あれ、何しに来たんだっけ?は脳の老化現象ではなかった!米ベストセラーが明かす「ど忘れ」が最強の機能である理由!『人はなぜ記憶するのか』
「あの人の名前、なんだっけ?」
「2階に上がってきたけど、何を取りに来たんだっけ?」
そんな、ど忘れをして「私の記憶力、落ちたのかな……」と不安になったことはありませんか?
でも、安心してください(?)
カリフォルニア大学の著名な脳科学者チャラン・ランガナス博士によれば、それは脳が正常に働いている証拠です。
2024年にアメリカでベストセラーとなった『人はなぜ記憶するのか』を今日は紹介!
記憶はビデオカメラではなく語り部
よく、記憶って「過去を記録したビデオテープ」とか「写真アルバム」みたいなものだってイメージしますよね。
再生ボタンを押せば、過去がそのまま蘇るみたいな。
実は、それが大きな誤解。
ランガナス博士は、記憶を「創造的な再構成プロセス」だと説明します。
脳は、過去の出来事をそのまま保存しているわけではありません。
断片的な情報(あの時の匂い、感情、映像の一部など)を保存し、思い出すたびにそれらをパズルのように組み合わせて、現在の視点からストーリーを作り上げているのです。
つまり、記憶とは「過去の正確な記録」ではなく、今、私たちが自分自身に語って聞かせる物語なのです。
だからこそ、時が経つにつれて思い出が美化されたり、少し形が変わったりするのは、脳のバグではなく仕様なのです。
脳内図書館「知識」と「体験」の2つの部屋
記憶には大きく分けて2つの種類があります。
博士はこれを「図書館」に例えて説明しています。
一つ目は、意味記憶と呼ばれる「図書館の事実コーナー」です。
ここには「パリはフランスの首都である」「水は100度で沸騰する」といった知識が保管されています。
いつどこで覚えたかという文脈は抜け落ちていますが、情報そのものは残ります。
二つ目は、エピソード記憶と呼ばれる「図書館の物語コーナー」です。
「去年の夏、パリのエッフェル塔の下で食べた焼き栗の味」のような、個人的な体験がここにあります。
これは特定の「いつ・どこで」という文脈とセットになった記憶です。
年齢を重ねると、物語(エピソード記憶)を詳しく思い出す力は弱まりますが、事実(意味記憶)を扱う力は維持されます。
おじいちゃんおばあちゃんが、昨日の夕飯のことは忘れても、昔の知恵や言葉はよく知っているのは、この脳の仕組みによるものなのです。
なぜ私たちは「忘れる」のか?
たぶん、この本で一番言いたいのって、忘却はエラー(失敗)ではなく、機能(役立つ能力)であるという点です。
もし、あなたが今日すれ違った全ての人の顔、スーパーで見た商品の値段、チラッと目に入った車のナンバーを全部覚えていたらどうなるでしょうか?
脳の中は不要な「ゴミ情報」で溢れかえり、本当に大切な「家族の思い出」や「仕事の大事な手順」を探し出せなくなってしまいます。
脳は、重要な情報を素早く取り出せるように、重要でない情報を積極的に捨てているのです。
「ど忘れ」は、あなたの脳が効率よく情報を整理整頓(断捨離)している証拠。
つまり、忘れる力があるからこそ、私たちは賢く生きていけるのです。
記憶は「過去」のためでなく「未来」のためにある
そもそも、生物はなぜ進化の過程で「記憶」という能力を持ったのでしょうか?
昔を懐かしんでお茶を飲むためではありません。生き残るため、つまり未来を予測するためです。
脳は、過去の記憶の断片(レゴブロックのようなもの)を使って、次に何が起こるか?どうすれば危険を避けられるか?という未来のシナリオをシミュレーションしています。
「この雲行きだと雨が降りそうだ」とか「あの人の機嫌が悪そうだから今は話しかけないでおこう」といった判断ができるのは、過去のデータを未来の予測に応用しているからです。
私たちが過去を記憶するのは、未来をより良く生きるためなのです。
現代人の記憶力が落ちている(気がする)理由
「最近、物覚えが悪くて……」と悩む現代人に対して、博士は警鐘を鳴らしています。
それは脳の老化ではなく、注意(アテンション)の分散が原因かもしれません。
記憶を作るには、まずその対象に注意を向ける必要があります。
スマホを見ながらテレビを見て、同時に仕事のことを考えるような「マルチタスク」の状態では、脳は記憶をしっかりと定着させることができません。
その結果、記憶力が落ちたのではなく、そもそも記憶していないという状態になってしまうのです。
また、「写真撮影による記憶障害」という興味深い現象もあります。
旅行先で写真を撮ることに夢中になると、カメラに記録を任せてしまった脳は「あ、これは覚えなくていいんだな」と判断し、その瞬間の記憶を定着させなくなってしまいます。
「記録」に残すことよりも、「体験」そのものを味わうことが、鮮明な記憶を作るコツです。
今日からできる! 脳に良い「記憶の習慣」
記憶力を良くするために、トレーニングやサプリは必要ありません。
本編は読んでやってもらうとして、ここではこんなことあるよ、的にダイジェストでちょっとだけ書きますね。
まずはシングルタスクを心がけること。
何かをするときは、スマホを置いてその一つに集中しましょう。
「ながら作業」をやめるだけで、記憶の定着率は劇的に上がります。
次に、日常に変化を取り入れましょう。
毎日同じルーチンだと、記憶がひとかたまりになってしまい、区別がつかなくなります(これが「年を取ると1年が早い」と感じる理由)。
通勤ルートを変える、新しい音楽を聴く、入ったことのない店に行く。この「独自性」が、脳に鮮やかなしおりを挟んでくれます。
そして何より、しっかりと休息をとってください。
脳は寝ている間に、その日の記憶を整理し、長期保存用の倉庫(大脳皮質)へ移動させます。
睡眠不足は、保存ボタンを押さずにパソコンを強制終了するようなものです。
しっかり寝ることは、記憶にとって最良の投資です。
不完全な記憶を愛そう
人はなぜ記憶するのかが教えてくれるのは、「完璧な記憶なんて必要ない」ということです。
私たちの記憶は、時に間違ったり、忘れたり、都合よく書き換わったりします。
でも、その「ゆらぎ」があるからこそ、私たちは辛い過去を乗り越えたり、自分らしい物語を紡いだりできるのです。
「また忘れちゃった」と自分を責めるのはやめましょう。あなたの脳は、あなたにとって本当に大切なことだけを選び取り、未来のあなたを助けるために、今日もせっせと働いているのですから。
でたばっかりの本です。ぜひ読んでみてほしい。
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