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SF傑作『1984』『スローターハウス5』|原作小説読まずに映画を見たら理解できるか?

近代SF小説の傑作と謳われている2作『スローターハウス5』(1964年)と『1984』(1949年)の映画化作品をAmazonプライムで発見したので、鑑賞。

難解とも評される原作を読んでない人が映画だけ見たら、内容を理解できるのか?原作を読みたくなるのか?を検証してみた回です。

難解SF小説を映像化した方々に畏敬の念を抱きつつ、たった2時間で主人公の人生を追体験させていただこう。どちらの映画作品も原作ファンには評価が高いようで、きっと忠実ではあるのだろう。原作理解には役立ちそうだ。


読めるSF、読めないSF

私は割とSFが好きなんですけども、どんな小説でも読み進められるわけではないんですよね。

長さ?文体?ただの気分?どうしても、読み進められない本があります。
大人になってから、図書館で軽い気持ちで借りた本は、読めないことが多いです。自分で買って読まないといけないみたいです。

海外原作なんて、もっと読めない。その1つがこれよ、名作SF小説『スローターハウス5』
どういう経緯だったか、宇宙やSF好きの会社の同僚だった人に、中古の文庫本をもらったんだよね。最後まで読んでないまま放置してたら、最近Amazonプライムで発見したわけ、映画の方を。

年季が入っているハヤカワ文庫
和田誠イラストは可愛い🩷

そして、近代ディストピア小説の傑作と呼ばれる『1984』の映画版も発見。
ディストピア小説No.1と言われているので、ディストピア度MAXなんだろう。村上春樹の『1Q84』は読んでないが、この小説の影響は多大なようである。

というわけで、この機会に、この2つの世界的SF小説の映画化作品を観てみることに。

『DUNE/砂の惑星』なんかは、映画のpart1を観た後に無性に読みたくなって、文庫本全3巻は読破したし、映画きっかけで読み始める可能性もあるぞ!

先に結論

全く無知で見始めるとビックリして「なんじゃコリャ」な感じになる。
これから映画だけ見ようと考えている人には、次のことを頭に入れて見ることをおススメしよう。

『スローターハウス5』→主人公が自分の意志に反して時間旅行しちゃう話。そのきっかけを探し「全ての時間は同時に存在し変えられないものだ」という宇宙観から、絶望的な現実をどう受け止めるか考えよう!

『1984』→自由が奪われた管理社会で人間性を失っていくディストピア話。
情報の改ざん、言語が思考に与える影響、現代社会と照らし合わせながら、絶望の構造を紐解いていこう!

時間旅行と戦争とブラックコメディ、
『スローターハウス5』

原作小説は、1969年出版、カート・ヴォネガット・ジュニア(Kurt Vonnegut Jr.)作の『スローターハウス5』。
作家自身が体験したドレスデン爆撃などの悲惨な戦争の現実を、時間旅行SFとブラックユーモアを融合させて描かれており、現代アメリカ文学の最高峰の1つと評されている。

ジョージ・ロイ・ヒル監督によって、1972年に映画製作。(日本公開は1975年4月)。上映時間は103分と長くはない。

誰かが死ぬたびに「So it goes.(そういうものだ)」
奥さんの存在はかなりコメディ。
宇宙人とのやりとりも興味深い。

バッハの旋律を聴いたせいです

最初に流れる音楽がね、心に響いてくる。
バッハの整然とした美しい旋律が、ドレスデンの美しい街並みと時空を超えて淡々と生きる主人公の雰囲気にぴったり。

こちらは、革新的なバッハ演奏や風変わりエピソードで有名なピアニスト、グレン・グールドの演奏だという。こういう演出、素晴らしい!

スローターハウスって何のこと?

