見出し画像

解読できましたと部下に言われてた私の、10年越し音声入力論

10年以上前、多分2013年あたりから、私は街中で独り言を呟く、かなり怪しい奴でした。

当時はまだ、スマホの音声入力 は 誤字脱字のオンパレード。

そんな私が、最新のAI音声ツールと出会い、ついに「脳内垂れ流し」の極致に達したことを書こうと思います。



恵比寿で、「解読」されていたあの頃

まだ私が独立する前、スタートアップ企業で会社員として、馬車馬のように(?)元気に働いていた頃の話です。

当時のオフィスは、恵比寿ガーデンプレイスの中にありました。

恵比寿駅からそこそこ歩く、あの動く通路「スカイウォーク」を抜けた先。

移動中の時間すら惜しかった私は、歩きながら、ずっとiPhoneに向かって仕事のメモや連絡を吹き込んでいたんです。

「〇〇の件、いついつまでにこうこうこうしたいので、この件を誰々さんに伝えて、その確認が取れたら誰々さんに正式な依頼を送ってください。」

みたいな。なんてことないよくありそうな業務連絡や依頼。

でも、当時の音声入力の精度は、今思えば本当に、愛嬌がありすぎるレベルでポンコツでした。

「〇〇の件、子宮確認してください」

子宮。

いやいや、どんな緊急事態ですか。

そんな、今なら一発でアウトになりそうな誤字脱字を、移動中に何かを伝えようとするたびに、そのまま確認もせず同僚や部下たちに送りつけていたわけです。

クライアントや大事な取引先には、さすがに送っていません。(一応、社内のチャットメッセだけだよ、と言い訳。)でも、社内の人間には、日常的に、かなり怪しいメッセージが届いていたはずです。

それでも、当時の周りの人たちは、本当に優しくて、温かい人たちばかりでした。

「れいこさん、大丈夫です。言いたいこと分かりますから」
「これ、ちゃんと解読できてるので、気にしないでください!」

解読。

私の仕事の指示や依頼は、いつの間にか、古代エジプトのヒエログリフか何かのようになっていたの。

本来であれば、誤字脱字のない、ちゃんとした文章を送るべきです。それは当然のことで、「まあいっか」と思っていたわけでは、決してない。でも当時の技術では、確認する時間もなく、移動しながら送ることの代償として、ある程度の誤字はやむを得なかった。そのしわ寄せを、優しさで受け止めてもらっていたことに、いつも申し訳なさを感じていました。

だからこそ、今があります。

音声入力にAIが加わったことで、私の「解読が必要なメッセージ」は、ほぼゼロになりました。

誰かの優しさに甘えなくていい。誰かに余計な手間をかけなくていい。

それだけで、ずいぶん気持ちが楽になりました。

技術が進化するとは、こういうことなんだと思います。

それが、です。

今や、スマホに向かって適当に、主語も述語もバラバラに「あー、あの件だけど、やっぱりあれで、あ、でもこっちにして」と呟くだけで。

AIが「こういうことですね?」と、完璧に整った、美しい日本語のビジネスメールに翻訳してくれる。

これ、本当に同じ地球の出来事なんでしょうか。

技術の進化に、私はただただ、震えるばかりなのです。

もっとも、iPhoneのマイク自体の精度も、買い替えるたびに(それが直接の理由かどうかは分からないけれど)確かに上がってきていました。年々、「解読」を必要とする頻度は減っていったのです。

でも、そこにAIが加わった瞬間から、話が変わりました。

精度が上がる、というレベルではなく。便利さのステージそのものが、ぐっと上がった、そんな感覚です。


AquaVoice、SuperWhisper、そしてTypelessの三つ巴

そんな音声入力歴の長い私ですが、最近はいくつかのツールを、使い分けて使っています。

まず、スピード重視のときは「AquaVoice」

指定したショートカットキーを押しながら、話したそばから、テキストが画面にどんどん吸い込まれるように表示されていく。

ボタンを離した瞬間には、瞬時にテキストになる。

この「打てば響く」ようなスピード感は、PCの前でガリガリと仕事をしているとき、脳の回転を止めないためにいいなあ、と思っています。

一方で、「SuperWhisper」というツールも使っていました(今は使わなくなりました)。

短い文章を箇条書きで出力したり、用途に合わせてモードを個別設定したりするのに、これがなかなか便利なんです。出力したいパターンをあらかじめ設定しておき、吹き込みの際にどのフォーマットで出力したいかを選択すると、その形式で出力される。箇条書きにしたいとき、メッセージのように文章で記したい時、特定の定型パターンで出力したい時。便利(だった)。

でも、このツールを入れたタイミングが悪かった。
一番仕事が立て込んでいる時期に、導入を試みてしまったんです。

設定の動画もすごく分かりやすかったけれど、それを見てじっくりセットアップする余裕が、当時の私には残っていなかった。
結局、「なんちゃって使い」のまま、なんとなく使い続けていた感じです。

「ちゃんと使えてる気がしない」という感覚を引きずりながら、便利なAquaVoiceをメインに使いつつ、時々SuperWhisperを引っ張り出してくる、そんな行ったり来たりが続きました。

このとき学んだのは、「新しいツールを導入するときは、使い始めの気合いと設計が大事」という、あまりにも当たり前な教訓です。

そして今、もう一本加わったのが「Typeless」というツール

これを即導入した理由は、ひとつです。

スマホに対応していたから。

AquaVoiceもSuperWhisperも、PCでの使用がメインでした。でも、私が音声入力を最もしたいのは、移動中のスマホ、まさにあの恵比寿スカイウォークを歩きながらの瞬間です。

