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夢中という名の成分、60代。


60代になって、気づいたことがある。
健康診断の結果には
書いていないけれど、私の体には
「夢中という名の成分」が
けっこう多めに含まれている。

noteを書き始めると、
時間の存在を忘れる。
画面の白と文字の黒だけが
くっきりして、
コーヒーは冷め、脚はしびれ、
肺は「そろそろどうしますか」と
訴えてくる。

指がふっと止まったところで、
ようやく深呼吸。
そこまでが、一回分の
「夢中タイム」だ。

60代、趣味の前では呼吸の優先順位が下がる。

外に出るときは、カメラが相棒になった。
空の雲は天気ではなく構図になり、
道端の雑草は、前ボケの候補として急に重要人物になる。

なにかを撮ろうとすると、
息を止める癖がある。
ピントと一緒に肺まで固定してしまうのだ。
一枚撮るたび、胸のあたりで小さな息止め選手権が開かれている。

家に帰れば、今度はヴァイオリンだ。
左手の指は迷子、右手の弓は落ち着かない。
難しいフレーズに入ると、また息を
詰める。

数小節分の我慢のあと、まとめて吐く。
それに合わせて、心拍数も上がる。
60代の血圧にはあまり優しくないが、
本人はなぜかご機嫌だ。

音楽を聴くときも、つい極端になる。
Beat It のサビだけを、何度も繰り返し聴いてしまう。
一番テンションが跳ね上がるところだけを、何度もすくって飲み干す。
ついでに、足と手が動いてしまうが
ダンスの難しさを痛感する。
(盆踊りなら、なんとかできる
自信はあるのだが)

冷静に考えれば、自律神経への挑戦状みたいな楽しみ方だ。
それでも指は「再生」を押す。
心だけは、まだ全力疾走したいらしい。

こうして並べてみると、
私の中の「60代成分表」はだいたいこうだ。

💊骨密度 少し気になる

💊夢中成分 やや過多

💊我慢強さ そこそこ

💊自分ツッコミ力 上昇傾向

夢中という名の成分は、体には少しきつい。
呼吸は浅くなり、血圧はほんの少し高めになる。
けれどそのかわり、心の方は、
ときどき二十代くらいまでさかのぼってしまう。

だから今日も、noteを開き、
カメラを持ち、弓を構え、
サビを再生する。
「ほどほどで」と自分に言い聞かせながら、ほどほどのラインを毎回少しだけ
越えていく。

──60代。
夢中になって気がつけば息を
していない。
血圧も、すこし上がっている。

それでも、夢中成分ゼロの人生の方が、
よっぽど私には、健康に悪そうだ。


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