差し障りの無いナラティブばかりを摂取していないか?「モータルコンバット/ネクストラウンド」で鬱屈した日常をFATALITYにしろ!
極彩色の映画成分を垂れ流しハリウッドから放たれ、本邦に着弾する爆裂彗星のような映画が6月5日(金)に封切を迎えた。予約チケットを手配し、一路映画館へ。「マスター・オブ・ユニバース」?あぁ…そっちもあったね。出来れば木曜には、劇場から追放される前に観に行きたい。(※6/11 観に行きました!マテル社なに撮ってんの!?)
なんでこんな異常熱量ホビー映画がバッティングするんだ。兎にも角にも、本項の主題は「モータルコンバット/ネクストラウンド」である。15日現在、「マイケル」、「魔女の宅急便IMAX」も19日は来るため、上映館は狭まっている。今すぐチケットをとってこい。
真田広之が獄炎を吹き、浅野忠信の目が光る!「モータルコンバット」(2021)の異様な熱量
そう、忘れもしない2021年の夏の話をしよう。「ゴジラvsコング」「そばかす姫」など特大タイトルが闊歩する劇場に、「モータルコンバット」の文字を見た。モータルコンバットは北米発2D格闘ゲームであり、なんと日本未発売!なんでかって、キンタマをブチ壊したり首をヘシ折ったり、真っ二つにしたり地下鉄に叩きつけてミンチにしたりと、とにかく敗者を辱めるグロテスクなフェイタルムーブが特徴の容赦なきゴア表現が本邦では許されざるものであるからである。斯くいう私も格闘ゲーマーの末席、存在は知っていたもののプレイはしたことがなく、いわゆるDIEジェスト(死亡シーン集)を動画サイトで見てウヘェ~~~~とビビっていた程度である。ほう、これはなんだか面白そう。痛い目を遭っても良いから翌週には見よう。そんな事を言って多分ゴジvsコンを観に行ったのである。結果からすれば愚かだった。

なんと公開1週目であらかたの劇場を放逐されてしまったのだ。……そんなに詰まんなかったのか?みるみる間に劇場は縮小していき、土曜日になる頃には都内上映館は1館(丸の内ピカデリー・ドゥルビーシネマ)のみである。人々は阿鼻叫喚し、残存する丸ピカを作中の人類最後の砦、「ライデンの寺院」と呼び、茨城から、栃木から、大宮から、そして足立から集結したのだ。全然盛ってないぞ。
そんなこんなで初の「ドゥルビーシネマ」体験になった「モータルコンバット」だが、出始めのハサシ・ハンゾウ(真田広之)とビ・ハン(ジョー・タスリム)の殺陣でもうただならぬ様相を呈しており、ポップコーンを片手に唖然とした記憶がある。血しぶきがこれでもかと飛び散り、ザクッとかグサッとかグチャッとか残虐SEのオーケストラにポップコーンにしがみついてガタガタ震えるしかないのだ。この映画は容赦ないゴア描写、スピーディで即死上等なスレスレのところを致命撃が飛び交うバトルが2時間ミチミチに詰まっているサドンデスバトル・ムービーなのだが、それでいて残酷描写、惨殺描写が画面を塗りたくるのに、何故か陰惨さが少ないどころか、スカッとして爽快な映画なのである。
映画とは非現実を楽しむ娯楽だ。銀幕のひとときはこの世の理から解放される。グチャッとかザシュッとか人体が容赦なく吹っ飛ぶところにグロさよりも、「景気良さ」が勝るのである。
「モータルコンバット」はこの閉塞した令和において「好景気映画」なのだ。

