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kanatacoomi
幻想小説|尊き君へ─第9話:現世と君と─
君は、一度僕の名を呼ぶと──
静かに、考え込んでいる様子だった。
それから──
そうしている時間が、
しばらく続いた後のことだった。
……この世界が、揺らいでいる。
……僕が、気づいてしまったせいだろうか。
「
……ねぇ、ロイくん。
こうして、2人で──
ずっとここにいるのは、だめかな。
……ねぇ、だって。
あなたが消えてしまう心配が、
──どこにも、ありはしないの。
」
……君の手が、震えている。
今にも泣き出しそうな、
そんな表情(かお)をして。
「
……ごめんね。
僕のせいで、不安にさせてしまったね。
僕は、いつだって──
君の考えを尊重したいと思っているよ。
だけどね、君には食事が必要なんだ。
このままだと、君が消えてしまう……。
そんなことになってしまったら、僕は─
」
──揺れていたのは、僕の“心”だった。
……いや、違う。
最初から──揺れていたのかもしれない。
そんな“僕”が、君に伝わったのか。
繋いだ手の上に──
君が“右手”を優しく重ねて、包み込んでいた。
これまで、僕の意志は、
鋼のようなものだと思っていた。
だけど、それは──
ただの思い込みに過ぎなかったみたいだ。
「
世界は、どうして──
こんなにも意地悪なのかしら。
でもね、あなたに出会えたことは、
私の人生において、最高の瞬間なのよ。
最愛のあなたのことを──
悲しませるわけにはいかないわね。
……だから。
」
そう言って、君は──
何かを決意したように見えた。
