続報:ナフサ危機の現実――「延命」の裏に隠された製造業の限界
前回、自分は日本のエネルギー安保の致命的な欠陥を指摘した。その懸念は今、現実の企業動向となって我々の目の前に突きつけられている。
### 1. 警告は現実となった
まず、前回の考察を振り返っておきたい。
日本政府の最新発表では、石油備蓄全体で248日分を確保しているとされる。しかし、プラスチック、衣料、タイヤ、洗剤などの原料となるナフサそのものの在庫は、わずか20日分程度に過ぎない。
この「20日の猶予」という厳しい現実を裏付けるように、国内石化大手の動きが急変している。
2026年4月9日の報道によれば、三菱ケミカルグループと旭化成は、共同運営する岡山県の水島コンビナートにおけるエチレン生産設備について、6月中旬まで稼働を維持できる見通しだと発表した。一見、安心感を与えるニュースに見えるが、その実態は凄まじい「自転車操業」だ。
* 3月からの減産継続: すでに3月11日から減産対応を強いられており、フル稼働はできていない。
* 綱渡りの調達: 中東外からの代替調達を必死に進めてようやく確保したのが、わずか2ヶ月先の原料だ。これは安定供給ではなく、文字通りの「延命措置」に過ぎない。
### 2. 「在庫4ヶ月」と現場の乖離
報道では、高市首相が「在庫4ヶ月」という言葉で状況の沈静化を図る動きも見られる。しかし、ここには前回のnoteで指摘した「物理的な壁」が潜んでいる。
中東産原油から得られるナフサの収率はわずか10%程度である。国内の休眠設備をフル稼働させても、猶予をわずか3日分程度しか延命できないのが物理的な限界である。
企業が「6月中旬まで」と期限を切って発表せざるを得ないこと自体が、政府の楽観的な見通しと、現場の原料確保の厳しさの乖離を物語っている。原油があっても、素材(ナフサ)として取り出せる量は極めて少ない。この収率の低さこそが、企業に期限付きの発表を強いている正体だ。
### 3. 我々が直面する「供給制限」のフェーズ
これまでは消費者に「節約」を呼びかけてきたが、状況はさらに進み、企業側が「作れない」フェーズに入りつつある。国内全体の約8%を占める設備が定期修理や減産に入ることで、プラスチック原料の供給不足は今後さらに顕在化するだろう。
今こそ、前回提言した「燃料補助金の段階的撤廃」と「自家用車のナンバー別利用制限」を断行し、限られた原油を素材生産へ優先配分するべきだ。燃料として燃やし尽くしている余裕は、もう日本にはない。
## 参考文献
* 日本経済新聞(2026年4月9日)「三菱ケミカルG・旭化成、岡山のエチレン設備稼働を6月中旬まで維持へ」
* 関連報道:高市首相「在庫4カ月」で安心? 状況改善でも一部化学品は不足
