なぜ売れるサークルは「試遊なし」なのか

どうも、トリガーゲームズ、斉藤らっこです。
2025年5月17日(土)、18日(日)にゲームマーケット2025春が開催されました。
トリガーゲームズとしては「日曜日、試遊あり」で出展し、「えっ!?顧客満足度96%であの福山○治が愛用している家が今なら100円なんですか!?」(略して「家100」)という大喜利ゲームを販売しました。

箱のイラストはこんな感じ。カードが100枚入っています。3-5人用、ゲムマ価格2500円。

 このゲームは前回のゲームマーケット2024年秋に発売し、旧作の再販という立ち位置で、「大喜利が苦手な人でもワイワイ楽しめる大喜利ゲーム」をコンセプトとして、販売しました。
 今回はこのゲームマーケット2025春の感想をつらつらと書いていきたいなと思います。


ゲムマ前~ゲムマ当日の様子

予約がですね、予約数が、ですね

 本当はゲムマに向けて1か月以上前から準備をしたかった所なのですが、4月20日に資格の試験があり、その勉強に打ち込んでいたため、そこまではほとんど何もできない状態でした。
 さらに言えば、資格試験が終わった後の解放感からしばらくボーっと無気力な状態を過ごし、GWで名古屋に行って友達とワイワイ過ごし、気がつけば5月7日。
 もっと言えば旧作ということもあり、新作が届いたときの感動とか、そういうのも無かったわけです。
 しかし、今回のゲームは7作目。ちゃんと中堅サークルなので、毎回宣伝配信をしてくださっている「きたこしちゃんねる」様に自分のゲームの宣伝の依頼を出したり、「自薦・他薦のオススメありますか!」のようなツイートには反応してゲーム情報を送ったりなど、最低限の宣伝活動はしていました。
 予約フォームは4月30日ごろに開設して、とりあえず1ヶ月弱は予約できるように時間を確保。
 ゲームマーケットのブログの記事もいくつか更新し、公式の場でも最低限目を触れるようにしました。
 さて、そんなこんなでゲームマーケット1週間前。
 宣伝の効果はほとんど発揮することなく、予約数は1でした。
 何が中堅サークルの最低限の宣伝だ。何も出来てねぇじゃねぇか。
 
こういう時は焦っても無駄だと分かりつつ、半ばヤケクソで色々言いまくりましたが最終的に予約数は2
「予約数の3倍売れる」とゲームマーケットでは言われます。
 最近では「予約数の2倍売れる」に落ちた話も聞いていますが、「とりあえず、販売数6目指して頑張ろう」と目標を決めて、当日に臨みました。中堅なのでこれくらいで心が折れるほどヤワじゃないです。

試遊ありは売れないと聞いていた

 今回は、自分のゲームの力を信じて試遊ありで臨みました。
 1分ぐらいで説明できるルール、大喜利ゲームの爆発力と、手札でワードのキモは決められているので、大喜利が苦手な人も遊べるという利点。
 前回ゲームマーケット2024秋で販売した時、隣のブースの方から「これこそ試遊にしたら?」とアドバイスをいただき、試遊卓を設けて挑みました。
 ただ、自分としては「試遊卓は売れない」と思っていました。
 大きな原因として「遊ぶ目的で来たお客さんが、試遊卓で遊ぶだけ遊んで帰ってしまうため、直接売り上げにはつながらない」ということです。
 そもそもゲームマーケットは「ゲームを買う」目的の人の方が多いですが、「入場料を払って色々なブースで色々なゲームを遊ぶ」目的の人も一定数います。
 その人たちにとってはゲームは買うためのものではなく、遊ぶためのもの。
 「試遊あり」のサークルはそういった方々のためにも労力を割く必要がある上に、購入につながらないためリターンが薄い。と思っていたのです。
 まぁでも、今回はそれで良いという思いがありました。
 試遊がどんな感じかも試してみたかった。私は色々な経験を楽しむタイプなので。

ゲムマ当日の様子

 ゲムマの会場に9時に到着。広い!
 いつも通り卓の後ろのポスター等はつけず、看板を机に設置するだけのお手軽設営。パパっと設営を済ませました。

お手軽設営。「デライトライトゲームズ」のきょろさんのGOTTUNも設置。

 今回はデライトライトゲームズのきょろさんが手伝いに来てくださり、メチャクチャ効率的に設営を手伝ってくれました。
 足りてないアイテムがポンポン出てくる。魔法か…?
 そして11時。ゲームマーケット開始。
 最初は予約にダッシュする人が多いので、試遊は行わないだろう。12時半ぐらいから勝負かな?と考えていました。
 隣のブースの「うちポケ屋」さんが開始直後に

