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彼に繰り出す、次の手は。

2008年11月。
わがまま小娘な大学生だったわたしは、別の大学に通っていた彼に拾われた。


彼には、なぜだか自己中極まりないわがままを言え、そして、そのたいていのものが通った。

今となっては、自分のことを「いい加減にしなさいよ」と、頭をたたきたくなるくらいのことを、それはもうたくさんしでかしてきてた。それを受け入れてきた彼が、きっとどうかしていたのだと思う。





信頼されていなかったのか、あまりに自由に遊び歩いていたからか、はたまた彼の経済事情が富んでいたのか…(最後に関しては、きっと違うが)。

交際2ヶ月で、アクセサリー(おそろいの指輪)のプレゼント。交際6ヶ月で、彼との連絡を取る専用の携帯を持たされ、数年間ガラケー2個持ち生活に至っている。



友達と遊んでいる時に電話がかかってくると、出ない時もあったし、なんなら自宅のベッドの上で留守番をさせていた(充電し続けていた)日もある。


自分のことだけに精一杯で、好き勝手に歩んできた。

そんなに、ひどいことをしてきたというのに…。

変に押しが強い時もあったけれど、基本的には、わたしの思う通りに動いてくれた。

彼からしたら、「なんだコイツ」ってなっていた日もあっただろうし、繊細な心を持つ彼が泣いた日もあったのだろうと思う。


なのに、尽くされてきたのは、なぜなの?


とりあえず、感謝しとくか。


わたしからべったりすることはなかった。
基本ドライで、でも嫌われるのを恐れて、相手に合わせるから、思わせぶりな(タチの悪い)性格だったのかもしれない…。


基本相手に合わせるスタイルのわたしが、唯一合わせられないものがあった。


視線。

少し視線をずらす癖が、今も抜けないくらい、人と目を合わせるのが少々苦手だった。

だから、彼と会う時に、車で来てくれることが、わたしにとって好都合だった。

緊張が伝わらないように、あくまでも自然な流れを装い、助手席に座る。

運転席の彼は、運転している時間、こちらを長く見つめてくることはない。

適度に保たれる個々人の距離感と、視界の空間が、わたしに無理をさせなかった。


でも…。

きっと彼は、追い続けていたのだろう。

わたしの視線の先にあるものを。
そこに込められている感情を。

視線をつかむために、努力もしてきたであろうし、わたしに求めることを諦めたものもあったのかもしれない。


時間をかけて得たものを、彼は、離さずにいた。




あれから、17年の月日が経った。


いろんな間合いの時間が、あった。

お互いの住む場所が変わり、徐々に近づいていった。

関係性を表す固有名詞が変わり、赤の他人ではなくなんだか特別な関係になったという感覚もある。

振り返れば、かなり長い時間で、いろいろなものをくれた。



生涯を共にする。
対外的には、そんなパートナーとなってからの記念日に、彼は花束とケーキを買ってくれるようになった。


仕事中に、こっそり買いに行き、わたしに見つからないであろう車やお部屋の隅に隠していた。

彼が何かを隠している時は、わかりやすくソワソワしている。

そんな普段とは違う様子も見ることができる、年1回の特別な日。

その特別な日も、少しずつ形を変えてきた。


わたしは、仕事をセーブして、家庭のことも顧みるようになっている。

仕事からの帰宅時間は逆転し、彼は、サプライズができなくなった。 

いつしか、彼から花束やケーキを買ってくる役割を頼まれるようになり、なんだかよくわからないお祝いのスタイルとなった。


今年の記念日は、平日で、わたしも彼も仕事だった。

その代わりに、週末の過ごし方を変えた。

いつもは買わないお酒(小さめな瓶のベリーニ)を1本買い、スタバでケーキ1つとスコーン1つを買い、パン屋さんで、惣菜パンとスイーツパンを複数買って、ある意味パーティーな1日を過ごした。


お祝いのケーキとして
選ばれたのは
スターバックスのホワイトモカケーキ。
あたたかい紅茶とともに。
この上のコーヒークリームが
めっちゃ好みだった。
ふわふわのクリームに
フカフカのスポンジケーキ。
ミルキーなクリームが挟まって、
全部の層が一体となって完成する、
ホワイトモカケーキ。


これはこれで良かったけれど、1つだけ欠けていたものがあることに、1日経ってから気づいた。


交わしている視線の間に、花束がなかった。


例年「花束を買ってあげたい」と、強く願ってくれた夫は、旅に出てしまったようだ。

悲しいような、ほっとひと安心したような…。

視線の重なる日が増えてきたら、もう花は要らんか、ってなったのか。


いや、知らんけど。


花がない記念日を過ごしてみたら、物足りなさを感じた。

彼から、「小さい花、買ってきて」と言われなくなったことも、ちょっとだけ寂しかった。


この寂しさを、どのように伝えようか。

視線を外してその先を追ってもらうという手法は、もう通用しないのだ。
次の手を考えなくてはならない時が来た。

これから、1年間の極秘ミッションだ。

3.7さんが作った切手を貼って、
自分の未来に送ろう。
消印をつけておけば、きっと忘れないでしょ。
秘儀な四十八手目。つまり、アナタの奥の手
を募集すると言われて、書き始めてみたら
こんなものが出来上がったんです。
そもそも、これ、合ってます?
それにしても…アナタの奥の手って、
ほんと なんのはなしですか。



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