実は推し。
見ていればみんな好きになる!格ゲー原作だからこそ「全員主役の画面作り」
一作目「モータルコンバット」では家族を大切にする格闘家、コール・ヤング(なんと映画オリジナル!)をはじめ、世界の命運をかけた9回オモテ人類負け越しのデスゲーム「モータルコンバット」の宿命を知る女軍人ソニア・ブレイドと特殊部隊少佐ジャックス、そして一筋縄ではいかない傭兵カノウ、人間界の守護者、ライデン(浅野忠信)の弟子であるリュウ・カンとクン・ラオの中華拳法家などの人間界チームと、残虐無比ルール無用なんでもありの魔界軍チームのチーム戦が描かれる。
格闘ゲームである以上、対戦者たちは敵も味方も全員が「プレイアブルキャラ」だ。その誰もが見せ場があり、どちらが勝ってもおかしくない死闘が繰り広げられる。目からビームを出したり、冷気を操ったり、口から火を噴いたり、とにかく戦い方も多種多彩で画面が鮮やかだ。1作目でも十分見ごたえがあるが、2作目「モータルコンバット/ネクストラウンド」では実に16名のキャラクターたちが実に2時間10分に及ぶバトルを繰り広げる。……まるで「全員主役」の演芸会のようであるが、これを全員戦わせて見せ場作ってそのうえでストーリーを進めて、まとまっている奇跡のような映画なのだ。
2時間バトルしっぱなしであれば1分の無駄も許されない。バトルが終わって一息つこうと思ったら刺客が襲ってきて瀕死になるし、ふてくされてる参加者を無理やり引きずってリングに乗せなくたっていい。神様が勝手に転送するので。キーアイテムを手分けして探しに行ったら次のシーンには大広間のど真ん中でビカビカ緑色に光っている。だいぶオモロなのだが、これで許される勢いの良さがモータルコンバットと言える。

ナンデ?ちなみに真ん中のボスっぽい異形はマスコットです。
これでいて、ただ単純に勝負を決めるために戦っている訳でないのがポイントだ。父の仇との因縁の戦い、4000年前の勝負の続き、女同士、男同士、友情の決別など、激重感情を乗っけて各々が殺し合う。ツイッターを見ていると女性ファンもかなり増えたようだ。特にビ・ハンとハンゾウ、リュウ・カンとクン・ラオの関係性は女性ファン必見の湿度がある。ただ殺し合っているわけではない。お互いの全てを賭けて殺し合っている。生き死にを賭けた戦いで、確かに彼らが生きた証拠が血と肉で描かれているのだ。


とはいっても、ところどころホッとするシーンや笑えるポイントもあり、殺し合っているのに何故か暖まる。神懸ったバランス感覚で観客を楽しませてくれる。彼らの生き死にをまざまざと見せつけられた時、銀幕が明るくなるころにはみんなを好きになっているに違いない。殺し合いなのだが、ある種「スポーティ」な作品に仕上がっている。
モーコンに「安全圏無し」!「お約束無し」!全員即死ノーガード・ストーリーがスリルを、生きる実感を与えてくれる。
細かいストーリーとか衝撃の展開だとか、何から何までおかしかったので口が裂けても「ネクストラウンド」の見どころについては話せないのだが、4年の収録期間にブランクがあったにも関わらず、「モーコンⅠ」で出てきたキャラクターたちは同窓会のように顔をそろえるし、あれ、お前……って人もちらほら。これネタバレになんのかな。
それはそれとしても、「モーコンⅡ」は完全に無法地帯のような映画で、「絶対これはやっちゃダメ」みたいなのが無くあっさりブッ殺してくるし、「え~、そんなのやっていいの?」みたいなことを平気でやってくるので、もう滅茶苦茶だ。この映画に「安全圏」なんかなくて、どっからでもブッ殺してくるし、何やってもいいのである。2時間ずっと度肝を抜かれっぱなし、顎が外れて戻らないうちに脇腹が痛くなるようなFATALITYが飛んできて、お腹の変なところがけいれんして戻ってこれなくなるのだ。こんなのが2時間続くと、なんかおかしなものを見せられている気分になってくるが、ところがどっこい、恐ろしくきれいにまとまっているのである。
減点方式では佳作以上程度かもしれない。しかし加点方式では「ウーン、450点!!」とか言ってしまう映画だ。中身が無いなんて言わせない。2時間10分チョコたっぷりだったはずだ。信じられない尺回しを魅力的なキャラクターたちと肉弾でもって紡いでいく、パワフルノーガード・ムービーなのである。
みんな命を賭けて明日の為に戦っている。千切れ飛ぶ血肉を、人生を銀幕で見届けたとき、私たちが過ごしている日常もまた「モータルコンバット」なのだと気づかさせてくれる。生きることとは、戦うことだ。


日本を代表する二大ハリウッドスターが大人げなく暴れ回る「モーコンⅡ」を見逃すな!
決して万人に受け入れられる映画ではないかもしれない。だが私たちは永遠にこの映画を覚えているだろう。だって魂の底から「これこそが映画だ」と感じたから……
