父さんのお土産 海辺の一家 番外編2
ボランティア団体が発行する 季刊誌のための 短編シリーズ
「海辺の一家」に、「山の暮らしの物語」から 流用しています。
海辺の一家 シリーズとして記録を残すため 投稿しますが
新記事として お読み頂く意味はありません。
今は海辺で暮らす清ばあちゃんだが、生まれ育ったのは貧しい山村で
その頃は、山の一軒家に両親と三人で暮らしていました。
今回は、そんな小さな清ちゃんのお話です。
夕方、清ちゃんは 、母さんに言われて、風呂の火の見張り番をしていた。
炎が小さくなると、そばに積んである薪を放り込み
ちょいと突っついてから、火吹き竹を吹いて風を送り込む。
ここは 父さんが作った新しいお風呂場だ。
井戸のそばの傾斜した空き地にかまどを作り
大きな五右衛門風呂を運んで、かまどの上に据え付けたのだ。
それから、五右衛門風呂を埋め込むように
一段高い場所にコンクリートを張って洗い場にし
周りをぐるっと囲んで風呂小屋を作った。
裸電気もぶら下がっているし、水道のじゃ口もついているので
清ちゃんも一人で入れるようになった。
さっき放り込んだ薪が、ごうっと音を立てて勢いよく燃え始めた。
少し薄暗くなって、背後から聞こえる小川のせせらぎが大きく響く。
そろそろ、田んぼの方からほたるが来る頃かなと思った時
父さんが山仕事から帰ってきた。
「どっこいしょ」
山で採ってきた柴を下ろし、背負った荷物の中から
いつも使っているアルミニウムのお弁当箱を取り出す。
「いいものやるぞ、開けてみぃ」と言われて
「なんだろ」 とふたを取ると
おいしそうな木苺がいっぱい!
下には、ちゃんときれいな緑の葉っぱが敷いてある。
「わぁー どこにあったん?」
「谷んとこに、ようけ なっとった」
ちょっと疲れた顔の父さんが、にこにこしながら言う。
清ちゃんは井戸端で足を洗い始めた父さんを眺めながら
そばの石段に腰かけて、さっそく父さんのお土産をほおばった。
父さんが山で採ってきた柴が、近くの石垣にもたせかけてある。
ふと、その柴に淡いピンクの笹ユリが数本ゆわえてあるのが目に入った。
なんだかうれしくなって 「父さん、風呂すぐ沸くよ」
苺で口をもぐもぐさせながら言うと
「腹へった、メシ食うてから入る」と
父さんは笹ユリをかかえて、家の中に入って行った。
あれは、きっと母さんへのお土産なんだね。
