山の暮らしの物語4 雪の舞う囲炉裏ばた
お正月が過ぎると、ぐんと寒くなった。
それでも、父さんは杉の木の*枝打ちに山に出かける。母さんも、井戸の冷たい水をタライに汲んで洗濯している。ゆきちゃんだって、納屋に貯蔵してある白菜を抱えて来たり、鶏にエサをやったりとお手伝いをがんばっている。
そんなある日、朝起きるといつにも増して冷え込んでいた。台所では 昨夜の *茶粥がシャリシャリに凍っているし、囲炉裏ばたにはうっすらと雪が積もっている。家の中で吐く息も、いつもより白い。
母さんは、震えながら囲炉裏に火を起こし自在鉤にやかんをかけた。
雨戸を開けた父さんが「よう積もったなあ」とつぶやく。あたり一面が雪で真っ白だった。さすがの父さんも今日は仕事に出ない。鶏小屋と羊小屋まで雪かきをして、エサをやると「う〜 寒ぶっ」と囲炉裏ばたに座り込んだ
温めた茶粥でお昼にした後は、囲炉裏の横で *ノコギリの目立てを始める。母さんは、暮れに行商のおじさんから買った赤い毛糸の束を出して、掘りごたつにに座り「ちょっと 手伝って」と、庭の雪で遊んでいたゆきちゃんを手招きした。
そばに座ったゆきちゃんの小さな両手に、大きな毛糸の束を引っ掛けると、クルクルと糸を巻き取っていく。

ゆきちゃんは教わった通りに、クイッ クイッ と左右の手首を動かしているが、時折りよそ見しては、「これ ちゃんと動かして!」と叱られるのだった。
囲炉裏の上の天井に空いた煙出しの隙間から、時々雪が舞い込んで来る。パチパチと火の粉がはぜて、天井に登ってゆく。囲炉裏と言っても、かまどみたいにご飯も炊くしお魚も焼く。薪がちゃんと燃えないと、あたりが煙くて大変だ。
こんなふうだから、あちこちが煙でいぶされて、茶の間の張りも天井も柱も真っ黒に光っている。
ゆきちゃんの手からしゅっと毛糸が消えて、糸巻きはお終いになった。
母さんは毛糸の玉を脇に置くと、囲炉裏の中から大きなさつまいもを引っ張り出しパタパタと灰を払って、こたつの上に乗せた。
「熱いよぉ 気ぃつけて」
父さんも手を休めて、皆でお茶の時間になった。
枝打ち
品質の良い材木を作るために、ナタやノコギリなどで下枝や枯れ枝を切り落とす作業で、林業では欠かせない木の手入れである。
茶粥(ちゃがゆ)
鍋に水を入れて火にかけ 布製の茶袋に入れたほうじ茶を煎じ、そこに米を入れて粘りが出ないようにさらっと炊き上げる。米の収穫量の少ない地域で、米を節約するための郷土料理…日常の食事である。
ノコギリの目立て
ノコギリの刃の一番尖った先端部分を専用のヤスリで研いで、鈍くなった切刃を鋭くすること。かなり熟練が必要で、下手に研ぐとかえって切れ味が悪くなる。
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