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苦すぎバレンタイン


2月というと、何を思い浮かべるだろうか。

学生時代に学習塾でアルバイトをしていた筆者は、真っ先に「受験」を思い浮かべる。これはもう職業病。
成人の日には「週末はセンター試験(現:共通テスト)かぁ……」と思うし、雪のニュースを見ると「試験時間繰り下げになるかな……」と考えてしまう。

あるいは節分か。
今年の節分は2月2日だった。ずっと2月3日のイメージだったけど、地球の公転の関係で変わるものだと最近知った。しばらくの間はうるう年の翌年の節分は2月2日になるそうだ。過去には2月4日だったこともあるらしい。節分ってこんなに難しかったのか。

そうはいっても、世間的にはやはり2月といえばバレンタインデーだろう。
そういう空気に浮かれるようなキャラではないので、まぁ特別なこともなく普通に過ごすのが常なのだけれど、バレンタインデーが近づくと、決まって蘇る思い出がある。



それは小学6年生の頃。

当時一番仲が良かった女の子から、ある男の子にバレンタインのお菓子を渡すよう頼まれた。「ガチではない」みたいな言い方をされたけど、たぶんアレは本命だった。

その相手というのが、実は当時私も密かに気になっていた男の子。
頭が良くて足も速い、小学生的にはかなりハイスペック男だったと思うけど、女子に対するつっけんどんな態度のせいで、反感も買いやすいタイプだった。

しかし私は、彼と席が近くになったことがあったので、多少仲が良かった。彼は、女子に対する態度がなっていないだけで、話せば結構面白い奴だった。クラスの他の女子は知らない彼の魅力を、私は知っている。それだけで「特別」を意識するには十分だった。



 ***



その日、教室に革命が起きた。
彼が、メガネをかけて登校してきたのだ。


(あ、メガネ……)

と、心の中でつぶやく私を他所に、クラスの女子たちは「彼、メガネかけたらカッコイイね!」とわいわい盛り上がる。

彼は急にモテだした。

確かに、正直、私から見ても彼はかなりメガネが似合っていて、小学生的にはかなりイケメン君だった。
だけど、急に彼がクラスの人気者になってしまって、幼い私はかなり複雑な気持ちだった。
カワイイ子に告白されちゃったら、彼はどうするんだろうな……とか、少し考えてしまったりもした。
告白のその後のことなんて、よく知らなかったけど。

まぁ、人気者になってもなお、彼のつっけんどんな態度は変わらなくて。教室では、絡んでくる女子をあしらう彼の姿をよく見るようになった。
あしらわれる女子を見て抱いた優越感は、誰にも悟られないよう胸の奥の奥にしまい込む。バレてしまっては私のクラスでの立場が危うくなるからだ。小学生女子は敏感でデリケートな生き物なのである。


そして、あまりにも上手に隠していたせいで、私は友人から「(本命の)プレゼントを渡してほしい」なんて頼まれてしまうのだ。

しかし、大事な友人の頼みは断れないのが筆者である。私は、少々重すぎる任を請け負った。



友人の頼み通り、私は彼に
「あの子からだよ」
と、友人から預かったお菓子の箱を差し出した。バレンタイン仕様のキレイなラッピング。自分のをちゃんと用意して、渡してみても良かったな…なんて、柄にもなくもどかしい気持ちを抱えながら。

すると、


「俺、チョコ嫌いだから」


そう言って彼は、反論する間もなく走り去ってしまった。
あっけにとられた私は、彼の背中を見て立ち尽くすしかなかった。


ほどなくして冷静さを取り戻した私。

チョコが嫌いなら、私がチョコを用意して渡していても断られたんだ。

むしろ用意しなくて正解だったじゃないか。

受け取らなかった理由が「チョコが嫌いだから」だったら、彼の気持ちは分からないまでも、友人が傷つくこともないじゃん。

……と、今考えればなんともご都合主義な考えにふわふわしながら、友人の元に行く。


「チョコ嫌いなんだって。だから受け取ってくれなかった。渡せなくてごめんね。」

そう言って、キレイにラッピングされたお菓子を友人に返す。すると、



「……中身、チョコじゃないんだよね」



「え……?」

一瞬頭が真っ白になる私。パニックである。

正気に戻って平謝りする私に、「渡せると思ってなかったし、本命じゃないし、大丈夫だよ。渡させてごめんね。」という友人。
いやいやいやいや。絶対本命だったじゃん……!!!義理なら直接渡せるでしょ?!そういうのいいから!!
と、言いたくなったが、どうにか耐えて、もう一度だけ「ごめん…」と言って、別れた。

一瞬でも、

「チョコ用意しなくて良かったじゃん。ラッキー!」

と思った自分を殴りたい。友人の気持ちがこもった贈り物を、一瞬でも下見扱いした自分のことが許せない。そんな気持ちが私を支配していって、この日はそれまでの人生で一番自分のことが嫌いになった。


これが、筆者の小学校最後のバレンタイン。
当然彼とはその後何事もなく卒業し、卒業以来会っていない。

友人ともすっかり疎遠になってしまったけれど、バレンタインの時期には必ず思い出す。きっと今後も忘れることはないだろう。

どうせ忘れないなら、もっとカワイイ話がよかったな。


読んでくださった皆さまには、素敵なバレンタインの思い出がありますように。

ハッピーバレンタインデー!





重い話をチョコっと軽くしてくれるカワイイ賑やかし帯はいつきさんのところから拝借しました♡


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彩野リィ 最後までお読みいただきありがとうございました!「面白ぇ女」と思っていただけたらスキ❤️やコメント、シェアのほど、よろしくお願いします。チップは私の執筆のおとも・マウントレーニア カフェラッテにさせていただきます!🙇‍♀️