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どん底の不良から世界を動かす指導者へ。4つの名前を生きた男の壮絶な再生の物語『マルコムX自伝』

1965年に出版された『マルコムX自伝』は、TIME誌の「20世紀の最も重要なノンフィクション10冊」にも選ばれた歴史的な名著です。

日本では河出書房新社から完訳版が出版されており、スパイク・リー監督による映画化(デンゼル・ワシントン主演)も大きな話題になりました。

現在でも、アメリカの黒人社会やヒップホップ文化の背景を理解するための必読の書として多くの読者に支持されています。

この本は、単なる一人の黒人指導者の話じゃない。

どん底の犯罪生活から這い上がり、猛勉強と信仰によって自分を作り変え、やがて世界的な人権活動家へと成長していく人間の再生の物語です。

ぜひ、読んでほしいので、今日はこの本を紹介していきます。


どうやって書かれたのか?

この自伝は、マルコムX自身が一人でペンをとったのではなく、ジャーナリストのアレックス・ヘイリーとの長年の共同作業で生まれました。

最初は「白人社会のスパイじゃないか」とヘイリーを強く警戒していたマルコムですが、ヘイリーの粘り強い取材によって少しずつ心を開きます。

ある夜、自分の母親の悲しい過去について語り始めたことをきっかけに、マルコムは自分の赤裸々な内面や過去の過ちを正直に打ち明けるようになりました。

マルコムXの波乱万丈な4つの時代

彼の人生、まるで別人のように何度も名前と生き方を変えていくんです。これがすごい。

1. 絶望の少年時代(マルコム・リトル)

1925年生まれ。

彼の幼少期は、アメリカ社会の強い黒人差別によって壊されたんです。

白人至上主義者によって父親が殺され、精神を病んだ母親は病院に入れられ、家族はバラバラになってしまいます。

今考えるとあり得ないですよね。

さらに、学校の成績が良くてクラス委員長も務めていたマルコムが「将来は弁護士になりたい」と夢を語ると、白人の先生から「黒人なのだから現実を見て、大工になれ」と言われてしまいます。

この一言で、彼は社会に対する夢や希望を完全に打ち砕かれました。

2. どん底の不良時代(デトロイト・レッド)

学校をドロップアウトした彼は、大都市の裏街に逃げ込み「デトロイト・レッド」というあだ名で呼ばれるようになります。

当時の彼は、自分の黒人としての外見を嫌悪し、髪をストレートに伸ばして白人に似せようとするなど、自分自身を大切にしていませんでした。

麻薬の密売、強盗、賭博など、あらゆる犯罪に手を染める荒れた生活を送り、1946年、ついに逮捕されて10年の刑務所暮らしとなります。

3. 刑務所での目覚めと指導者への道(マルコムX)

刑務所に入ったことが、彼の人生の最大の転機となります。

彼はネーション・オブ・イスラム(NOI)という黒人を中心としたイスラム教団の教えに出会います。

彼は猛烈に勉強を始め、刑務所の図書室で辞書を丸ごと書き写して言葉を学びました。

「白人は悪魔だ」という極端な教えでしたが、幼い頃から白人に人間扱いされてこなかったマルコムにとって、それは失われた黒人としての誇りを取り戻すための最強の教えだったわけですね。

出所後、彼は奴隷時代に白人から押し付けられたリトルという苗字を捨て、失われたアフリカの先祖を意味する未知数「X」を名乗ります。

そして、圧倒的なスピーチ力で教団のトップスターとなり、アメリカ中の黒人の心を一気に掴みました。

4. 真の平等への到達(エル・ハッジ・マリク・エル・シャバズ)

しかし、人気が高まるにつれて教団のトップと意見が対立し、マルコムXは組織から独立します。

その後、イスラム教の聖地である中東のメッカへ巡礼の旅に出ました。

そこで彼が衝撃を受けたのは、金髪で青い目の白人から真っ黒な肌のアフリカ人まで、あらゆる人種の人々が兄弟として完全に平等に祈り、食事をしている姿でした。

この経験から「すべての白人が悪魔なわけではない」と悟り、肌の色に関係ない普遍的な人権を求める活動へと大きく方向転換します。

キング牧師との違い

当時、黒人の権利を求める運動のもう一人のスターがキング牧師でした。

キング牧師は、非暴力を貫き、アメリカの法律を変えて白人社会と仲良く統合することを目指しました。

一方、マルコムXは、やられたら自分の身は自分で守る(自己防衛)と主張し、白人に頼らずに黒人自身が自立することを目指しました。

また、アメリカ国内の問題にとどまらず、国連に訴え出るなど、世界規模で考えました。

最初はキング牧師を「白人にすり寄る弱腰だ」と激しく批判していたマルコムですが、晩年は「やり方は違っても、目指している自由は同じだ」と、お互いの存在意義を認め合うようになっていきました。

悲劇の最期

自伝の完成を目前にした1965年2月21日、マルコムXは演説中に銃撃され、39歳の若さで暗殺されてしまいます。はぁ。

自伝の最後の部分は、共著者のヘイリーがこの悲劇的な最期と当時の異様な緊張感を客観的に記録して締めくくられています。

彼の命は絶たれましたが、このマルコムX自伝が出版されたことで、彼の言葉は永遠の命を得たわけです。

抑圧の中で自分自身を愛することを説き、理不尽な差別に対して絶対に妥協せず「NO」を突きつける彼の生き様は、いまのBLM運動や、世界中の不平等と戦う若者たちに、今なお大きな勇気を与えているというか、バイブルってされてる本です。

ぜひ、手に取って読んでみてほしい。


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