主人公は、自分の意思とは関係なく、時間旅行をしちゃう軟弱なアメリカ兵ビリー・ピルグリム。「スローターハウス5」とは「第5屠殺場」のことで、 第二次世界大戦末期、ドイツのドレスデンで捕虜となったビリーが、連合軍による大空襲の際に身を隠した食肉処理場の地下収容所の呼び名だ。

主人公らしくない主人公

ピルグリム役の俳優は、歳をとった時代もヘアメイクで隠しきれない若々しさがあり、すきっ歯もなんだかチャーミング。

ハリウッド映画によく出てくる、おしゃべりせっかちハッピー野郎(だいぶ偏見)とは異なり、ピルグリムは若い時からなんともボサっとマイペースな上に、時空を超えて悟りを開いたのか、飄々した感じが面白い。

時間旅行と宇宙動物園

時系列がぐちゃぐちゃなので分かりにくいが、なぜピルグリムが時間トリップするようになったのかと言うと、飛行機事故による脳障害と宇宙人に拉致されたことがきっかけのようである。戦争のトラウマから自分を守るために見えた幻想とも解釈されたりもするらしい。

小説にも早々に「トラルファマドール星人」という名称が出てくるが、映画には姿形は登場しない。
トラルファマドール星人に拉致されたピルグリムやモンタナ(失踪した女優)を居住させているドーム型の宇宙動物園(見せ物小屋)が登場して、私はビックリした。
そこではトラルファマドール星人の「声」が彼らと会話をする。しきりに「結合するのか?」という星人のセリフに笑っちゃった。

奇妙で不条理でシニカル、シュールなストーリーなので、万人受けはしなさそうではあるが、音楽使いや映像使いは全然悪くない。
淡々としていて暗くはないし、悲劇的描写ではない戦争映画、異色SFが見たい人、原作ファンなら観てもいいのでは?

『スローターハウス5』が見たくなる、その他豆知識

・ジョージ・ロイ・ヒル監督は『明日に向かって撃て!』『スティング』『ガープの世界』などで知られるハリウッドの名監督。
・原作者カート・ヴォネガット本人が映画を絶賛。
・「何を考えているか分からない無気力な兵士・中年男」の主人公を好演したのは当時無名だったマイケル・サックス。あえて地味で無個性な印象を与える俳優を監督が起用したらしい。
・第25回カンヌ国際映画祭で審査員賞、SF界の優れた映像作品に贈られるヒューゴー賞を受賞。
・作者のカート・ヴォネガット自身が、第二次世界大戦中の「ドレスデン大空襲」を捕虜として食料備蓄庫(屠殺場=スローターハウス)の地下で生き延びた実体験がベースとなっている。大空襲の描写には、当時の特撮技術と実際の資料映像が組み合わせて使われ、街が炎に包まれる凄惨なシーンがリアルに表現された。
・トラウファマドール星人という宇宙人が登場し、すべての時間は同時に存在するという「決定論」的な世界観が描かれている。
・初期のハヤカワ文庫などでは邦題が『屠殺場5号』となっていた。
・主人公が過去・現在・未来の時間を不規則に行き来するプロットは、映画のモンタージュ理論(編集技術)を限界まで駆使して視覚化されており、SF映画史における隠れた傑作として語り継がれている。らしい。

みんな、見てみたくなったかな?

ディストピアすぎた『1984』

ジョージ・オーウェルが1949年に発表した小説『1984』は、独裁政権がすべてを支配する恐ろしい監視社会を描いたディストピア名作。

タイトルと同じ1984年に公開された映画の雰囲気は、原作にだいぶ忠実らしい。監督は『イル・ポスティーノ』のマイケル・ラドフォード。

これだけで、もう怖い。
右上は実在するかも不明な「ビッグ・ブラザー」。
SFっていうか、ホラーっていうか。

ジョン・ハートが主人公を演じていて、独裁政権の管理社会の話とくれば、『Vフォー・ヴェンデッタ』(ナタリー・ポートマンが坊主になるので有名な映画)を強く想起してしまう。『Vフォー・ヴェンデッタ』は、ガイ・フォークスの仮面をつけた謎のヒーローが出てくるアメコミ系映画で、私にはかなり面白かった。

ジョン・ハートが『V〜』では独裁者側を演じたという面白い因縁もあって、こちらも期待して見たものの、、『1984』はとにかく救いがなく、希望がない。
徹底的に打ちのめされるディストピア話として終了。

見ると老け込む映画

ちなみに、ジョン・ハートは『エレファントマン』の主演人物であり、『エイリアン』では栄えあるエイリアンに体内をぶち破られる第一号であり、いろんな映画のおじいちゃん役を演じてきたイギリス人俳優。(2017年没)

原作では主人公のウィンストンは39歳、当時のジョン・ハートは44歳。映画ではもっと老けて見えたが、あんな希望のない環境では誰もが老けそう。
映画を見た後、自分も一回り老けた気がしたもん。

