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思想編集室|Richard Marx『Richard Marx』|アメリカのFMロックは、なぜ記憶に残るのか

※この記事には、プロモーションが含まれています。※記事の作成・構成には生成AIを使用しています。内容は筆者が確認し、加筆・編集しています。


Richard Marxのデビューアルバム『Richard Marx』を聴く。このところ、棚からひとつかみはUK勢が続いていた。

UB40。
Simply Red。
Elton John。

そこからRichard Marxへ来ると、音楽の景色が大きく変わる。英国の湿度から、アメリカのFMラジオへ。都市の再編集感から、もっと真っ直ぐなポップ・ロックへ。

この変化が面白い。

海外赴任時代のアメリカで出会った音

リチャード・マークスは、僕が海外赴任していたアメリカで気に入ったアーティストである。

当時、音楽はテレビやラジオから自然に入ってきた。

MTVやVH1。
車のラジオ。
ショッピングモール。
部屋のテレビ。
現地の空気。

日本で洋楽を聴く時は、どこか「輸入された音楽」として聴く。しかし、アメリカにいると、その音楽は生活の背景になる。

Richard Marxのようなアーティストは、まさにその背景に似合っていた。

過剰に尖っているわけではない。
しかし、曲が強い。
声が残る。
サビが耳に残る。

アメリカのFMロックは、そういう記憶の入り方をする。

デビュー作なのに、すでに完成している

『Richard Marx』はデビューアルバムである。
しかし、聴いてみると、初々しさよりも完成度が目立つ。

それもそのはずで、リチャード・マークスは、いきなり何もないところから出てきた新人ではない。

それ以前に、ソングライターやバックボーカルとして活動していた。

音楽業界の内側を知っていた。

スタジオの作法も、曲作りの構造も分かっていた。

だから、このアルバムには準備されたデビューという印象がある。

才能ある新人というより、ようやく自分の名前で前に出てきた職人。

この感じがいい。

80年代後半のアメリカ的な均衡

このアルバムの魅力は、バランスにある。

ロックである。
しかし、荒すぎない。

ポップスである。
しかし、軽すぎない。

AOR的である。
しかし、気取りすぎない。

バラードもある。
アップテンポな曲もある。
ギターも効いている。
シンセも時代の音として入っている。

これは、80年代後半のアメリカの大衆音楽が持っていた均衡だと思う。

ラジオで流れて違和感がない。
車で聴ける。
テレビでも映える。
ライブでも盛り上がる。

非常に実用的で、同時に感情にも届く。
この「よくできた感じ」が、当時のアメリカのポップ・ロックの強さだった。

「Don’t Mean Nothing」という業界批評

デビューシングル「Don’t Mean Nothing」は、音楽業界の裏側を皮肉った曲である。

これは興味深い。

デビューするアーティストが、いきなり業界の虚しさを歌う。

普通なら、もっと夢や恋や自由を歌いそうなものだ。しかし、彼は最初から業界の中にある言葉の軽さを見ていた。

契約。
約束。
成功の匂い。

でも、それは結局、何の意味もないかもしれない。

この視点は、リチャード・マークスがすでに裏側を知っていたことを感じさせる。

ポップ・ロックの爽快さの中に、少し冷めた目がある。

そこが面白い。

バラードの距離感

リチャード・マークスと言えば、やはりバラードの印象が強い。

このデビュー作にも「Endless Summer Nights」や「Hold On to the Nights」がある。
そして、本命は2枚目の『Repeat Offender』に入っている「Right Here Waiting」だろう。

僕も、本当に好きな曲が入っているのは2枚目のほうである。ただ、そのアナログ盤はまだ見つけられていない。

この「まだ見つけられていない」という状態も、レコード棚の楽しみの一部だ

今すぐ手に入らないからこそ、探す理由が残る。
次に出会った時の喜びが残る。

配信時代には薄れがちな、待つ楽しみである。

アメリカへ戻ってきた感じ

UB40、Simply Red、Elton Johnと続いたあとにRichard Marxを聴くと、アメリカへ戻ってきた感じがする。

UK勢の音には、どこか再編集の匂いがあった。

レゲエを英国化する。
ソウルを英国化する。
ポップスターを劇場化する。

一方、Richard Marxには、もっとストレートなアメリカの音がある。

歌メロが前に出る。
サビが分かりやすい。
ギターが適度に鳴る。
バラードは正面から感情を出す。

悪く言えば分かりやすい。 
でも、その分かりやすさこそが強さでもある。

FMラジオ的な記憶

Richard Marxの音楽は、FMラジオ的である。
これは褒め言葉として使いたい。
FMラジオ的な音楽は、生活に入り込む。
ものすごく集中して聴いていなくても、耳に残る。

車を運転していても聴ける。
何気なく流れていても、サビで振り向く。
そして、ある日ふと、その曲が自分の記憶と結びついていることに気づく。

海外赴任中のアメリカで聴いた音楽には、そういう入り方をしたものが多い。

Richard Marxもその一人だった。

「売れた音楽」を軽く見ない

80年代後半のポップ・ロックは、時に商業的すぎると言われることがある。しかし、売れた音楽を軽く見るのは簡単だ。

本当に考えるべきなのは、なぜそこまで多くの人の耳に届いたのかである。

Richard Marxの曲は、よくできている。

イントロでつかむ。
声で引き込む。
サビで残す。
バラードでは感情を膨らませる。
ロック曲では勢いを出す。
これは職人芸である。

ポップスは、分かりやすいほど難しい。
誰にでも届く曲を書くことは、決して簡単ではない。

レコード棚は未完でいい

今回取り上げるのはデビューアルバムだが、本命の2枚目はまだ見つけていない。

この未完感がいい。

レコード棚は、完成してしまわないほうが楽しい。

探している盤がある。
いつか欲しい盤がある。 
見つからないから気にしている盤がある。

そういう余白があるから、棚は生きている。

Richard Marxの『Repeat Offender』は、僕にとってそういう一枚だ。

いつか見つけたい。

その時には、「Right Here Waiting」までたどり着ける。

でも今日は、デビュー作である。

ここから始まった。

Richard Marxという入口

『Richard Marx』は、リチャード・マークスというアーティストが、シンガーとして前に出てきた入口である。

ソングライターとしての力。
スタジオで培った完成度。
ロックとAORのバランス。
バラードを書く才能。

そのすべてが、すでにこのデビュー作に入っている。だから、このアルバムは単なる序章ではない。

2枚目へ向かうための入口でありながら、それ自体で十分に聴ける作品である。

アメリカの音楽地図の一枚

棚からひとつかみは、だんだん僕の音楽地図になってきた。

Gipsy Kingsではスペイン語の響きがメキシコの記憶につながった。

UB40ではVH1とブリティッシュ・レゲエが重なった。

Simply RedではUKソウルの洗練を思い出した。

Elton Johnでは英国ポップスターの息の長さを見た。

そしてRichard Marxでは、アメリカのFMロックに戻ってくる。

音楽は、ただジャンルで並んでいるのではない。

自分がどこで出会ったか。
どの国で聴いたか。
どんな生活の中で入ってきたか。

そういう記憶によって並んでいる。

Richard Marx『Richard Marx』。

この一枚は、僕にとって海外赴任時代のアメリカの空気を思い出させる、ポップ・ロックの入口である。

そして、まだ見つけられていない2枚目へ向かう、静かな予告編でもある。


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