「マッチョいかがですか!!!!!」

「お前もマッチョにならないか!!!!!!」

 と大声で奇声を上げ宣伝を始めて度肝を抜かれました。
 声だし苦手なのですが、隣のブースが元気すぎてこちらも自然と声が出るようになり、なんか、良かったです。
 それから開始20分後ぐらい、お客さんが来て、ポツンと1つ買ってくださりました。ヤケクソの宣伝の効果だったのか。嬉しかったです。
 それからもう10,20分して、予約の方が取りに来てくださいました。「前遊んでメチャクチャ面白かったから、もう、これは入手しないとと思って!」と言ってくださいました。家宝の言葉にします。
 それから少しして、興味を持ってくださった方が試遊してくださり、初めて試遊が動きました。
 そこからは12時半までは結構想定通り。ポツンポツンと試遊がまわり、12時半からは良い感じに試遊が回り始めました。
 想定と異なったのは、16時過ぎまでは結構試遊が回っていたことです。ありがたいことでした。
 試遊回数とか、そこから買った数とかを正確にメモしておらず、申し訳ないのですが、試遊でほぼ100%「面白かったです!」と言っていただけました。おべっかの方もいるでしょうがそれでも嬉しい。顧客満足度96%か?
 そしてもう一つ嬉しい誤算。そこから購入につながった率が、体感としては5割強~7割だったことです。
 これは嬉しかった。本当に満足して頂けて、こちらも嬉しかったです。
 結果としては、予約数の3倍を大きく超える数を販売することが出来ました。遊びに来てくださった皆様、購入してくださった皆様には感謝しかありません。ありがとうございました。
 実際の販売数を言うとなんというかアレなのでぼかしますが、10は大きく超えています。

試遊の利点

売り子が楽しい!

 今回、売り子をしてくれる人をメチャクチャ探した結果、「ボードゲームに興味のない会社の人を召喚する」という暴挙にでました。
 前回ボードゲーム楽市で同じゲームを売った時、売り子を頼んだ人はボドゲがある程度好きな人だったのですが、売れない時間がちょっと長くあり、その間は、ちょっと申し訳ない感じでした。自分が説明中は、もう一人が暇だったりしますしね。
 その点、このゲームは3人~用なので、試遊に来た人が1人の場合はスタッフ2名で対応します。なので、スタッフ2名で試遊対応し、もう1人が試遊を見て気になった人に説明するなど、比較的忙しい時間が続きました。試遊の時間も5分程度あるので、その時間も取られます。
 今回は、売り子をしてくれた方がずっとゲームで遊んでいる状態なので、飽きなかった。また、途中から自分がゲームしたいがために試遊呼び込んでるんじゃないかと思うぐらい、楽しそうに勧誘していました。すごい良かったです。

熱が入る

 何回も遊んでいると、ゲームの面白さが分かってくるために、売り方も熱が入ります。
 また、何回も遊んでゲームの面白さや利点がハッキリと分かっているので、どの売り子がゲームのルールを説明しても要点を抑えた説明が出来るのも大きかったです。
 売り子側に熱がうつってやる気が出たのは、試遊の利点だと思います。
 僕自身も、試遊したお客さんから「面白かったです!」と言われるたびに「よっしゃー!売るぞー!」という気持ちになるので、僕自身にも熱が入ります。
 やっぱり遊んでもらって反応を貰えるのが一番ですね。

なぜ売れるサークルは「試遊なし」なのか

「遊んで帰る人」は過去のゲムマの話

「試遊卓は売れない。なぜならゲムマで試遊だけして帰る人が一定数いるから」は、過去のゲムマの話のように感じました。
 大体の人が「試遊しませんか?」の呼びかけに否定的だったのと、試遊目的でゲムマに来たと分かる人がほとんどない印象。さらに、試遊から購入につながった率がはっきり高かったため、上記の仮定は一昔前のゲムマの話だなという結論になりました。僕は。
 フォアシュピ等、試遊目的のみのイベントが事前に開催されたのもでかいと思います。「ゲムマの試遊は買えオーラが強いからあまりやりたくない」というXの投稿をどこかで見かけましたが、おそらくそういう意味もあり、試遊だけして帰る人は減ってきたのかなとも思います。