あらすじ

過去の新聞記事や文献を党の都合のいいように改ざんする真理省につとめ、体制に疑問を抱く主人公のウィンストン。
隠し部屋で日記を書き始め、同僚の女性に告白されて密会を重ねていくが、同志だと思っていた骨董屋店主やオブライエンが実は思想警察であり、罠にはまって捕まり、過酷な拷問と洗脳によって精神を完全に屈服させられていく話。

絶望感を味わうのにうってつけ

重厚な映像、重厚な演技、人間性を奪う冷酷無比な拷問シーン、テレスクリーンと常に監視される不気味な息苦しさ、退廃的絶望的雰囲気、、
そんなものを味わいたい人に、おすすめです。ゲゲゲー

とにかく暗い、暗すぎる!
113分とそんなに長くないのに、救いのなさでさらに長く感じる。
そして、何をやっているのか何を言っているのか内容がイマイチわからなくて、必死で追いつこうと考えるので、疲れた。

よほどのディストピア好きじゃなければ、同じディストピアでも、まだ抑揚がある『ブレードランナー』や『トータル・リコール』、『未来世紀ブラジル』くらいにしとけ、と言いたい。

「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」

実在する人間ではなく、党が国民を団結させ、恐怖で支配するために作り上げた「架空の偶像(シンボル)」とされるビッグ・ブラザー。
「テレスクリーン」という装置にその顔が映し出され、市民の生活や表情を24時間監視するシステムの中心人物であり、親しみやすい呼称を独裁者につけることで、支配を正当化する恐怖が描かれているとか。

相反する2つの信念を同時に抱き、その両方を真実であると盲目的に信じ込む思考能力「二重思考(ダブルシンク)」、言葉を間引いて思考を統制する「新言語(ニュースピーク)」とか、なんだか使いたくなる言葉巧みな用語がたくさん出てくるのも、この作品の人気の秘密なのかな。

話の中では語彙が減らされていくものの、この緻密な架空の世界を創り上げるジョージ・オーウェルの言葉の創造性は目を見張るものがあり、原作はそこがきっと魅力的なのだろう。

101号室の恐怖、2+2=5になる世界

てか、散々拷問して洗脳して、党の理想の状態に染め上げてから処刑するんだから、イングソック党のみんなはかなりの暇人だよね。
大勢で巧妙に罠も仕掛けるしね。体制維持の確認儀式が最も重要らしい。
※イングソック党=「英国社会主義(English Socialism)」の略

支配体制を維持するために戦争を偽装し、歴史を改ざんし、反政府組織のリーダー「ゴールドステイン」ですら、民衆のスケープゴートや反体制派の罠として党がでっち上げた架空の人物というトンデモない世界。アプローチが真逆の『マトリックス』との共通点や違いを考察するのも面白そう。

『1984』映画が見たくなるかもしれない豆知識アレコレ

・ウィンストンが日記に「1984年4月4日」と書き込むシーンは、実際に1984年4月4日に撮影されたらしい。
・原作者ジョージ・オーウェルが小説を執筆した1948年の「48」の数字を入れ替えてタイトルにした。つまり、36年後の未来。
・尋問官オブライエンを演じた名優リチャード・バートンは、撮影終了の数週間後に急逝し、本作が遺作となった。
・音楽は当時のUK人気デュオ、ユーリズミックスが手掛けたらしい。
・日本の一般映画の劇場公開において、初めてヘア無修正(下の毛ね、女性だけね)のボカシなしが許可された歴史的な作品。なので閲覧ご注意。

子供が親を告発するほど思想教育されているとか、ジュリアの正反対な行動とか、考えさせられることが山ほどあったよ。

結果

うーん、『スローターハウス5』は宇宙人や奥さんがどう描かれているのか気になるので、読めそうな気もしてきた。『1984』もかなり気になるけど、考え込みそうだし、老け込みそうだから、老後のお楽しみかな。

何やら小説版は付録があり、一筋の希望の光が感じられる仕掛けがあるとかないとか。原作読んだ人は、どう思ったのかな?

とりあえず、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』なら読めそうだ。



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アンドレ安堂 記事にご満足いただけたら、とっても嬉しいです☺️

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