「お」に感じる愛おしさ
「お気に入り」って、なんか可愛い。
「お気に入り」の対象が、というわけではなく、「お気に入り」という言葉が、可愛いなと思う。という話である。
丁寧の「お」って、つけなくても成り立つことが多いけれど、「お気に入り」は「お」をつけないと成り立たない。
つまり、「お店」「お洋服」は「店」「洋服」で良いけれど、「お気に入りは」「気に入り」にはならないということ。
「気に入り」が日本語として100%おかしいとは言い切れないとも思うけど、でもやっぱり変だろう。一般的に。
試しに「これ気に入りなんだ」って妹に言ってみたら「キニイリって言うの……?」と怪訝な顔をされた。いやいや分かってるんだよ、変なことは。
「気に入っている」とは言うことがあっても、気に入っているものを指す時は「お気に入り」。お母さんのことを「母さん」って呼んでいても、お茶を飲むことを「茶ぁしばく」とか言ってても、「お気に入り」は「お気に入り」なのである。
少々やんちゃしている若者も、社会に揉まれるアラサーも、職場で偉そうにしているオジサン・オバサンも、今をときめくアイドルも、泣く子も黙る大御所タレントも、みんなみんな「お気に入り」と言うのである。
それぞれが「お気に入り」って言う場面を想像してみてほしい。なんか、可愛くないか。
「お」という音の響きもあいまって、「お気に入り」という言葉にはなんだかこう、包み込んでくれる雰囲気がある。「お気に入り」という言葉だけで、大事にしてるんだなぁと伝わってくる。
「お気に入り」が持つ可愛い響きがとても好きだけど、筆者にはちょっと可愛過ぎる。
「これお気に入りなんだー!」とテンション高く言う時は気にならないけれど、「私のお気に入りです」と、静かにそっと、語尾にハートがつきそうな感じで言うのは、ちょっと気恥ずかしい。つい、「気に入っている」と言ってしまう。
でも「気に入っている」だとなんだか味気ない。「お気に入り」のような温かさとか、柔らかさみたいなのが足りない。
その昔、Twitterの♡ボタンがまだ☆だった頃の「ふぁぼ」の手軽さが恋しい。
きっと、「お気に入り」と発言することに葛藤している人はたくさんいると思う。本人が意識しているかどうかはともかく。でも、やっぱり「お気に入り」は「お気に入り」でしか表現できない愛おしさがあるはずなのだ。
だから、そういう人を見かけたらそっと「お気に入りなんですね」と助け舟を出してあげたい。
そんな筆者は、イカつい見た目の男が彼女に「ここ、前は何があったんだっけ?」と問われて「本屋さんでしょ」と答えている姿にキュンとしてしまうチョロい女である。
#なんのはなしですか
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