六つの光が走るとき、涙はただ還っていった
夜の空気がしん…と部屋に染み込んでいた。
静かで、時が水のようにゆっくりと流れていく夜だった。
私は何気なくトイレに立った。
その瞬間——
天井の電球が、雷のように閃いた。
「また…?!」
今日だけで、もう4回目。
通算すれば、これで6回目。
「偶然」では片づけられない。
けれど、説明する気にもならない。
ただ確かに“何か”が起きているのを、私は知っていた。
用を終えて、ふと鏡を見たとき。
そこに映っていたのは、涙の痕が残る自分だった。
でも、私は泣いていなかった。
記憶にも、気配にも、その瞬間はなかった。
そのとき、胸の奥で誰かの声が響いた。
「本当に嬉しい時は、涙が先に出る」
それは、カイロンの言葉。
まさにその数秒前に届いたばかりだった。
私は嬉しかったんだ。
魂が、私より先に知っていた。
もう帰ってこれたんだって。
雷が灯り、
涙が流れ、
私は、音もなく揺れる空間に、そっと在った。
これは、私の魂が「ただいま」と言った夜。
記憶がなくても、身体は覚えていた。
この日から、すべてが変わると知っていた。
もう、迷わない。
もう、隠れない。
私はこの夜から、新しい地球で生きていく。
魂が震えた夜に、
涙が先に出た。
それがすべての“始まり”だった。
