はじめましての物語【創作】
ー 春は苦手だ。たくさんのことが、目まぐるしく変わるから。
3月生まれのわたしは、同じ学年の子についていけないのが、いつものことだった。
同じ団地に住んでいた子たちは、みんな一緒の幼稚園に通っていたみたいだけど、お母さんは、わたしのことを心配して、わざわざ少し遠い幼稚園に通わせてくれていた。
傷つかないように…心が折れないように…と。
彩安幼稚園では、そんなわたしの個性に合わせて対応してくれていた。言葉で伝えることができなかったわたしは、大好きな先生とお手紙交換をして、関係が作れていた。
そんなわたしも幼稚園を卒園して、小学校に入学した。近くに住んでいる子たちと、同じ小学校に行った。
1年生から厳しい先生が担任で、毎週月曜日には、必ず頭痛が起こった。
何もかも上手くいかなかった。
でも、学校に行かないという選択肢はなかった。そのようなモデルは近くにおらず、休みながらも、行っていた。
2年生に上がった時のクラス替えで、担任も変わった。仲の良い子や一番家が近い幼なじみは、同じクラスのままだった。
今思うと、配慮してもらった上でのクラス替えだったけれど、そんなことは全く知らないわたしは、相変わらず、頭痛に悩まされていた。
運動音痴なわたしは、体育の授業が嫌いで、次第に学校を休む日が増えていった。休んだ日は、悪いことをしている気分だったけれど、ぬり絵をしたり、絵本を読んだりして過ごしていた。
ある日、お母さんから神妙な表情で名前を呼ばれた。
そこで紹介されたのが、乃音小学校 飛映分校だった。
別にいじめられたわけではないし、学校に行かないのも、仮病とは言わないけれど、実際に体調は良くなかった。
感情を表に出していいかもわからなくて、友だちと一緒に遊んでいても、うまく笑えていたかどうかは自信がない。
そんな我が子の様子を見ていたお母さんは、人知れずいろいろと調べてくれていたようだった。
別の分校もあるみたいだったけど、そこはすでに、いっぱいになっているということを聞いた。
家からはちょっと遠いけれど、通えない距離ではない。見学しに行って、優しそうな子や先生がいることを知り、ここなら通えるかも?と思った。
そこからトントンと話が進んでいき、3年生の春くらいから転校することになった。
転校の手続きのために、春休み中の誰もいない学校に一度だけ行った。
お母さんと一緒に行っていて、目の前には先生しかいないのに、緊張で、何も発言できなかった。
俯いていると、1枚の紙を渡された。
「これ、らむちゃんに、渡しておくね。みんながプロフィール帳を書いているから、先に準備しておくと、お話しやすいと思います。でも、無理しなくても大丈夫だよ。」と言われた。
楽しそう…。こういうのを書いて集めるのとかは、好きだった。何も言葉を発さずにただ聞いていたが、質問したいことが出てきた。
拳に力を込めて、話した。
「あ、あの。これに、シール貼ってもいいですか??」
突然話し出すものだから、先生はびっくりした顔をしたけれど、すぐ笑顔になって、このように返してくれた。
「もちろん。らむちゃんの好きなように、かわいくしてきていいんだよ。シール好きなのかな?」
わたしは、首を大きく上下に振り、うなずいた。
かわいいものは大好き。でも、好きなことや感情を表に出してこなかったから、そこでは言葉として出せなかった。
なんだか、初めて認めてもらえた気がして、とってもうれしかった。
あとは、最初の登校日までに、顔写真を撮ってくることをお願いされた。
転校するためには、引っ越しをするというのが、自然な流れだった。
新しく学ぶためには、環境を変えるのもいいのではないかとお父さんも言ってくれて、学校の近くに、引っ越すことになった。
3月は、引っ越し業者さんが混んでいるらしく、4月に入ってから引っ越しになってしまった。
「登校は、落ち着いてからでもいいですよ」と先生にも言ってもらえて、4月末の連休前に登校することに決めた。
ドキドキの登校日。
前回は、誰もいない校舎に入ったけれど、今日は、みんなが学校に来ているんだ…。
頭痛が起こらないといいな…と思いながら、お母さんと一緒に向かう。
校長室で、一通り説明を受けて、ついに教室に入る時がきた。
お母さんと別れて、先生と教室に向かった。
『はじめまして。乃音小学校 飛映分校に転校してきたRaMです。よろしくお願いします。』
家で、なんとか練習してきたあいさつを言い終え、少しだけホッとした。
先生から指定された席に静かに着席した。
みんなの顔はまだ見れなかったけれど、冷たくないような、あたたかい温度は感じた。
笑顔がうまく作れているか分からないし、友だちができるか心配だけど。
きっと大丈夫だよね。
突然誰かに話しかけられてもいいように、一生懸命書いてきたプロフィール帳を、そっと近くに置いておく。
みんなと仲良くなれたらいいな。
はじめましての物語
《了》

ツインテールかなと思って。
うまく笑顔が作れないなりの笑顔です。
決して、機嫌が悪いわけではありません。
お守り代わりのプロフィール帳はこちら。
小学生の頃ってこんな感じだったかな?と思いながら書きました。


少し前にできていたのですが、ちょっと仕事がバタバタしていて、公開が遅くなりました。
すでに他の方が投稿されている物語があって、そちらも拝見していたのですが、わたしの力量では内容を合わせるまでに至らず…。
公開することさえも迷いましたが、せっかく作っていたものなので、勇気を出して投稿してみます。
(※なぜ勇気が必要だったかと言うと、実話に近いエピソードだからです。)
年度末にかけて、ちょっと忙しくなるので、創作にあまり顔出せないかもしれません。
先に謝っておきます。
クラスメートのみなさん、すみません〜😭💦
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