【ふたつの選択】第1話「有給休暇」
会社へ行かなくていい朝を迎えた。
目覚ましをかけていないのに、いつも通り朝五時に目が覚める。
長年の習慣というのは、そう簡単には変わらないらしい。
家族はまだ誰も起きていない。
静かなキッチンでコーヒーを淹れ、トーストを焼く。
いつもと同じ朝。
でも、一つだけ違う。
今日は会社へ行かなくていい。
食事を終えても時間はたっぷりある。
何をしようかと考えた末、とりあえず散歩に出た。
平日の朝の公園。
犬の散歩をする人。
ベンチで新聞を読む人。
ジョギングをする人。
今まで見ることのなかった景色が、そこにはあった。
ベンチに座り、本を開く。
電話は鳴らない。
メールも来ない。
誰からも急かされない。
今日一日をどう使うかは、自分で決められる。
自由とは、こういうことなのかもしれない。
もちろん、不安が全くないわけではない。
四月から始まる新しい人生。
どんな毎日が待っているのかは、まだ分からない。
それでも一つだけ決めていることがある。
この退職が、「あの時、辞めてよかった」と思える選択になるように生きていくこと。
有給休暇の初日。
わたしの新しい人生は、静かな朝から始まった。
