レコード男子|アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ丨音が鳴る前から、もうジャズが始まっている
Instagramに“今日の1枚”として載せたのは、Art Blakey and The Jazz Messengers。
まだ針を落としていないのに、もう音の圧がこちらへ来ている。そんなジャケットがある。
アート・ブレイキーのこの一枚は、まさにそういうレコードだと思う。
熱いのに乱れず、前へ出るのに崩れない。今日はこのアルバムを、レコード男子として受け取り直してみたい。

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おはようございます。
レコード男子リョータです。
今日の一枚は、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。
ジャケットを手にしただけで、もう空気が変わる。そんなレコードがありますが、この一枚はまさにその代表格だと思う。
黒を基調にした重い色面。
こちらをまっすぐ射抜くようなアート・ブレイキーの顔。
そして右側に積み上がる文字。
音が鳴る前から、もうジャズが始まっている。
こういうジャケットは、めったにない。
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズは、1950年代半ばにドラマーのアート・ブレイキーを中心に結成された、ハードバップを代表するグループ。
ホレス・シルヴァーらとともにスタートし、ゴスペルやブルースの感触を強く取り入れた、熱くて、黒くて、前へ前へと進んでいくジャズを形にしていった。
ハードバップという言葉だけ聞くと、少し硬派で難しそうにも見える。
でも、このグループのすごさは、エネルギーがあるのに、ちゃんと親しみやすいところにあると思う。
その象徴が、やはり『Moanin’』だろう。
1958年に録音され、1959年にリリースされたこのアルバムは、ジャズファンのあいだだけでなく、もっと広い層にまで届いた作品として知られています。
「モーニン」や「ブルース・マーチ」といった曲は、ジャズをあまり聴かない人でもどこかで耳にしたことがあるかもしれない。
それくらい、このアルバムは強かった。
日本で“蕎麦屋の出前持ちが口笛で『モーニン』を吹いていた”という逸話まで残っているのも、いかにもこの作品らしい話だ。
ジャズ喫茶や評論の中だけではなく、街の空気にまで入り込んでいった。
それはもう、ただの名盤というより、ジャズが広く共有された瞬間の記録なのだと思う。
このグループのもうひとつのすごさは、若手の登竜門であり続けたことだろう。
リー・モーガン、ベニー・ゴルソン、ウェイン・ショーター、フレディ・ハバード、ウィントン・マルサリス。
その時代ごとに、後のジャズ界を背負っていくようなプレイヤーたちが、このグループを通っていった。
ジャズ・メッセンジャーズという名前は、単なるバンド名ではなくて、ある意味ではジャズそのものを次の世代へ渡していく装置だったのかもしれない。
アート・ブレイキーは、自分が前に出るだけのリーダーではなく、若い才能を鍛え、燃やし、走らせる人でもあった。
だからこそ、このグループの歴史にはいつも“熱”がある。
そして、その熱の中心にあるのが、やはりアート・ブレイキーのドラムだ。
強烈な推進力。
バンド全体を後ろから押し出すようでいて、ただ荒々しいだけでは終わらない。
あの有名な“ナイアガラ・ロール”という呼び名も含めて、彼のドラミングには、量感と勢いがそのまま音楽の骨格になる感じがある。
今回手にしたこの盤に記されているBlue Note 4003という番号は、不朽の名盤『Moanin’』のカタログ番号。そのヒットにより、アルバムタイトルに昇格したと言われている。
ブルーノート4000番台の初期を飾る一枚であり、ハードバップを象徴する作品として語り継がれてきた番号でもある。
レコード好きにとっては、この数字だけでも少し胸が熱くなるところがあるだろう。
しかもこのアルバムは、内容だけでなく、盤としての存在感も強い。
オリジナル盤のモノラル初版はコレクターの間で高く評価され、ラベル表記や刻印の違いまで真剣に見られる世界がある。
一方で、いまはリイシューや高音質盤も出ていて、いろいろな形で触れられるのもいいところだ。
こういう名盤は、神棚に上げるだけではもったいない。
それぞれの時代のフォーマットで、ちゃんと聴き直されていくべきものだと思う。
個人的には、この作品を思うとき、漫画『坂道のアポロン』を思い出す。
あの作品は、ジャズを“知識”ではなく、“衝動”として描いていた。
難しいから聴くのではなく、かっこいいから惹かれる。
誰かと音をぶつけたくなるから、ジャズに触れてしまう。
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズには、まさにそういう入り口としての強さがあると思う。
ジャズには、構造の美しさもある。
歴史の厚みもある。
でも、最初に来るのはたぶん理屈じゃない。
うわ、かっこいい。
まずそこだ。
そして、このジャケットには、その“まずそこ”がある。
顔がある。
圧がある。
鳴る前から始まっている。
それが、レコードとして実に強い。
オノ・ヨーコ、ナイアガラ・トライアングルと続いて、今日この一枚を棚に置くと、レコード男子の景色が少し夜に寄る。
でも、その夜は暗いだけじゃない。
芯が通って、熱があって、背筋が少し伸びる夜だ。
今日は、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。
ジャズの名盤というだけでなく、ジャズが“広く届く音楽”だったことを証明した一枚として、改めて受け取り直してみたいと思います。
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