レコード男子|ホレス・シルヴァー & ザ・ジャズ・メッセンジャーズ丨この青は、まだ名前になりきる前の熱を持っている
おはようございます。
レコード男子リョータです。
今日の一枚は、Horace Silver and The Jazz Messengers。
前回、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズを取り上げた流れで、次にこの盤を手にしたくなったのは、たぶん自然なことだったと思います。
同じ“ジャズ・メッセンジャーズ”の名を持ちながら、こちらはまた少し違う温度をまとっている。
そして何より、このジャケットの青がいい。
この話は、分かる人には分かる話かもしれません。
同じ構図のもう一枚に、オレンジ色の盤がある。
そして、青はジャズ・メッセンジャーズ、オレンジはホレス・シルヴァーのオリジナル・バンド。
そういう感覚が、マニアのあいだではある種の常識になっている。
レコードは音だけではなく、色でも記憶される。
この盤を見ていると、そのことを改めて思います。
ジャケットには、指を上に向けたホレス・シルヴァーの姿。
青一色で統一された画面。
大きく配置された名前。
前回のアート・ブレイキー盤が、顔の圧でこちらを押してくるジャケットだとしたら、こちらはもう少し軽やかで、もう少し“これから始まる感じ”がある。
同じ初期ブルーノートの空気を吸っていながら、表情が違うのが面白いです。
ホレス・シルヴァーは、ハードバップの形をつくった中心人物のひとりです。
ピアニストであり、作曲家であり、しかもジャズをより前へ進めるための“わかりやすさ”を持ち込んだ人でもあった。
ゴスペルやブルースの感触、耳に残るフレーズ、身体が自然に反応するリズム。
難解さより、まず手触り。
この感覚は、後のハードバップを考えるうえでもとても大きいと思います。
アート・ブレイキーとホレス・シルヴァーは、1950年代半ば、まさにそのハードバップの胎動の中で交わっていた。
後にジャズ・メッセンジャーズはアート・ブレイキーの名と強く結びついていくけれど、この盤には、まだその名前がひとつの完成した看板になる前の、原型の熱が残っている気がします。
だからこのレコードには、後年の“名門バンド”としての迫力とは別の魅力がある。
もっと若くて、もっと生成途中で、でもすでに何かが始まっている。
そういう瞬間の空気が封じ込められている。
ジャズを聴いていると、ときどき「完成された名盤」よりも、「何かが立ち上がる瞬間」のほうに心を持っていかれることがあります。
この盤は、まさにそちら側です。
のちに当たり前になっていくものが、まだ当たり前ではない。
でも、たしかにここで始まっている。
そういう感じがある。
前回取り上げたアート・ブレイキー盤は、音が鳴る前からジャズの圧が来るジャケットでした。
それに対してこのホレス・シルヴァー盤は、音が鳴る前から、ジャズが前へ進み始める予感がある。
この違いがいい。
棚に並べると、その差が見えてくる。
そして個人的には、この盤の青がとても好きです。
ブルーノートだから青、というだけではない。
もう少し軽く、もう少し鋭く、もう少し知的で、でも冷たくはない青。
この色には、都会の朝と夜のあいだのような時間がある。
それがホレス・シルヴァーの音にも、どこか通じている気がします。
前回のアート・ブレイキーで、夜の背筋が伸びた。
今回のホレス・シルヴァーでは、その夜に少しだけ機動力が加わる。
歩き出すためのジャズ、という感じです。
ジャズ・メッセンジャーズという名前が、まだ歴史そのものになる前。
ホレス・シルヴァーという人が、自分の言葉でジャズを押し出し始めていた頃。
この盤は、その途中のきらめきを閉じ込めた一枚なのだと思います。
今日は、Horace Silver and The Jazz Messengers。
アート・ブレイキーの次にこの盤を手にしたことで、ジャズの流れが一本の線ではなく、ちゃんと枝を持っていたことが見えてきました。
その枝が、やがてそれぞれの色になっていく。
その最初の気配として、この青を受け取り直してみたいと思います。
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