💧低ナトリウム血症 その3 ― ナトリウム補正の考え方
低ナトリウム血症の治療は、
原因と重症度を見極めながら、どのくらい・どの速さでNaを上げるかを考えることが重要です。
🧪 基本方針
治療の軸は大きく2つ。
Naを補う(=生理食塩水などでNa濃度を上げる)
水を制限する(=希釈を止める)
💉 軽症~中等症の場合
原因がSIADや水の摂りすぎであれば、まず水制限が中心。
Na喪失がある場合(下痢・嘔吐・利尿薬など)は等張食塩水(0.9% NaCl)で補う。
→ 生理食塩水500mLあたりNa 77mEqを含み、
じわじわ血中Naを回復させます。
🚨重症・緊急時(けいれん・意識障害など)
命に関わるレベルの低Na(おおむねNa<120mEq/L)では、
高張食塩水(3% NaCl)を使用します。
💧作り方(現場での簡便法)
生理食塩液(0.9%)500mLから100mL抜く
そこに10%食塩液120mLを加える
→ 約3%食塩水が完成します。
🎯補正のスピード目安
緊急時(けいれんなど)
→ 最初の 1〜3時間で約5mEq/L の上昇を目標
(急激な水移動を防ぐため“少しだけ上げる”イメージ)その後はゆっくり:
→ 急性低Naなら1日12mEq/L以内
→ 慢性低Naなら1日8mEq/L以内
これを超えると、脳の細胞が脱水・脱髄を起こすリスクがあります。
⚠️ ODSに注意(旧称:CPM)
Naを急に上げすぎると、
ODS(Osmotic Demyelination Syndrome)=浸透圧性脱髄症候群を起こすことがあります。
以前は「橋中心髄鞘崩壊(CPM)」と呼ばれていましたが、
いまでは橋以外の中枢神経でも脱髄が起こるため、「ODS」と総称します。
🧠 主な症状:
意識障害
構音障害・嚥下障害
四肢麻痺
→ いずれも不可逆的な神経障害を残すことがあり、急速補正は厳禁です。
🧭まとめ
軽症:水制限 or 生理食塩水
重症:3%食塩水(最初の数時間で+5mEq/L)
1日の上昇は、急性なら12mEq/L、慢性なら8mEq/L以内
ODS(旧CPM)に注意。速すぎる補正は脳を壊す。
