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掌編『ハンカチを』 ― #シロクマ文芸部

ハンカチを、国境沿いに連ねていました。

国中から集まる小さなハンカチは、殆どが真っ白のものが選ばれており、レースや綿といった生地の違いはあれど、平和を願う人々の言葉やお手製のイラストが描き込まれています。

毎日毎日、たくさんの段ボール箱が基地に届きますので、これをモスグリーンのピックアップトラックに乗せて、わたしはいつも国境沿いを走るのです。

隣国との境に続く鉛色の有刺鉄線は、この国のもつ岩質の土色に溶け込み、あまり目立ちませんでした。
どれだけ鋭利に作り込んでも、隣国からの罪人たちはこれをくぐり抜けてやって来ます。
彼らは捕らえられ、傷の手当を受けながら口を揃えて、

「気づかなかったな。あんなところに柵があっただなんて」

と言います。

だからわたしたちは、彼らの目にはっきりと、そこが世界の境であることを示さなければならなくなりました。

これはもちろん、わたしたち自身の営みを守るためでしたが、同時に彼らの身体を守るための目印でもある。
その優しさを伴う取り組みに、わたしたちはある種の義心をひとつとし、ハンカチを、国境沿いに連ねることになったのです。

このようにすれば、必ず彼らは国境に気づき、国境を思い知ることになる。

わたしたちの職務は、ずいぶんと気楽になりました。
ハンカチを潜る隣人を射撃することを躊躇しなくなったからです。

土埃と、紅い飛沫と、爆炎に焦がれたハンカチを、一枚、一枚、わたしは今日も交換して回ります。

2025.06.08/掌編『ハンカチを』― シロクマ文芸部


*あとがき
初めて、 #シロクマ文芸部 さまのお題「 #ハンカチを 」への参加作品として書かせていただきました。
お題参加はドキドキしますね。

↓今回の参加はこちらのお題!

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