同じ場所#34「裸の心/あいみょん」
この物語は、タイトルの曲を聴いた時に完成します。
物語の世界と曲を一緒に楽しんでください。
晴れた空が遠くまで広がっている。
前方にも後方にも、目に見える範囲で車はない。
道路は広いのに、僕の車だけが走っているのはなんだか贅沢である。
田んぼの水に太陽の光が反射して、キラキラと光る。
景色を横目にアクセルを踏み続ける。
法定速度ギリギリのスピードを保ち、次の街へと向かう。
出張が多すぎる。
稚内から帯広へは車で7時間程かかる。
今まで、ラジオを聴くことはなかったが運転中の娯楽といえば、それくらいしかなかったので、聴くようになった。
だいぶ助けられている。
一推しはオードリーとハライチだ。
同級生コンビのラジオは、独特の雰囲気を孕んでいる。
二人だけの特別なノリのようなものを見せてくれているような気がするのだ。
自然と高校時代のことを思い返していた。
田舎の風景とラジオに触発されたのだろう。
卒業間近に振られたあの子のことを考えていた。
幼馴染だった彼女は、僕の拠り所だった。
そんな彼女を失ってから、ずっとどこかで不安を感じていた。
彼女に頼ることができない不安だ。
大きな存在だったのだなとしみじみ思う。
彼女はいつも僕の一歩先を歩いている気がする。
小学生の時は、彼女が先に恋心を露わにしてくれたが、僕の成長が追いついていなかったため、それを無碍にしてしまった。
中学生の頃に、彼女が他の人と付き合ったのを見て、始めて僕は彼女を好きだったのだと気づくことができた。
高校生になり、彼女が他の人と別れた時に僕はやっと告白をして付き合ってもらった。
高校を卒業する頃には、彼女は広い世界を見ることを望んでいたのだろう。
僕を振って、内地の大学へと進学していった。
僕がやっと追いついたと思った時には、もう彼女は未来を見ていたのだった。
考えれば考えるほど、どうしようもなかったのだと思う。
もっと早く付き合っていれば、この恋に満足できていたかもしれない。と思いつつも、長期間付き合えたとて、解決するような問題でもない気がする。
恋に満足なんてないのだろう。
この歳になって、なにをノスタルジーに浸っているのだと、一人なのに顔が赤くなる。
なんとなく笑が溢れた。
彼女が見たら、「まだあの時のこと言ってんの?」と笑うだろう。
やっと卒業する時の彼女と並べたのかな。
サービスエリアがあったので寄る。
一応トイレを済ませ、ソフトクリームが売っていたので買った。
先端を舐める。
冷たくて甘いバニラが口の中で溶ける。
外にベンチがあったので座った。
スマホの地図アプリを開き、どれくらいの進んだだろうかと確認すると、予定よりも早く進んでいた。
そんなことをしていると、ソフトクリームの下側が溶けて垂れ、手が汚れた。
ソフトクリームを食べると昔から手が汚れる。
「下手くそ」と彼女に笑われたことを思い出す。
急いでソフトクリームを食べ、トイレで手を洗った。
外に出て伸びをする。
晴れた空に届きそうなくらい腕を伸ばした。
強い風が僕の前髪をあげる。
やっぱり田舎は気持ちがいい。
車に戻り、またラジオの続きを流す。
アクセルを踏み込んだ。
今日のラジオの曲が彼女が好きだったあの曲だったので笑ってしまった。
笑えるのなら、大丈夫ということなのだろう。
この物語の曲:
「裸の心/あいみょん」
読み終わった後に聞いてみると、物語がさらに立体的になります。
ぜひ、曲とともに、物語の余韻を味わってください。
