だから私はエルフじゃないの! -2- #胡乱エルフ
重苦しい金属の摩擦音と共に、砲塔の空洞がシャンティカを捉えた。
「無知なおのぼりさんに教えてやるぜぇシャンティカァ、アタイは親切だからよぅ。あたしのナナマルは最強!無敵!火精霊を封じた高出力の炉とミスリル銀の軽量強靭な装甲!樹海も何のそのの走破性!極めつけは黒虹鋼から生成され風精霊に祝福された加速徹甲弾!走攻守そろった地上最強の戦車よ!そのアタイをアンタァ……コケにしようってのかい?その!惰弱な!ネクロエルフのために!?」
四方八方の木々が揺れるほどの大音声でタンクエルフのテッカは吠え猛った。ヨミジは震え上がる。実際問題、タンクエルフの相棒たる戦車は難攻不落の移動要塞であり、生身での戦闘などは自殺行為。砲弾がかすめればひき肉になり、懐に飛び込んでも轢殺からの原型を留めないミートジャーキーになるのがオチだ。
終わった、諦観と共に辞世の遺言を必死に考えるヨミジに対し、振り返ったシャンティカはニコッと場違いにも思える笑顔を示して見せた。そして前に向き直す。
「そんな大層な武装に乗っかって、やることは弱いものイジメなんて、お里がしれちゃうんじゃない?」
「ハッ!イジメなんて高尚な行いじゃないねぇ、アタイのコレは、害獣駆除さぁ」
「駆除作業ってことは、命乞いされても無視ってことね」
「そうともそうとも、わかったらさっさとどきな。無関係なヤツにぶつけるほど黒虹鋼弾はやすかぁねぇ……ん、だ?」
テッカは絶句した。シャンティカが見せたのはあっかんべーの表情だったからだ。ただでさえ沸点が低いテッカの空焚き堪忍袋は真っ赤に灼けた。
「やれるモノならやってみなさい!そんなオモチャ、なんてことないわ!」
テッカが戦車に潜り込みハッチを閉じるよりなお早く、シャンティカの姿が消えた。樹上へとワイヤージャンプにて跳躍したのだ!履帯旋回するナナマル戦車!
「逃げなさい!」
呆然とするヨミジに、頭上より声かけたかと思えば、葉場の影をゆらしシャンティカの気配がみるみる遠ざかっていく。そしてけたたましい走行音をたて追従するナナマル!木々がまたなぎ倒され、平地へと作り変えられていく!
「行っちゃいました……」
あたりには、ヨミジと数十体のゴブリンの亡骸、そして無残になぎ倒された木々ばかりが残された。
ヨミジは懐にくくりつけた秘伝の道具を改める。忌まわしい死霊術の秘具は確かにまだそこに有った。
―――――
ヒュカッ!空を切り裂いて矢が襲い来る!鋭く研がれた矢じりが戦車の傾斜装甲に当たるも、わずかに表面を削るばかりだ。
「ハッハッ、ナナマルの装甲はボンクラ騎士共の鎧とは訳か違うんだ!弓矢でぬける代物じゃないんだよ!」
元より戦力が違いすぎるが、それでもタンクエルフは『舐めてきたヤツは砲弾で持って木っ端微塵にしてわからせる』がモットーである。決して容赦も手加減もしない。
【だから私はエルフじゃないの! -2-:終わり|-3-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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