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場を整えて、あとは委ねる

日曜日に買った乾燥麹。
ついに、自分で塩麹と醤油麹を醸してみた。
炊飯器の保温機能で発酵させるレシピ。
麹が働く環境に整えたら、ひと晩放っておくだけでできあがる(らしい)。


「醸す」は言い過ぎかな……「仕込み」だろうな。
温度、麹と塩・醤油の配合を計り、動き出せるように整える。
そのあとは、麹におまかせの時間がやってくる。


たっぷり休める週末に、やれるだけ下ごしらえして冷蔵庫や冷凍庫にストックする生活。
料理は好きだし、手間も惜しみたくはないけれど、いかんせん、体と時間は限られている。
塩分控えめ、楽に手料理感の出るものを食べたい。そういうニーズに塩麹と醤油麹はぴったりで、使い切ると買いに出てきた。
……いつか作ってみたい、と思いつつ。

作れなかったのは、瓶を煮沸して麹と醤油をあわせて手入れをするような余裕がないから。
気が向けばつくれるピクルスと違って、ぬか床は悲しい最後となってしまったくらい。
楽に、おいしく……検索語から導かれたのは、炊飯器に委ねるレシピだった。



「麹」や「醸す」ものに興味をそそられるようになったのはいつからだったろう。

一人暮らしを始めてしばらくしてからだろうか。
近所の西友に、わりといろんな産地の味噌が陳列されていたのがきっかけかもしれない。
三河の八丁味噌、京の白味噌、信州味噌、仙台味噌、九州の麦味噌……いつもの『タニタ食堂の減塩味噌』と交互に買って楽しみだした。

出汁や味噌にこだわる友人、故郷の離れた友人から、いろいろと教わったのも影響しているかもしれない。
旅や帰省のお土産だよと、たくさん、いろいろなおいしい味を手渡してくれるからだ。

今ではわたしも旅先で、味噌や地酒を求めるのがルーティンになっている。
道の駅や地元のスーパーに入る楽しみ。
造り醤油屋さんや酒蔵へ立ち寄るときのわくわく感。
この春、別府で出会ったカトレア醤油は格別だった(もっと買って帰れていたら……!)


わたしにとっての「醸す」は、食べ物にとどまらない。
人と人。土地の成り立ちと街並み。
今に至るまでの時間と変化の気配に「醸されてきたんだな」と、にんまり、しみじみする。

麹を使った食べ物に戻ろう。
風土、うつわ、目に見えない生き物の働きから、その土地ならではの香りや舌触りが形づくられる。
人の手は、それら生き物が生きていける環境を整え続けるためにある。
わたしには管理と揺らぎのせめぎ合いのようにも、思える。

狙った風味がぴたりと生まれる面白さと、思いがけないものが生まれる妙味が両立する世界。
「麹」と「醸す」は、そういう世界を生活に宿してくれる。


キッチンでヨーグルトや味噌を作るほどまめじゃないけど、ほったらかし醤油麹なら、ちょっと失敗も楽しめるんじゃないか。

明日の朝が、今から楽しみだ。

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