丸いボタン/ショートショート
晴れた日に、ボタンを見つけた。
公園のベンチの上。
赤くて、丸くて、
押してはいけない感じのボタンだった。
ベンチの隣にいつからか知らない男がいた。
「押すと思います?」
私はボタンを見た。
男は指を三本立てた。
指の形が、少しだけ変だった。
「世界が終わるボタン」
「音が鳴るボタン」
「何も起きないボタン」
「三つ目が一番つまらないですね」
と私が言うと、男は頷いた。
「でも一番多い」
私はボタンを眺めた。
押せば分かる。
それは、分かっていた。
「押さないんですか」
男が聞いた。
「今日はやめておきます」
「理由は?」
私は空を見た。
雲が少しだけ流れていた。
「晴れてるから」
男は少し考えてから、笑った。
「なるほど」
「もし世界が終わるなら」
私は言った。
「曇りの日のほうが似合う」
男はボタンをポケットに入れた。
「じゃあまた、曇りの日に」
去っていく背中を見ながら、私は聞いた。
「それ、誰が置いたんです?」
男は振り返らずに言った。
「あなたですよ」
ベンチの上には、
四角いボタンがもう一つ置かれていた。
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