの2人暮らし。息子さんには脳の血管の持病がありましたが、仕事の忙しさを理由に、通院も薬も自己判断でやめてしまっていました。
ある日、脳の血管が破れて救急搬送。緊急手術で命はとりとめたものの、出血による脳のダメージが大きく、意思疎通ができない、口から食事がとれない、手足が動かない、人工呼吸器をつけた状態になりました。医師からは「今後、この状態から良くなることはありません」という厳しい説明。
お父さんは、息子さんが通院をやめていたことを知っていました。「受診しろよ」と声はかけていた。でも、まさかこんなことになるとは思っていなかった。
そして現実の問題が押し寄せます。息子さんにどれだけ貯蓄があるのか分からない。口座の暗証番号も知らない。入院費は、当面の間お父さんの貯蓄で何とかするしかない──。
先に、ひとつだけ伝えたいこと
このケースの一番の問題は、通院と薬を自己判断でやめてしまったことでした。お父さんも、そこを一番後悔されていました。
私たちには医学の知識も経験もありません。だから、医師の言うことは守っておいた方がいい。もし「この薬、意味あるのかな」と思ったら、その疑問をそのまま医師にぶつけていいんです。医療は、医師と患者の信頼関係の上に成り立つもの。疑問を聞いて、納得して、自分の状態を理解する。それで治療はもっと意味のあるものになります。
とはいえ、時間を巻き戻すことはできません。後悔を消すこともできない。
でも、今できることを知る・調べる・助けを求めることは、今日からできます。
現場で実際に見てきた「取りこぼし」
お金の面で、家族がつまずくポイントは実は決まっています。現場で「あぁ、それ早く言ってくれれば…」となったパターンを3つだけ。
窓口で70万円請求された人。
医療費が高額になっても、自己負担には上限がある制度(高額療養費制度)があります。今はマイナ保険証を病院の受付で読み込ませるだけで適用されるのに、使っていない人が一定数いる。特に月をまたいで資格確認が遅れると「先月分は一番高い区分で計算されています。あとで還付を受けてください」となって、たった1週間の入院でも窓口で70万円請求された方も実際にいました。マイナンバーカードを作るのが不安な方も、資格確認書で同じ対応ができます。
「健康だから公的保険すら入ってなかった」という無保険の人。
たまにいらっしゃいます。でも、国民健康保険に入れば1ヶ月の入院費の自己負担には上限がかかる。それを説明したら「すぐ市役所行ってきた!」という方もいました。日本の制度は、本当によくできているんです。
毎月の保険料は確かに負担です。でも、いざという時の恩恵は保険料よりはるかに大きい。医療費の7割を持ってもらえて、残りの自己負担にも上限までかかるんですから。入っていないだけで、もったいない。

※金額は所得区分によって変わります
それと、ひとつ怖い話も。国保は「入りたくなった日から入る」ものではありません。加入の手続きをすると、未加入だった期間の保険料をさかのぼって請求されます。放っておくほど、あとでまとめて払う額は大きくなる。未加入に気づいたら、早く動くほど傷は浅く済みます。
税金の申告をしていなかった人。
国民健康保険の方は、収入の申告をしていないと「収入が分からない人」として、一番高い所得区分が自動適用されます。お金がある人はまだいい。お金がない人こそ、申告していないと、収入の高い人と同じ扱いにされて泣きを見ます。
──ここまで読んで、「うちは大丈夫かな?」と不安になったかもしれません。
大丈夫です。助かる道は、ちゃんとあります。国の正規の制度だけで、思っているよりずっと守られています。ここから先は、どのドアを・いつ・誰に・どう開けるかという具体的な話。私が病院の相談室で家族に説明している、その順番のまま書きます。
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