主人公の資質
私ははしゃぐことが苦手だ。
はしゃいでいる自分を想像してしまい、どうも照れが出てしまう。特に学生の頃はそうだった。「自分を俯瞰する癖が無ければ、もっと楽しめただろうな」と思い返すことが今でもよくある。
大人になってからは、敢えてはしゃぐこともできるようになった。仕事なら割り切れるし、友人付き合いでも、おっさんになって照れている自分を想像し幻滅してしまう。だから、はしゃげる。
この癖はいつから始まったのか。はっきり覚えている最も古い記憶は保育園の発表会での出来事だ。
通っていた保育園の発表会は、各学年による劇だった。私は学年で最も誕生日が早かったこともあり、それなりにしっかりしていた方だった。その甲斐あって、年中クラスまでは劇の主人公を務めてきた。桃太郎も演じたことがある。
そして迎えた、最終学年の発表会。演目はピーターパンに決まった。ひと通りの役が黒板に書き出され、いざ立候補制による役決めが始まった。
まず、主役のピーターパン。
みんなの視線が私に向けられた気がした。たぶん、先生の視線もだ。私は手を挙げなかった。主人公を演じる自分を想像し、何故か急に恥ずかしくなってしまったのだ。結局、1番運動神経の良い男の子に決まった。
私はといえば、海賊Bである。ひと言だけのセリフを今でも覚えている。
「船長、それはいい案ですね」
フックの太鼓持ちだ。
それ以来、主人公に戻ることはできなかった。
息子たちにもいずれそんな時期が来るのかもしれないが、できることなら堂々と正面から色んなイベントを楽しんでもらいたい。特に長男は私がはしゃげなくなった年齢に差し掛かっている。
そんな長男だが、妻が幼稚園のお迎えに行った際、周りの友だちにこう言ったそうだ。
「今なら僕にバイバイのタッチできるよ〜。」
主人公感がすごい。誰も来てくれないことなど、微塵も考えていない。そうだ、その調子で行けるところまで行ってくれ。
なお、大親友だけが気を遣ってタッチしに来てくれたそうである。
