「イクメン(育メン)」について思うこと
これを書いている日の前日、急きょ有給休暇を取った。
いつも通り出勤し、もうすぐ職場、というところで電話が鳴る。
娘の保育園からである。
発熱したので迎えに来て欲しいとの事。
この日は朝から怪しげな雰囲気が出ていたので、もし迎えに行くなら僕、ということを妻とは話し合い済みだった。
とりあえずそのまま職場に入り、その日処理すべき仕事を持ち帰るためノートパソコンをバッグにしまい、15分前に降りた地下鉄にすぐさま乗り込み保育園に向かう。
地下鉄を降り自家用車が停めてある駐車場へと向かう道すがら、各方面に電話を入れ、伝達する義務はないものの休暇の理由を世間話程度に伝える。
何名かに連絡を入れる中で、とあるフレーズを投げかけられる。
「奥さんの代わりにお迎えなんて、偉いですね!さすがイクメン」
何度か経験があるが、これを言われると僕は少々テンションが下がるのだ。
話の流れとして、僕の行動を好意的に捉えてくれていることは有難い。
ただ、この「イクメン」という言葉、どことなく薄気味悪いのである。
この言葉が台頭してきたのは2000年代、新語・流行語大賞では2010年にトップ10入りを果たしているが、まだ生きていたのか。
どちらかというと死語にすらなりつつあると思っていた。
月並みな事を言って恐縮だが、僕は特に「妻の代わり」で迎えに行く訳でもなければ、「妻の代わり」に風呂に入れている訳でも、寝かし付けをしている訳でもないのだ。
自分の身体スペック的に授乳こそ困難だが、それ以外のことについては普通にやる。
疲れて面倒な時など無いと言えば嘘になるが、なぜ世話をするかと問われれば、自分の子どもだからである。
こちらがサボれば嫌な思いをするのは娘なのだ。
断じてイクメンだからではない。
子育てにはそれぞれの家庭のスタイルがあるので、よそ様のことに口を出しはしない。
仕事や得手不得手によって夫婦どちらかに子どもの世話や家事の比率が偏ることも特に問題は無いと思っている。
共働き、片方が専業主婦/主夫、などでバランスは変わってくるものだ。
ただ、イクメンという言葉については引っ掛かりを感じてしまう。
「イケメン」から派生した言葉遊びで「上手いこと言ってやった!」感が漂っているが、では育児を頑張る母親は「イクウィメン」なのか。
少なくとも僕は耳にしたことはない。
結局のところこの言葉には、「男は子どもの世話をするものではない」が前提に据えられ、「それなのに育児を頑張っている、偉い」という響きがあるのだ。
昭和初期かよ、と思う。
たまに見聞きする過剰なフェミニズムにも疑問を感じることもあるが、この件に関しては男女差についての違和感を感じる。
点数稼ぎの意識は無いのに変な評価をされているようで、普通にやっている自分がアホらしくなるのだ。
一般人同士の日常会話で使われるくらいなら別にどうでもいい。
本稿を書くにあたって、これが死語ではなく今でも「生きている」単語なのかを調べて少し面食らった。
育てる男が、家族を変える。社会が動く。イクメンプロジェクト
厚生労働省が旗振りをしている事業だ。
2021年現在も。
ご丁寧に公式ソングまで用意されている。
内容はさておき、安易に流行りに乗る、というか、死語になりつつあると気付かずに乗り続けているのはいかがなものか。
ピンボケ感が凄いのだ。
このプロジェクトといいプレミアムフライデーといい、省庁問わずスベるのが趣味としか思えない。
(話は逸れるが、プレミアムフライデーのwebサイトは今日現在生きているが、フェードアウト的に破綻を迎えている状態であった)
別にどこかの民間企業が頑張るならいいが、税金使って国がスベるなよ、と言いたい。
この件に使われてはいないだろうが、タバコ代、酒代、ガソリン代として散々納税した税金を少しくらい返していただきたいものである。
政治批判や人権派じみた言論は趣味ではないし、僕のnoteの趣旨から逸れるのでこの辺にするが…特に考えもなくイクメンと呼ばれると虫唾が走る、というただの自分勝手な愚痴である。
「自分は育児に協力的、手伝っている」などと平気で自画自賛する人は問答無用で好きにはなれない。
協力や手伝いではない、普通にお前の仕事だ、と思う。
育児の主体性を電車の網棚にでも置いてきたとしか思えない。
が、「うちの旦那イクメンなの」という会話に割って入って言葉狩りをするような山賊みたいな真似をするつもりもない。
事実、その家では旦那さんも含め育児を担っている幸せな家庭なのだろう。
関係の無い僕が攻め立てるのは筋が通らない。
イクメンに対しポジティブな考えを持つ人自体を否定する権利は僕にはないし、それはそれで幸せなことだ。
それでも僕が自分で「イクメンです!」と宣言することはないし、人に「イクメンだね!」と言うこともない。
波風立てずにひっそりと、やるべき事をやるだけである。
(…ここまで暴言を吐いておいて、波風、ひっそり、などとは言いづらいが。
イクメンについて肯定的な記事を書いていらっしゃるクリエイターの方を否定する意図は無いので、個人の見解としてどうか御容赦頂きたい。)
ちなみに、冒頭で「さすがイクメン」と声を掛けて来た人に対しては、「そうですね、昔から整った顔をしていると言われます」という、事実に反する世界一悲しくつまらないボケを返しておいた。
「いやいや、育てる方ね!」という、誰でも簡単に出来る分かりやすいツッコミをさせるための、捨て身の誘導だ。
子育てに積極的であることよりも、「この人つまんない」と思われるリスクが急増するのでお勧めはしない。
イケメンとイクメンをうやむやにして、ちょっとした僕にとってのストレスを回避する処世術を体得した日であった。
