ショートショート/透明な長靴
透明な長靴を使った犯罪が多発していた。
奇妙なことに、侵入した痕跡がないのだ。
警察は頭を抱えていた。
*
「これで俺たちは最高だ」
男は透明な長靴を掲げた。
「足元が消える。足跡も残らない。防犯カメラ対策も完璧だ」
「頭まで透明になったの?」
「は?」
「いや、そんなに自信満々だから」
男はため息をつく。
「今日の現場は?」
「ちゃんとリサーチ済みよ」
仲間はパソコンを操作した。
「防犯カメラなし」
「よし」
「警備会社との契約なし」
「素晴らしい」
「ただ一つ問題がある」
「何だ」
「金庫は和室」
男は黙った。
「畳か」
「畳よ」
「沈むな」
「沈むわね」
しばらく沈黙が続いた。
「ジャンプしながら移動するか?」
「余計怪しい」
*
捜査本部に緊張が走っていた。
「刑事!現場写真です!」
若い刑事が駆け込んでくる。
ベテラン刑事は写真を受け取ると、一枚目で頷いた。
「なるほど」
「何かわかったんですか?」
「なんとなくな」
「えっ」
「畳は嘘をつかない」
若い刑事は写真を見た。
「初めて聞きました」
「いや、今思いついた」
*
数日後、犯人は逮捕された。
取調室で男はうなだれていた。
「完璧だと思ったんだがな」
刑事はうなずく。
「そうでしょうね」
「何が駄目だった?」
刑事は少し考えた。
「さあ」
「さあ?」
「畳かもしれないし」
「畳?」
「近所のおばあさんかもしれない」
「どっちだよ」
男は黙った。
刑事は肩をすくめる。
「近所のおばあさんだ」
「足は見えないだろ」
「顔だ」
こちらの企画に参加させていただきました。
いいなと思ったら応援しよう!
こなつを応援してくれると、飼い主は幸せです。