ショートショート/透明な長靴

透明な長靴を使った犯罪が多発していた。

奇妙なことに、侵入した痕跡がないのだ。

警察は頭を抱えていた。

「これで俺たちは最高だ」

男は透明な長靴を掲げた。

「足元が消える。足跡も残らない。防犯カメラ対策も完璧だ」

「頭まで透明になったの?」

「は?」

「いや、そんなに自信満々だから」

男はため息をつく。

「今日の現場は?」

「ちゃんとリサーチ済みよ」

仲間はパソコンを操作した。

「防犯カメラなし」

「よし」

「警備会社との契約なし」

「素晴らしい」

「ただ一つ問題がある」

「何だ」

「金庫は和室」

男は黙った。

「畳か」

「畳よ」

「沈むな」

「沈むわね」

しばらく沈黙が続いた。

「ジャンプしながら移動するか?」

「余計怪しい」

捜査本部に緊張が走っていた。

「刑事!現場写真です!」

若い刑事が駆け込んでくる。

ベテラン刑事は写真を受け取ると、一枚目で頷いた。

「なるほど」

「何かわかったんですか?」

「なんとなくな」

「えっ」

「畳は嘘をつかない」

若い刑事は写真を見た。

「初めて聞きました」

「いや、今思いついた」

数日後、犯人は逮捕された。

取調室で男はうなだれていた。

「完璧だと思ったんだがな」

刑事はうなずく。

「そうでしょうね」

「何が駄目だった?」

刑事は少し考えた。

「さあ」

「さあ?」

「畳かもしれないし」

「畳?」

「近所のおばあさんかもしれない」

「どっちだよ」

男は黙った。

刑事は肩をすくめる。

「近所のおばあさんだ」

「足は見えないだろ」

「顔だ」





こちらの企画に参加させていただきました。

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