#中長編・恋愛小説「恋なんて」No8・二章➀・(恋愛同盟)・1,670文字。
【二章】➀(恋愛同盟)令和七年九月二十ニ日(月)
マダムが草加煎餅を持参して、訪問してくれた翌日の九月二十九日の月曜日に、私は代官山にある彼女のアトリエ兼ブティックを訪ねた。
朝の早い八時の約束に間に合うようにと、タクシーを飛ばしても十分足らずで着いた。
南青山から代官山は、若い人の足でなら三十分で行ける距離だった。
「マダム・ミドリ」は、一階はブティックで、二階はアトリエになるが、三階は彼女の生活空間になっていた。
彼女の自宅は、南青山にあったが。
仕事の忙しい時には、三階にある部屋には、キッチンもバスルームもベッドも置いてあるが、少女趣味のような赤毛のアンが現れそうな様相をした可愛らしい部屋の作りをした部屋で、彼女は一ヶ月以上も過ごすと、自宅には帰らなかった。
建物は、北海道の札幌にある時計台のような白い木造の建築物で、趣があった。
約束の時間の三分前になって、私はスマホで彼女の店に電話した。
「おはようございます。三条麗子です」
「『麗子さん、ドアは開けていますのよ。どうぞ、お入り下さいな』」
私がドアノブを回して中に入ると、仕事着のマダムがいるが、彼女の服装は、ブリティッシュ・トラッドだ。
ターターンスカートに紺のブレザーが、彼女の英国を愛する佇まい。
彼女の帽子と共に、彼女の英国スタイル・ファッションは、ファッション雑誌でも取り上げられたことがあるが、もうずっと続けられていた。
今日は、マダムが私のために、素敵な帽子をプレゼントするために、頭の採寸をしてくれるのだ。
「『麗子さん、サイズを計りますから、そこの椅子に座って下さる?』」
マダムは、眉毛の約二センチ上から後頭部の出っ張りのある部分をメジャーで一周させて計るが、帽子を被るためのゆとりを持たせるためには、指の一本から二本分の約一センチ分を足すのだという。
「『これからの寒い季節に合うつば広のお帽子を作りたいと思うのだけれど、お色は黒が良い?それともブラウンかワインレッドが良いかしら?』」
「カシミアのコートなら、黒とキャメルとワインレッドとベージュを持ってるから、どのお色にも合うのなら、やっぱり黒かしら?」
「『そうよね。黒なら間違いないわね。OKよ。黒に致しましょう』」
「マダムは、この度は、何故私にお帽子をプレゼントなさりたいのかしら?」
「『それはね、題して、恋愛同盟を組みたいからよ』」
「なんですの?恋愛同盟?」
「『辞書で調べてご覧なさいな。貴方のお得意のインターネットでも分かるわよ。同盟とは、同じ目的のために、同じ行動を取ることを約束する仲間のことをいうのよ』」
「『手始めに、ファッションからアドバイスをさせて頂きますわね。その次には、お肌ね。それから筋力アップの運動やダンスなども。麗子さんは、ソシアルダンスをご主人となさっていたわね』」
「それをマダムと私が恋のために、カリキュラムのようなことをするのですか?」
「『私は七十ニ歳だけれど、見た目年齢は六十五歳なのよ。お肌年齢は五十歳なのよ。これから忙しくなるわよ。若い時代とは違うのよ。恋を謳歌するためには、お金も掛けなくちゃね』」
「そうね。確かにお肌は磨きたいとは思うわ」
「『麗子さん、いざ、ベッド・インなんてことになったら、貴方は肌を見せる自信はあるの?』」
「ベッド・インって、あれの事かしら?」
「『そう、あれのことよ。小娘じゃないのだから、そんなに頬を赤らめなくってもいいわよ』」
「まあ、そんな大それたことは、夢のまた夢の世界だわ」
「『麗子さんは、もっと自信をお持ちなさいな。貴方はまだまだ美貌はお持ちよ。そうねえ、お肌を磨いたら、六十歳でも通るわよ。三十歳過ぎたら、見た目年齢よ』」
「『若い頃からのお肌磨きに差が出る年代が、三十代だからね』」
「『エステサロンに予約しなくちゃね。私は毎週通うのよ。帽子が忙しかろうと、自分優先だからね。任せなさい。貴方の恋が成就するための同盟だから』」
こうして、私はマダムの恋愛同盟のメンバーになったのでした。
♥ここまで、読んで下さり有難うございました。
(No9)二章②に続く。