今回はコミケよりの売り方をした

ゲームマーケットが始まる前に、ひよぺん幼稚園さんの、以下の記事が話題に上がりました。

 ゲムマ前に、出展者側として気づいたことについて色々と書かれていますが、話題に上がったことの一つとして、「ゲムマは当日だけではない」の部分。

おそらく「ゲムマは新たなゲームを発掘する場」ではなく、「事前に注目していた作品を購入する場」として機能している部分があるのだと思います。

全体的に、思っていたよりも商業的な側面が強く、「一期一会」の楽しさを大切にしていた私たちとは、少しギャップを感じました。

ひよぺん幼稚園
26.[ゲームマーケット2025春]ゲムマと私たちのすれ違いより

「大体の人が、事前情報を見て大体の買うものを決めている」というのは、ある程度真実だと思います。僕も買う側だとそうだし。
 一意見ですが、コミケに関しては「〇〇と××のカップリング見たくないか!」とか、「〇〇の主人公がもし、××したら!」とか、自分の好きをその場でぶつけ合い、それを見て惹かれるものがあれば…みたいな感じだと思います。また、同人誌は漫画・イラスト主体なので、1枚絵でやりたいことが伝わりやすい。
 一方ゲムマにおいては「トリテ考えた!」「RPGルール!」「俺の考えた中量級ボドゲ!!!」など、同じノリで行くとどう考えても引きが弱い。
 
さらに、ボードゲームは「アートワーク3:ゲームシステム7」ぐらいで、システムが重視される印象です。そのため、興味を持ったゲームについて聞くとその説明に5分ぐらいかかるものも多く、時間がとられます。
 そのため、事前情報である程度面白そうなシステムを絞り込み、それを購入する人の方が多いんだと思います。
 そういった意味で言えば、「試遊あり」で、「予約数ほぼなし=注目度低」からある程度頒布できたことは、かなりコミケよりの、アナログ的な売り方をしたのだなと思います。

ゲムマは前評判が8割

 ここで問題になるのが、今回、「10を大きく超えた数」だったということです。
 他のブースでは開始1,2時間で完売になったところや、3桁の売り上げ数が出たサークルもざらにありますが、そこに比べると販売数で言えばどう考えてもそこには届かない。
 恐らく今回の売り方でもっと効率的で良い動きをしたとしても、販売数は30が限界だと思います。
 今回大評判だったHEY!の「マッチ売りの大富豪」は、「ルールはトランプの大富豪だけど、7セグの数字が書いてあり、マッチで7セグの穴を埋めることで、数字を変えることが出来る」というシステムが革新的でした。
 この上の68文字のシステムの説明さえ、通りすがりの3秒で理解させるには無理
 やはり事前に丁寧に色々なところで広報活動を行い、色々な事前イベントで宣伝することが、売上数を3桁に伸ばすのには必須だと思う訳です。
 ゲムマ当日の試遊で得られる売り上げ数の伸びは、事前宣伝の効果に比べれば、伸びる幅が違います。
 ゆえに、売れるサークルは試遊では無く、事前の広報活動を丁寧にやることで、事前に売り上げ数を伸ばすんだと思います。3桁売れたことないからしらねーけど。

旧作は果たして売れないのか

「もう持ってる」は甘え

 旧作の売上についても少しふれておきましょう。
 今回、「えっ!?顧客満足度96%であの福山○治が愛用している家が今なら100円なんですか!?」は2024秋の再販であり、「旧作」の扱いになります。
 旧作は売れないと言われており、その原因として考えられることとして、「前回でもう買っちゃって、持ってる人が多いから」というものがありますが、僕自身はこれは疑問に感じています。
 その理由としては、ゲムマに新規で来る人が多いこと。
 前回から来場者数がかなり増え、今回も最高の来場者数を更新。のべ27000人が来たとのことです。
 1000部2000部売れたならまだしも、販売数が数十個そこらの作品で、買いたい人全員に届いたかと考えると、私は疑問です。来場者万だぞ、万。

