レコード男子|ハンク・モブレー丨『Hank Mobley and His All Stars』丨静かな顔をして、熱は奥で燃えている
ハンク・モブレー『Hank Mobley and His All Stars』。
煙草、譜面、白黒の画面。派手ではないのに、ジャズの気配がじわりと濃い。
アート・ブレイキーやホレス・シルヴァーの流れをたどりながら、今日はこの静かな熱を持つ一枚を手に取ってみたい
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おはようございます。
レコード男子リョータです。
今日の一枚は、Hank Mobley and His All Stars。
ここ数日、アート・ブレイキー、ホレス・シルヴァーと流れてきて、その次にこの盤を手にしたのは、ほとんど自然な成り行きでした。
ジャズ・メッセンジャーズの熱をたどっていくと、今度はその熱を少し別の角度から照らしたくなる。
そこで出てきたのが、ハンク・モブレーです。
このジャケット、いいです。
白黒。
煙草。
譜面。
そして、少し斜めにこちらを見ているような、見ていないような視線。
派手ではない。
でも、ものすごくジャズの匂いがするのです。
前回のホレス・シルヴァー盤が“青”のレコードだとしたら、こちらは灰色の濃淡でできた夜のレコードです。
しかも、その夜はロマンチックというより、少し仕事場に近い。
ステージの上というより、音が生まれる手前の空気が写っている感じがある。
その雰囲気がたまりません。
タイトルは Hank Mobley and His All Stars。
“オールスターズ”という言葉が示す通り、顔ぶれを見てもかなり強い。
ハンク・モブレー、ミルト・ジャクソン、ホレス・シルヴァー、ダグ・ワトキンス、アート・ブレイキー。
この並びを見るだけで、ブルーノート周辺の熱がそのまま盤になったような感じがします。
でも、この盤の面白さは、単にメンバーが豪華だということだけではないと思います。
むしろ惹かれるのは、そういう強い名前が並んでいるのに、全体の印象がどこか渋くて、落ち着いていることです。
そこがハンク・モブレーらしい。
ジャズの世界では、ハンク・モブレーはしばしば少し控えめな存在として語られることがあります。
派手に突き抜けるタイプではない。
声を荒げるように吹くわけでもない。
けれど、その代わりに、じわじわと染みてくる強さがある。
前へ出すぎず、でも決して弱くない。
その絶妙な立ち位置が、僕はとても好きです。
今回この盤を見ていて感じるのも、まさにそこでした。
ジャケットの顔つきもそうだし、タイトルの置き方もそう。
“これ見よがし”ではない。
でも、見ているうちにどんどん引き込まれていく。
ジャズにおける“渋さ”というものが、かなり早い段階で表れているように思います。そして、ここでやはり気になるのがアート・ブレイキーの存在です。
前回までの流れもあって、今回の盤ではついそこに耳が向きます。前面で暴れるというより、バンドの奥で熱を支えている感じなのです。
モブレーの少しクールな輪郭に対して、ブレイキーの火が下からじわっと入っている。その関係がとてもおもしろいです。
ホレス・シルヴァー盤では、ジャズが前へ進み始める予感を書きました。アート・ブレイキー盤では、まだ針を落としていないのに、もう音の圧が来る感じがありました。
それに対してこのハンク・モブレー盤は、熱がいったん内側に入っている。
熱量はある。
でも、それをすぐに表へ出さない。
少し抑え、少し考え、少し影をつくる。
そこにこの盤の魅力がある気がします。
裏面のクレジットを見ると、ハンク・モブレー、ミルト・ジャクソン、ホレス・シルヴァー、ダグ・ワトキンス、アート・ブレイキーという布陣がきちんと並んでいます。
こうして改めて見ると、この盤は単独の名盤であると同時に、ブルーノート周辺の人間関係そのものが記録されている一枚でもあるのだと思います。
誰が誰とつながり、どこで交わり、どういう熱が生まれていったのか。その流れの途中に、このレコードがあるのです。
ジャズを聴いていると、曲や演奏だけではなく、こういう人のつながりで盤をたどりたくなる瞬間があります。
あの人の次にこの人。
この盤のあとにあの盤。
そうやって棚を歩いていくと、ただのコレクションが、少しずつ物語になって来ます。
今回の流れは、まさにそれです。
しかも、この盤はその物語の中で、少し静かな役割を果たしている。派手な爆発ではなく、間の呼吸。明るく押し出すというより、影を濃くして輪郭を見せる。
ジャズは音楽だけれど、ときどきこうして気配の芸術にも見えてきます。
ハンク・モブレーには、その気配がある。
煙草をくわえ、譜面を持ち、少し考えているような顔。
このジャケットの佇まいは、ひとことで言えば“静かな仕事人”です。
そして、その静けさの奥で、ブレイキーの熱がしっかり燃えている。
この二重構造がたまらない。
静かな顔をして、熱は奥で燃えている。
その感じが、そのままこの盤の魅力になっているように思います。
アート・ブレイキーから始まり、ホレス・シルヴァーを経由して、ハンク・モブレーへ。
こうして並べると、ジャズの初期ブルーノートが単なる名盤の集まりではなく、温度の違う火種の集まりだったことが見えてきます。
強火もあれば、熾火もある。
今回のモブレーは、まちがいなく後者です。
今日は、Hank Mobley and His All Stars。
派手ではない。
でも、だからこそ長く残る。
そんなジャズのかっこよさを、レコード男子として改めて受け取り直してみたいと思います
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