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吉本ばななさん 『クラウディクラウドファンディング』に自分を重ねて

最近、主人から「吉本ばななって母親に虐待されていたらしいよ?」と聞いた。

私は高校生ぐらいの時から吉本ばななさんの本が好きで、初めて自分のお小遣いで買ったハードカバーの本は『キッチン』だった。
吉本ばななさんの作品は、しんとした静かな美しい世界の中に傷ついた孤独な人がいる。
その人は孤独と向き合い傷つきながらも、周りの人と確かな愛情を築き、再生していく、そんな世界観だ。
思春期だった私は吉本ばななさんの本を拠り所にしている所があった。

その吉本ばななさんが虐待を受けていた?
前に読んだエッセイの中では、幼少期ご家族で海に行った楽しい場面を何度か読んだ気がする。
何があったのだろう。
記事を購入して読んでみた。

内容はとても辛いものだった。
奔放な支配欲の強い母に振り回され育った。
ばななさんは家庭を持ち距離を取ることができたけれど、お姉さんは母を支え続けた。その中でお姉さんは少しずつ削られてしまった。
ご両親が亡くなった今は、ばななさんがお姉さんを支えている。
病気のお姉さんを見捨てられず、身内として自分ができる方法で何とか助けてあげたいという切実な思い。

私が大きく心を揺さぶられたのは、ばななさんの幼少期の辛い思い出と自分の幼少期が少し被ったからだ。

『虐待』

私は虐待されていた訳ではない。

幼少期、都会から父の生まれ故郷である地方に移り住んだ。
父は引っ越す前は都会で自営業の大工をしていた。
仕事がたくさんあり収入は困らないほどあったが、人口の少ない地方に引っ越し、建設会社に雇われて働くようになってから収入は一気に減った。

私には兄が3人いたが、私と違って思春期に田舎に引っ越した兄たちには苦痛が大きかったようだ。
お金もない、遊ぶ場所もない、刺激がない。
そんな中で上2人の兄は荒れた。

その兄たち、対応する両親、特に母親の姿を見て、私は自分の要求やわがままを言わないで育った。
学校では生徒会、成績もよく、スポーツもできる。友人も多い。
側から見ればいい子だけれど、自分の中では自分ではないような満たされないものをいつも感じていた。

母に「これを欲しい」と言ったことはほとんどない。
言ったとしても叶えてもらえない。
与えられるものは自分が本当に欲しいものではない。
自分は大事にされる人間ではない。
そんな感覚で生きてきた。

幼少期から大人になるまで、私を救ってきたものは本だった。
本の中の世界に入り込み、本の中から自分に必要な言葉を拾って何とか生き延びてきた。

そんな私が少しずつ変わったのは、確かな愛情をくれる主人と結婚したこと、そして、娘が生まれたことが大きい。

娘が生まれた時、私の世界は変わった。
娘がオギャーとこの世に生まれ、抱かないと夜も寝なくて、
うつ伏せに寝たら首が座らない娘が死んでしまう、目が離せない、
お腹が減った、おむつが濡れている、暑い、寒い、
私を見て泣く、笑う…
私にとって娘が世界の全てとなり、娘が芸術となり、癒しとなり昔ほど本が必要ではなくなった。

最近、思う。
重すぎる愛情、娘にこうなって欲しい、勉強しなさい、あれしなさい、これはだめ。
娘が全て。

これは身体的な暴力ではなくても、子どもの心を縛ってしまうものだったのではないか。
娘を自分の一部と見て、娘を尊重しない。
愛情からくる虐待。
これは愛情なのか、支配欲なのか…
愛しているのは確かなのだけれど、愛し方が間違っているのか。

もう赤ちゃんではなくなった娘に、1人の女性になってきた娘に、母親としてどう接すればよいか戸惑うことがある。
愛してきたけれど、こんな私でいいのか。
娘が苦しんでいると自分のことのように辛く、代わってあげたいと思う。

吉本ばななさんの記事を読んでそんなことを感じた。
今まで私は自分の立場を娘として母を見ていた。
母にああして欲しかった、こうして欲しかったという思いがあったけど、
母は母なりに精一杯、私たち兄妹を愛情を持って育ててくれたのだと今は感じる。
大変だったよね。知り合いもいない地方に住んで、
収入も少なくて、買い物の場所も遠くて、惣菜を買う場所も外食先もなくて、体が疲れても手抜きもできない。
一生懸命働きながら、私たちを育ててくれた。
母の懸命さと私の満たされないものは別だったんだね。

私は娘から見てどんな母親として映っているだろう。
きっと、私と同じようにああしてくれなかった、こうして欲しかったってあるよね。
優しい繊細な子だから、それを口に出さず本当に辛かったことは、自分の内に秘めているよね。

自分の人生を生きる。
私も、娘も、主人も。
いろいろな境遇の中で、関わりの中で、自分で決断して、納得して自分の人生を生きる。
それが幸せで後悔が少ない形なのかも知れない。
そして、自分で自分の機嫌をとり、ご機嫌でいる。
そんな母親になれたら虐待や支配をしないで済むかも知れない。

吉本ばななさんに対して、世間では批判の内容も多いみたいだけれど、私は昔も今も変わらず好きです。
ばななさんは苦しみの中で自分にできることを精一杯やってきた。
私生活でも作品でも、真っ直ぐに人を愛して大事にしてきた。
色々なことを考えさせられた記事だった。

私も、私の娘も、母も、それぞれの人生を生きていい。
そんな当たり前のことを、もう一度考えた。

吉本ばななさん、ありがとうございます。

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