余白ノート│山下達郎『BIG WAVE』│夏は海からではなく、スピーカーからやってくる|
※この記事には、プロモーションが含まれています。※記事の作成・構成には生成AIを使用しています。内容は筆者が確認し、加筆・編集しています。
海へ行かなくても、夏はやってくる。
山下達郎『BIG WAVE』を聴けば、部屋の中に青空が広がり、遠くから波がやってくる。1984年に生まれた一枚から、僕たちの中にある「夏の記憶」を考えてみました。
夏になった。いや、正確に言えば、暑くなったから夏なのではない。山下達郎の『BIG WAVE』を聴きたくなったとき、僕の中で夏が始まる。
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おはようございます。
リョータです。
山下達郎さんのアルバム『BIG WAVE』を持っています。
いつもの「棚からレコードを取り出して紹介する」という形でも書けるのですが、今回は少し違う方向から、このアルバムについて考えてみたくなりました。
『BIG WAVE』は、レコード棚に収まっている一枚というより、毎年、夏になると向こうからやってくる季節のような作品だからです。
映画のサウンドトラックから生まれた、もうひとつの夏
『BIG WAVE』は、1984年6月20日に発売された、サーフィンを題材としたドキュメンタリー映画のサウンドトラックです。
山下達郎さんのオリジナル曲と、ビーチ・ボーイズを中心としたカヴァー曲で構成され、全曲が英語詞で歌われています。
公式サイトでも「オリジナルとビーチ・ボーイズのカヴァー(一人多重録音)で構成された、全曲英語詞による独創的アルバム」と紹介されています。
しかし、不思議なことに、このアルバムを聴いていると、映画を観ているという感覚はあまりありません。
海、波、青空、砂浜。
そうした映像が音楽の後ろにあるのではなく、音楽そのものが映像を作り始めるのです。
スピーカーの奥から水平線が伸び、部屋の天井が青空に変わっていく。
もちろん実際には、僕はいつもの部屋にいる。
窓の外には両国の街があり、サーフボードを抱えた若者が波を待っているわけでもありません。
それでも「THE THEME FROM BIG WAVE」が流れ始めると、街の空気まで少し乾いて感じられるから不思議です。
A面は、山下達郎が作った架空のアメリカ
アルバムの前半には、山下達郎さんが作曲し、盟友アラン・オデイが英語詞を手がけたオリジナル曲が並びます。ワーナーミュージックも、この作品を両者のコラボレーションから生まれたオリジナル曲と、ビーチ・ボーイズのカヴァーで構成されたアルバムと説明しています。
「THE THEME FROM BIG WAVE」
「JODY」
「ONLY WITH YOU」
「MAGIC WAYS」
「YOUR EYES」
どの曲にも、アメリカン・ポップスへの憧れが詰まっています。ただし、それは本物のアメリカをそのまま再現したものではないのでしょう。
ラジオやレコードから受け取った音楽、映画の中で見た海岸、ジャケット写真の青空。
そうした断片を、山下達郎という音楽家の中で組み立て直した、もうひとつのアメリカです。
日本にいながら思い描いた、理想の海岸線。
言ってみれば、音楽によって建設された架空のリゾート地なのかもしれません。
なかでも「MAGIC WAYS」には、夏を必要以上に騒がしくしない心地よさがあります。
ギターのカッティングは軽やかですが、ただ明るいだけではない。
風が通り抜けたあとに、ふと寂しさが残る。
山下達郎さんの夏には、いつも夕暮れの気配があります。
B面では、ひとりの中にビーチ・ボーイズが現れる
後半には、
「GIRLS ON THE BEACH」
「PLEASE LET ME WONDER」
「DARLIN'」
「GUESS I'M DUMB」
など、ブライアン・ウィルソンやビーチ・ボーイズに関係する楽曲が並びます。
これらを特徴づけているのが、一人多重録音です。
何人もの声で作られているように聞こえるコーラスを、山下達郎さんが自分の声を何度も重ねることで作り上げていく。
ひとりで歌っているはずなのに、音の中にはグループが存在する。
スタジオの中で、一人の音楽家が自分自身を何人にも分裂させ、頭の中にある理想のコーラスを現実にしていくのです。
それは単なる物まねではありません。
ビーチ・ボーイズの音楽を愛し、分析し、内部構造まで理解した人が、自分の声と技術で建て直した音の建築物です。
だから『BIG WAVE』は、サーフィン映画のサウンドトラックであると同時に、山下達郎さんからアメリカン・ポップスへ送られた、巨大なラブレターにも聞こえます。
日本の夏を変えた音楽
僕たちが思い浮かべる「夏」は、実際の体験だけで作られているわけではありません。
テレビのCM。
ラジオから流れた曲。
雑誌の写真。
映画の中の砂浜。
そうした記憶が混ざり合って、一人ひとりの夏が出来上がっています。
その意味で『BIG WAVE』は、日本人の夏のイメージそのものに、ひとつの青い色を加えた作品なのかもしれません。
海へ行かなくてもいい。
サーフィンをしなくてもいい。
冷房の効いた部屋でレコードを回しているだけでも、「THE THEME FROM BIG WAVE」のイントロが鳴れば、夏の扉は開きます。
1984年の作品でありながら、そこに閉じ込められている夏は古びません。
2014年には、リマスター音源やボーナストラック、本人による解説を加えた30周年記念盤も発売されました。さらに2025年には、山下達郎さんのデビュー50周年企画の一環として、アナログ盤とカセットでも再発売されています。
時代が変わっても、夏が来るたびに、また聴きたくなる。
夏の定番とは、何度も消費される作品ではなく、季節が巡るたびに新しく再生される作品なのだと思います。
僕の部屋にも、波が来る
今年も暑い夏になりそうです。
実際の海に行く予定はありません。
けれど、レコード棚には『BIG WAVE』があります。
ジャケットを取り出し、盤をターンテーブルに置く。
針が溝に触れ、最初の音が鳴る。
すると、遠くから大きな波が近づいてくる。
両国の部屋に、山下達郎さんが作った海が広がっていく。
両国、突然のサーフスポット化
もちろん、僕の部屋の窓から海は見えない。
見えるのは、いつもの街。
ところが『BIG WAVE』をかけた瞬間だけ、事情が変わる。
スピーカーの向こうで波が立ち、 エアコンの風がなぜか潮風になり、 テーブルの上の飲み物まで少しトロピカルに見えてくる。
両国に海はない。
それでも音楽なら、海くらい連れてこられる。
山下達郎、恐るべし。
このまま聴き続けていたら、国技館の前をサーファーが歩き始めても驚かないかもしれない
僕の部屋、本日だけ海岸線です。
今年の夏は、まずスピーカーから始めてみようと思う。
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山下達郎さんがカバーしているビーチボーイズの曲をリストにしてみました。
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