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積読濫読(それでも、日本人は「戦争」を選んだ)

積読濫読 2025-20
ー夏休みの課題図書ー

1.「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」
  加藤陽子著(朝日出版社 2009年7月)
2.「戦争まで/歴史を決めた交渉と日本の失敗
     加藤陽子著(朝日出版社2016年8月)
3.「歴史の逆流ー時代の分水嶺を読み解くー」
     長谷部恭男・杉田敦・加藤陽子共著
   (朝日新聞出版 2022年12月)

今年は戦後80年ということもあって、新聞・ラジオ・テレビなどを通じて、数多くの戦争に関わるドキュメンタリーやドラマが放送された。

多くの力作・問題作を観たが、個人的に最も印象に残ったのは、7月21日から三週にわたってOAされた「映像の世紀高精細スペシャル ヨーロッパ2077日の地獄」(各45分)

日本の戦争そのものではなく、ヨーロッパの戦争について、当時の映像や写真(モノクロ)を最先端のAIテクノロジーを用いてカラー化するとともに、精細化された素竿を丹念にチェックすることにより、ほんの片隅に移った人物の表情や動作を読み取り、その真の意味を探り出す。

最晩年のヒトラーが少年兵を鼓舞する映像の片隅を拡大して、その震える左手からこの独裁者が既にパーキンソン病を患っており、にもかかわらずドイツ国民の運命を握っていたという事実を暴き出す。

だが何よりも心を揺さぶったのは第1回のサブタイトル、「ドイツ国民は共犯者となった」。

39年9月のポーランド侵攻から矢継ぎ早にフィンランド・デンマーク・ノルウェーを降伏に追い込み、40年6月のフランス=パリ陥落までわずか9ヶ月。連戦連勝の中で召し上げた戦果物によりドイツ国民はより豊な生活を愉しみナチスドイツへの支持を強める。このことをもって「ドイツ国民は共犯者となった」と表現している。

なかなか強烈な表現だ。

そう思うのも、わが国で語られる国民または市民の戦争体験は、その多くが被害者としてのそれであるからだろう。

もちろん、軍事施設に限らない、非戦闘民を含む無差別攻撃で、今となっては国際法違反としか言いようのない大空襲を始め塗炭の苦しみを味わわされたことは間違いない。

しかし、太平洋戦争はもちろん日中戦争を含めて、少なくともその初期においては軍部だけでなく、国民も含めて戦争とその拡大を支持していたのも事実。

各々の局面の政治判断を通じて戦争が長期化(被害も甚大化)していった」

「共犯者」という強い言葉の使用の是非はともかく、兎にも角にも立憲主義国家としての体をとっていたにも関わらず、戦争への道をつき進んでいったのは何故か?

ということで、夏休みの課題図書は、現代史の研究者であり東京大学文学部教授でもある加藤陽子氏の著書を手に取る。

1は、栄光学園の中高生に対する問答を含む授業という形式で進んで行く。

日本が経験した近現代の戦争(日清・日露・第一次大戦・満州事変・日中戦争・太平洋戦争)を検討対象として、英米仏独露といった欧米列強の思惑が渦巻く中で、その時々の指導者たちがどのような判断に基づき、戦争への道を歩んでいったか。

主に高校生向けに噛み砕いた内容で、ポップなイラストや地図をは編み込んでいるので、大変わかりやすい。

2は、2015年の安保法制変更に伴い、この国の形が変わってしまったという時期に、リットン調査団への対応・三国同盟の締結・太平洋戦争直前の日米交渉の3点に絞って、より詳しく考察を深めたもの。

やはり中高生に対する授業形式で、イラスト・レイアウトも同じ方が担当しているようで、大変、読みやすい。

3は、2022年のロシアによるウクライナ侵略(今も続いている)により国際情勢が新たな局面に入ったことを踏まえて、長谷部恭男(憲法学)・杉田敦(政治学)・加藤陽子(歴史学)各の立場から、日本の来し方行末について論じたもの。

第3章「戦争と侵略を考える」と第4章「「国家の歴史観と憲法」では、加藤氏のコメントが光る。

特に「ウクライナがNATOに入るとロシアの安全が脅かされる」と言ってウクライナに侵攻したプーチンの主張に対する評価。

「他国の土地を取ることを安全確保の道とする国家には必ず滅びの道が始まる。それは2400年前のペロポネソス戦争から変わらない教訓」というところが印象的。

その脳裏には、プーチンの向こうに、氏が専門とする1930年代の風景ー満州に侵攻した日本(軍部ー特に石原莞爾を理論的支柱とする陸軍)の主張を見据えていたのだろう。





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