ひらがなに沼って|第3回「は」は、したたかに生きている
文字というのは、画数が増えたり動きが増えるとバランスを取るのが難しくなりそうなものだけれど、「は」というひらがなは、いつでも綺麗に収まってくれる感じがする。原稿用紙のマス目にピシッとはまる感じが気持ちいい。
「何々は」という風に、主語を示すのに絶対出てくる「は」だけれど、こういう時の「は」は忍びのように存在感を消している。その文章は間違いなく「は」の支えによって成り立っているにも関わらず、だ。
「私が支えてあげている」なんてことは言わずに、どっしりと構えてくれている。なんて頼もしいヤツなのだろう。
でも、「は」ってそれだけじゃない気がする。
書く時には「は」だけれど、読む時には「わ」という元よりちょっと厚めの音になってアピールしてくるのがいじらしい。慎ましいフリをして、「いるよ」と影から存在を主張してくる。かわいいヤツめ。
それにしても、「は」ってヤツは立ち回りが素晴らしく上手い。目立ちたい欲望を上手に隠しながら裏方に徹し、頼りになるなと思わせていたかと思えば、時々ひょっこりとお茶目な姿を見せてくる。こんな後輩がいたら目が離せなくて、構いたくなって、つい奢ってしまいそうだ。
どうやら「は」は、思っていたほど単純なヤツではないらしい。
最初は、いつもそこにいてくれて、安心感のある字だなと思っていたのに、いつの間にか「は」のことが気になって仕方なくなっている自分がいる。もっと、「は」のことが知りたい。
どんなことも受け止めてくれる優しさの奥にこそ、「は」の魅力は詰まっているのかもしれない。
その魅力に気付いた時にはもう、「は」から逃れられなくなっていることだろう。
▼「ひらがなに沼って」まとめ
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