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【書籍紹介】サイエンスコミュニケーション講座から学ぶ 科学が伝わる技法

サイエンスコミュニケーションに関する書籍が、北海道大学科学技術コミュニケーションユニット(CoSTEP)から出ていた。

私自身、国立科学博物館(科博)のサイエンスコミュニケータ養成実践講座を学生時代に受講し、座学と実践に取り組んだ経験があったので、知識の更新を目的に手に取ってみた。余談だが、科博のサイエンスコミュニケーション講座は毎年開講されている。

本書はCoSTEPのサイエンスコミュニケーター教育の基礎となる部分を抽出してまとめた、サイエンスコミュニケーションをはじめるために必要な背景と理論が紹介されている入門的な書籍である(P12-13を参考に記載)。

本書ではサイエンスコミュニケーションの全体像を俯瞰した後、サイエンスコミュニケーションを「伝える」・「育む」・「省みる」・「つなぐ」の4つに分類し、それぞれ解説している。各章でサイエンスコミュニケーションの具体的な実践例も多く取り上げられているが、それ以上にサイエンスコミュニケーションの知識を体系的にまとめようと試みている印象を受けた。

特に「省みる」サイエンスコミュニケーションの章に多くの紙面が割かれており、ポスト・ノーマルのサイエンス、リスクコミュニケーション、科学技術のデュアルユースについて詳説されている。戦争と科学技術については直近注目されているが、その歴史もまとめられている。リスクコミュニケーションの点では、原発事故発生時や感染症蔓延時において情報がどのように拡散・受容されるか分析されている。そもそも科学・技術とはどのようなものかという点についても、科学哲学(P35-46)や技術哲学(P268-295)まで視野を広げ、解説されている。

この本のタイトルに「科学が伝わる技法」とあるが、本書をサイエンスコミュニケーションの実用書として手に取ると少しばかり期待外れとなる。現場でしばしば実施されるプレゼンテーションやファシリテーション、ワークショップ運営、ライティングなどの具体的なノウハウは書かれていないからだ。

サイエンスコミュニケーション関連の書籍の中で本書がユニークなのは、伝え方のマニュアルではなく、科学・技術に関する情報はどのような文脈で、誰から誰に、どのように伝わり得るのかを、様々な事例研究から考察している点である。本書の表紙には「共感を生む双方向の対話、情報発信、アウトリーチ、研究資金獲得に活きるヒント」とあるが、あくまで「ヒント」であり、明日から使えるテクニックは載っていない。この本を通してCoSTEPが読者に期待するのは、本書、すなわち座学を通じてサイエンスコミュニケーションの言語的な知識を身に着けるとともに、現場での経験を積み身体的な知識を得ることである。ちなみにCoSTEPからは後者に相当する書籍「サイエンスコミュニケーションの道具箱」が出版されている。

サイエンスコミュニケーションとは何かを単純明快に回答することはこの領域の研究者、実務者でも難しい。本書でも取り上げられているトマス・クーンの「科学革命の構造」を補助線とし、「その時点での通常科学を源流とする物語(ナラティブ)と文脈(コンテキスト)を分析・設計・運用・評価する事業」と解釈するのが現時点で個人的にしっくりきている。本書は「分析」と「評価」に重きが置かれており、これらを通じで得た学びを、現場でのサイエンスコミュニケーションの設計・運用に活かすことができればと思う。

「科学革命の構造」については別途書籍紹介を載せているので、こちらも参照していただければありがたい。


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