Typelessは、iPhoneのカスタムキーボードとして入れると、あらゆるアプリの入力欄で音声入力が使えるようになる。

「これだ」と思いました。

スマホのロックを解除して、入力欄でアプリを選択して、すぐに吹き込めるまでほんの一瞬待って、……という、ちょっとした手間(これが地味に面倒くさい)を差し引いても、お釣りが来るほどの便利さです。

支離滅裂に話した内容を、綺麗にまとめ、整理して出力してくれる。

今のところ(2026年6月末現在)、自分はAqua Voice とTypelessを使い分けして利用しています。


▼ ツール、こちらです:Aqua Voice/ SuperWhisper/Typeless

AquaVoice(アクアボイス) Mac/Windows対応。話した瞬間にテキスト化されるスピードが最大の魅力。画面の文脈を読んで出力を調整してくれる賢さも備えています。まずはここから試してみるのがおすすめです。 → AquaVoice公式サイト

SuperWhisper(スーパーウィスパー) Mac/Windows/iOS対応。モードを自分でカスタム設定できるのが強み。議事録用・メール用・チャット用など、用途ごとの出力スタイルを作り込める、本格派のツールです。 → SuperWhisper公式サイト

Typeless(タイプレス) Mac/Windows/iOS/Android対応。スマホのキーボードとして入れられるのが唯一の特徴。移動中に使いたい人は、まずこれ。週4,000語まで無料、30日間Proトライアル付き。 → Typeless公式サイト


溜め込むだけの「お勉強」をやめて、Obsidianに思考を還流する

私は、Typelessで吐き出した脳内の思考(ゴミも混ざることあり)、原石たちを、まず「Drafts」というアプリに放り込みます。

そして、その中から「これはちゃんと残しておきたいな」と思った感情や日記、アイデアだけを、Obsidianというノートアプリにリンクさせて、ストックしていく。

実は私、昔から「参考書や本を買っただけで、勉強した気になって満足する」という、非常に質の悪い癖がありまして。

メモも同じなんです。

ただただ、思いついたことを書き溜めて、フォルダの中に放置して、二度と見返さない。

「私、こんなにメモしてる、すごい!」と、自己満足の海に溺れていた。

でも、AI時代になって、気づいたんです。

AIに私の代わりに考えてもらうためにも、まずは「私自身がどう考えているか」という、生々しい思考のデータが、一箇所に綺麗にストックされていないと意味がない。

だからこそ、Obsidianを「私の脳みその、一番綺麗な引き出し」として、整備し始めることにしました。

頭の中にある、取り留めのないモヤモヤを、音声入力で一度すべて吐き出す。

それを、AIに少しだけ整えてもらって、Obsidianにそっと置いておく。

この循環が、私の散らかりがちな脳みそを、驚くほどクリアにしてくれるんですよね。


エアコンの風に負けた、私の「声」というインフラ

そんな風に、音声入力ライフを謳歌していた私に、突然の悲劇が襲いました。

夏が始まり、オフィスでエアコンをガンガンに使い始めた、ある日のこと。

喉が、痛い。

唾を飲み込むのも、ちょっと辛い。

いつもなら、キーボードを叩くのが面倒くさくて、「ねえ、これやっといて」とスマホに話しかければ済んでいたのに。

声を出すこと自体が、ちょっとしんどい、な状態になってしまったんです。

その瞬間、なんだか 困りました。

「手で打つより、声で出す方が楽」という前提が、私の喉の健康によって、ギリギリで成り立っていたことに気づかされたからです。

どんなに優れたAIツールがあっても、私の「声」というインフラが途絶えたら、ただの文鎮になってしまう。

それ以来、私は必死で喉のケアを始めました。

喉スプレーを常備し、こまめに水を飲み、怪しい色の喉飴を舐める。

AIを使いこなすための第一歩が、まさか「喉の保湿」だったなんて、誰が想像したでしょうか。

でも、これって実は、すごく本質的なことな気がするんです。

AirPodsが世に出たばかりの頃、耳から白い「うどん」をぶら下げて、街中で独り言を言っている人を見て、私たちは「えっ、何あの人……」と、ちょっと引いていましたよね。

でも今、そんな光景は当たり前になった。

音声入力も同じです。

みんなが当たり前に、スマホに向かって自分の思考を呟く時代が、もうすぐそこまで来ている(いや、もう来てるかな)。

だからこそ、私たちは、自分の「声」という、一番原始的で、一番大切なアウトプットの道具を、もっと労わってあげなきゃいけない。


AIがどれだけ賢くなっても、私の頭の中を吐き出すための「声」と、それをストックする「場所」だけは、自分で守り続けなければならない。

テクノロジーが進化すればするほど、最後に戻ってくるのは、自分の身体という、一番アナログな存在なんかもしれません。

今日も私は、喉スプレーをシュッとひと吹きして、スマホに向かって囁きます。

「ねえ、今日の私の頭の中、ちょっと整理して」

取り留めのないこの文章になってしまいましたが、便利なツールがどんどん出てきているので、それらをうまく使って、これからも自分の「生々しい思考」を形にしていけたらな、と思います。あと、喉は大事に。


いいなと思ったら応援しよう!