複製時代 1 第四諜報小隊
生き残る、母ちゃんのために…
俺が死んだら、あの人は本当に一人になる。
だから、俺はどんなことにも負けない。
ドローンが一斉に襲いかかってきた。
片山拓也の力は、闇の中の炎のように激しく強い力だった。
バーン、ドガーンッ、バーン
拓也の掌から赤黒い球体が放出され、轟音が轟いた。
ドローンは次々と粉々に砕け、煙を上げて全てパラパラと落ちた。
片山拓也の武器は念力だった。
居合わせた特殊作戦群の面々は固唾を飲んでそれを見つめていた。
凄い、こんなことができる人間がいるなんて!
「知っている者もいると思うが、自衛隊で初めてサイコキネシスをコントロールできたサイキック、片山拓也3等陸尉だ。この度、第四諜報小隊に配属されることになった。」
特殊作戦群隊長の高橋中将が片山拓也を紹介した。
「皆様の足を引っ張らないよう、精進しようと思います。よろしくお願いします。」
片山拓也は深々と礼をした。十七歳とは思えないほど大人びている少年だった。
サイコキネシスの実演の後は、第四諜報小隊の初顔合わせだった。
サイキック部隊。年齢に関係なく士官になる。
機密を守るために一生退役できない。
結婚も内輪でのみしか許されない。
その代償としての待遇だった。
まず最初に紹介されたのは、小隊長の寺澤准将だった。
「第四諜報小隊長の寺澤理人です。射撃で国体優勝をしたこともあって、狙撃手として配属されました。」
寺澤理人ー超有名人じゃないか。
拓也は息を呑んだ。
アフガニスタンで自衛隊に突っ込んできた自爆テロの車両をグレネードランチャーで撃ち抜いて表彰された、あの寺澤理人ー
大きな声で部下を恫喝するタイプではないが、上司を敵に回したくないな。
次は岩田哲三2等陸佐だった。
「ワシは岩田哲三。古武術に精通し、身体強化能力を持っている。」
拓也は、岩田陸佐の左手の小指がないのに気がついた。
まさか、元ヤクザか?
物凄く怖そうな人だ。この人も味方につけた方がいい。
イジメてやるとしたらコイツだ。
拓也は線の細い、お坊ちゃん風のイケメンに目をつけた。
「僕は朝霧志苑といいます。テレパスです。七カ国語に精通していて、多くの国でテレパスとしてお役に立てると思います。」
拓也はムカムカしてきた。
…黒川に似ている。
ああいう連中は嫌いだ。
見ているだけで腹が立つ。
朝霧2等陸尉の後ろで、ボールペンがクルリと回ってペン先が彼のほうへ向かった。
拓也は自制心を取り戻し、我に帰った。
次に紹介されたのは若い女性隊員だった。栗色の長い髪と白い透き通るような肌が印象的だが、少しぽっちゃりしていて、拓也のストライクゾーンではなかった。
彼女は宇宙人のような自己紹介をはじめた。
「私はジークフリートとともに、並行世界ロンバルドを魔王ラグマヴォーグから守るために戦っています。
ジークフリートというのはフェニックスに乗った龍殺しという異名を持つ勇士でー 」
寺澤准将は苦笑いしながら女性隊員を遮った。
「桃川陸尉、ジークフリートのことはいいから、自己紹介を。」
彼女は、しまったというように口を押さえ、自分のことを語った。
「私の名前は桃川レイア。3等陸尉です。富士樹海の訓練施設で2年ほど、チャネラーとしての訓練をしました。第三の目と呼ばれる私のマナはローズクォーツ。『愛』を暗示するこのマナは癒しを得意としています。私の能力はいわゆるヒーラーだと思ってくれていいです。短時間ならシールドも張れます。」
朝霧陸尉と桃川陸尉の間に何かが通ったのを拓也は見逃さなかった。
そういうことかー
最後は片山拓也3等陸尉の紹介だった。
「先程の訓練で皆さんご存知だと思いますが、念動力者として第四諜報小隊に配属された片山拓也です。ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします。」
片山拓也の礼儀は完璧だった。だが、この世界での生き残りを賭けて、人間関係を挑んでいく覚悟でいっぱいだった。