熱が無い。これに尽きる

 じゃあなんで旧作が売れないのかと言えば、売れない原因は販売側にあると思います。
 なんだかんだ言って、自分の想像していたボードゲームがちゃんと箱になり、ちゃんとカードになり、ちゃんと製品になった瞬間の感動とテンションの上がり具合は、もう、もう、もう!!なんですよ。これだからボドゲ作りはやめられねぇ!!!
 それに比べ、自分の家で半年間一緒に過ごしたボードゲームの在庫に関しては、はけさせるための熱が桁違いに低い。
 この熱の低さ、売るためのモチベーションは、特に個人でやっているサークルでは顕著に売り上げに響きます。
 家に来たばかりの製品を世に出し、在庫を極力少なくしようと思うモチベと、半年間家にあった在庫を、1年間の在庫に変化させないために売ろうと思うモチベは段違いなんです。本当に。
 この熱の違いが、旧作が売れない理由の全てなんじゃないかと、僕は思う訳です。
 それで言えば、今回、旧作にしては結構頑張った方なんじゃないかな…。

これからやりたいこと

ゲムマ等のイベント以外に力を

 今後のやりたいこととして、新しいボードゲームも作っていきたい気持ちはあるのですが、今は「家100」を通販でどこまで伸ばせるのかを考えています。
 元々ぼんやり思っていたのですが、ボードゲームの世界は薄利多売が基本です。例えば2000円のボードゲームを200個作って売ったら40万円。そのうちカードと箱の印刷費が大体25万円だとして、デザイナーにイラストを頼んで、さらに10万円かかったとします。ゲームマーケットに1卓両日で出展したら4万円、さらに例えば名古屋に住んでいる人とかになれば、東京に売りに行くとなると、交通費が3万円強。あら、利益って何…?
 
しかも40万円という売上は200個全部売れたらの計算です。10部で終わるサークルも多い。取らぬ狸すぎる。
 と、言う訳で、ゲームマーケットでメチャクチャ売って、利益がガッポガッポなんてのは夢のまた夢な訳です。
 本当にボードゲームで利益を出そうと思うなら、おそらく販売数は最低でも500個以上。食っていくなら5000個以上。そうなってくると、どんなサークルでも2日で売るには無理。
 そこで販売数を増やすのに考えられるのは、その後のネット販売や、小売店での販売です。
 なので今回はこういったものに注力して、少しずつ販売数を増やす。そして、ゲムマの販売数よりも多くの幅を利かせることが出来ればなと考えています。
 そのためには継続した宣伝、つまり広告戦略も重要です。これからも色々やっていけたらなと思います。
 そういう意味で、ゲムマ「試遊あり」は宣伝目的も兼ねていたのですが、その場で買ってくださる方が多く、嬉しい誤算でしたね。

ボードゲーム屋さん「ごっこ」

 当然ですが、個人で5000個作るのは無理があります。
 原資がエグい(1個の原価1000円でも500万円だよ)上にリスクなのと、5000個ボドゲを置くスペースの確保も大変。5000個て。どこに置くんだよ。
 なので、通販に注力を入れると言っても、おそらく利益が出るほどの数は作らないと思います。もともと200しか作ってないし、もう100個ぐらい増産出来たら最高かな。300、良い数です。

 元々自分はシステムエンジニアなので、本職はプログラムを作って生活しています。
 そんな中でボドゲ製作の魅力として常々思っているのは、「企画」「製作」「広報」「営業」を全て自分で出来る点。全部自分の責任で、全部自分の仕事。それぞれの仕事の面白さや大変さが、いっぺんに味わえる。
 ボドゲの製作を始めた時は広報・営業はレベルゼロ。ゲムマの売り上げ個数は10がザラで、2個しか売れない回もありました。
 それが、回を重ねるたびに少しずつ成長していき、少しずつ売れるようになってきて、色んなものの面白さが分かってきた。
 「ワクワクのトリガーを引く」トリガーゲームズですが、何よりもボードゲーム製作を通じて、自分自身のワクワクのトリガーを引きまくっているサークルです。
 利益なんて出たことない。大変なことばっかりだけど、自分のゲームを気に入ってくださる方がいて、面白い!と言ってくれる人がいて、ゲーム製作、本当に楽しいんです。
 大人になってお金をかけて出来る、この「ボードゲーム屋さんごっこ」を、これからも趣味として楽しんでいきます。好きなことばかりやっていきますが、「変なことやってるなぁ」と見守っていただければ幸いです。

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