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願望の行方 6


「しゅう君。」
背後から声が掛かった。僕等は振り返る。
そこには、制服姿の彼女が居た。ブラウスの首元は赤いリボンがキュッと結ばれている。肩までの髪が、窓から入って来る風にサラサラと揺れていた。
「ん、何。」
しゅうは彼女に返答する。
「先生が、明日のホームルームで話してって。これノート。」
彼女は、一冊の灰色のノートを背表紙を左側にして差し出した。受け取ったしゅうは、パラパラとノートを捲り最後のページに目を通す。
「あ、分かった。ありがとう。」
と、ニッコリ笑ってお礼を言った。
「うん。じゃあ、後でね、しゅう君。そう君もね。」
彼女は胸の前で小さく手を振って去ろうとする。
「あ、これから名前、呼び捨てでいいよ。「しゅう」で。」
しゅうは彼女に微笑んだ。
「え。あ。うん。分かった。じゃ、私も「みお」って呼んでね。そう君もね。」
僕は慌てた。
「僕も、「そう」って呼んで・・・ください・・・。」
彼女は一瞬目を大きく見開いて驚き、そして
「うん。」
と、微笑った。
「じゃあね。」
彼女は軽やかに背を向け1組の教室へと戻って行った。



彼女はしゅうと同じクラスで、テニス部の女子部にいる。だから、僕も彼女の事は知っている。しゅうと彼女は同じクラス委員を務めているから、話す事も多いらしい。僕は彼女と初めて話らしい話をした。緊張でまだ胸がドキドキしている。
しゅうは、渡されたノートを鞄に入れて歩き出した。ハッとして僕もしゅうの後を急いで追った。



彼女の周りはパッと輝いて目に映る。透明感が有り、キラキラ光る硝子細工のようだ。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
祖父が教えてくれた古めかしい言葉が頭に浮かぶ。本来は漢方薬の用い方を表す言葉だが、美人を形容する時にも使われる。確かに彼女は綺麗に咲く花々だと思いながら、僕はテニスコートに向かって歩いて行った。





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