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🕊 審神者の日常《第三十五章:伝えず、託す》― だれにもなれない、だからこそ ―

夕暮れの空を見上げていたら、
ふと、ラジオから静かな声が流れてきました。
「人はひと、自分はじぶん。誰かに成り代わることはできない」――
その言葉に、なんだか救われたような気がしたんです。

わたしたちは、ときに誰かの苦しみを見て、
「代わってあげたい」とさえ思うことがありますよね。
あの子の痛みを、私が背負えたら。
あの人の寂しさを、私が癒せたら。

でも、気づくんです。
それは“その人”を想っているようで、
実は“わたしの中のその人”を想っているのかもしれないって。

他者の人生に寄り添うことはできても、
決して、その人の人生を生きることはできない。
わたしたちは、どこまでいっても、自分にしかなれません。
だからこそ、たどり着いたんです。

「伝えよう」とするのではなく、
「託そう」と思った方が、ずっと静かで、ずっと深いって。

たとえば言葉にしなくても、
描いた絵の中に、書いた詩のなかに、
その人への願いが、ひっそりと宿ることがある。

「わかってほしい」じゃなくて、
「このままでいいから、届いてくれたらうれしい」――
そんな気持ちを、そっと作品に託していく。

それはきっと、
誰かの心に触れたとき、無言のまま灯りをともすような、
そんなささやかな“贈りもの”になるのかもしれません。

だから今日も私は、
語りすぎず、近づきすぎず、
でもたしかに、深く想いながら。

誰にもなれない自分として、
誰かに向けて、静かに紡いでいくのです。

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