三月と猫/掌編
三月は、猫を見ていた。
公園のベンチの下で、丸くなっている。
まだ少し寒いのだろう。
三月は立ち止まった。
名前を呼ばれなくなって、
どのくらい経ったのか分からない。
猫は三月を見ていた。
じっとして、逃げなかった。
三月はポケットに手を入れたまま、
目が離せなかった。
自分を見上げて、
何も言わずに、ただ見ていた。
守るはずだったのに。
猫は目を細めた。
責めるでもなく、許すでもなく。
三月は猫の名前を思い出せなかった。
猫は、三月だったのかもしれない。
三月は、動かなかった。
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