兼金沼カヌー観察会〜ヒツジグサ
朝9時前の兼金沼は風が完全止まり水面は一枚の巨大なガラス板と化していた。
今日はカヌーを2艇提供する事になっている。
釧路から駆けつけてくれたFさんに手伝ってもらい「アムール(АМУР)」と「ラマーシカ(РАМАШКА)」の2艇をピストン輸送した。
フネを下ろして湖岸に出てみる。兼金沼の周囲は森と言うほどでもないが、濃く繁ったjヤチダモやハルニレ、ハンノキなどに囲まれている。
木の間から水面がのぞていた。
鏡のような水面。こんな日にフネを漕ぐとパドルから滴った水滴が水面で踊るのだ。そんな事を思い出しながら景色を撮った。
あまりに魅力的でカメラをどこに向けて良いのかわからなくなる。

やがて参加者がやって来た。
総勢11名。野付でカヌーガイドをしているIさんの貸してくれたフネも合わせて3艇に分乗する。
僕はまだ身体が回復途中なので陸で留守番だ。
皆、出艇前から湖心を覆っているヒツジグサやジュンサイ、ヒシなどの浮水葉に心を奪われている様子だ。気持ちは早くも湖心に飛んでいるみたいだ。
帰って来てからの土産話によるとヒツジグサが結構咲いていたようだ。
他にはヒシも花をつけてい、ネムロコウホネも見られたとの事だ。
ヒツジグサは学名を Nymphaea tetragona と言う。Nymphaea(ニンファア)は古代ギリシャ語で妖精とか水の精の事だ。
また、tetragona はtetra=4、gona は角とか稜とか面という意味である。
ほら、五角形をペンタゴン(pentagon)と言いますよね!
つまりヒツジグサの学名は「五つの角を持つ水の妖精」という事になる。
ただし葉や花のどこを探しても四角張った部分は見当たらない。
命名した植物学者は、果実や種子、あるいは子房に見られる四角ばった形状からこの名を与えたのだろうとモノの本に書いてあった。
僕の母の戒名に聖蓮院と言う院号が付いている。
母にこの戒名が送られてからヒツジグサが一挙に身近な存在になった。

和名のヒツジグサは未(ひつじ)の刻に花を開くという意味のようだ。しかし、実際には未の刻に咲くとは限らぬようだが。
それよりも面白いのはこの花が1日目は雌しべが成熟 (雌性期)、2日目に雄しべが成熟 (雄性期) する雌性先熟である点だ。これによって自花受精を防ぎ、遺伝的多様性を保っていると考えられている。

今日のような晴天静水にヒツジグサが静かに咲いている風景は、まるで極楽浄土のようであるが(行ったことはないけれど)、案外しっかりと生きる知恵を凝らしているという訳だ。
