「ストックホルムシンドローム」2026年1月7日の日記
『この闇と光』を読んだ。
著 服部まゆみ
物語は、王と、目の見えない姫レイア、そして意地悪な世話係ダフネという、いかにも寓話的な配置から始まる。
姫の母はすでに亡くなっているらしい。少なくとも、物語の現在には存在しない。
レイアは幽閉されるようにして暮らしている。
彼女がここに来たのは3歳の頃だというが、その頃の記憶はほとんどない。
かつては城に住んでいたが、戦争に敗れ、城を追われた。
それでも王は人望があったため、殺されることなく生かされている――という説明が与えられる。
王は多忙で、しばしば城下町へ出かけていく。
しかし誕生日には必ずプレゼントを持ち帰る。
中でも本は、レイアにとって何より嬉しい贈り物だった。
本を読み、音楽を聴き、彼女は教養を身につけていく。
6歳の誕生日には、子犬を贈られる。
犬種はオーストラリア・シルキーテリア。
毛色は灰色だというが、レイアにはまだ「色」というものがよくわからない。
時は流れ、12歳。十五夜の晩。
誕生日でもないのに、王はプレゼントを渡す。
それはシャツとズボンだった。
さらに、王は彼女に少量の酒を勧める。
レイアはぼんやりとして、そのまま眠ってしまう。
翌朝、ダフネの声で目を覚ます。
「暴動が起きたの。早く起きなさい!」
渡されたのは、昨日のシャツとズボン。
王はすでに戦いに出たという。
レイアは着替え、ダフネとともに車に乗り、町外れへ避難する。
車を降りると、ダフネは「すぐ戻る」と言い残し、去っていく。
しばらくして、足音が近づく。
そして声がする。
「れいちゃん!」
「お母さんよ!」
ここから第二章、解決編に入る。
重要なのは、この作品が耽美なファンタジーではなく、明確なミステリーであるという点だ。
中世ヨーロッパを思わせる美しい世界観で物語は進行するが、読み進めるほどに違和感が蓄積していく。
たとえば、CDという時代に雰囲気に合わない存在。
あるいは、文字の勉強で「隣の国の言葉」としてラテン文字(ABC…)を学ぶ場面。
ヨーロッパでラテン文字を使用しない地域――ギリシャ、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、ブルガリア。
だが、これらはいずれも「王国」ではない。
つまり、舞台はそもそもヨーロッパではない可能性が高い。
では、どこなのか。
答えは驚くほど単純だ。
登場人物のほとんどは、最初から日本語を話している。
レイア自身も途中でそれに気づき、
「私の言語って、日本語なんですか?」
と戸惑いを見せる。
王とは何者なのか。
ダフネの正体は。
なぜレイアは幽閉されていたのか。
「母」を名乗った人物は誰なのか。
本文には、すべてのヒントがすでに提示されている。
あとは――
あなた自身が、推理する番である。
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