🧸育児エッセイ|無印で蒸篭を買った日
キッチンに立ち、買ってきたばかりの蒸篭を眺める。
無意識に口元が緩み、まるで我が子を見るような眼差しで蒸篭を触ってしまう。
無理もない。仕事を辞めてから自分の買い物には少しシビアな目で見るようになったわたしが、思い切って「自分が欲しいもの」を購入したのだから。
欲しい!と思ったものを、我慢せずに買ったのはいつぶりだろう。
昨年の秋に無印良品で発売されてずっと気になっていた蒸篭。「これなら息子も野菜を食べてくれるかも」という希望の光だった。そして何より自分が蒸篭料理に興味があった。
夫との会話で何度も何度も話題に出し、その度に夫は、「気にせずに夫名義のクレカで買えばいいのに」と言ってくれていた。
仕事を辞めてすぐ渡されたクレカ。家のものはこれで買っていいよということらしい。
でもわたしは1度も使っていなかった。貯金があったし失業保険ももらっていて、当面お金に困ることはないだろうと思っていたから。
それなのに無印のレジでお会計をするときに…少し躊躇いながらそっと財布から引き出したのは、夫のクレカだった。一体どうしてなのだろう。
はっきりとはわからない。
誓いたかったのかもしれない。「この買い物は決して無駄にしません」と。夫と、なにより自分に。
だからこそ帰宅してキッチンに出した時、まるでサプライズでプレゼントをもらったかのような高揚感に包まれた。
丁寧に丁寧に洗って、キッチンの隅に吊るした。

あの日から半年以上が経つ。
一体何回使ったことだろう。初めて吊るしたキッチンの隅が定位置となった救世主は、今や我がキッチンではいちばんの働き者と言っても過言ではない。
あの時の誓いは今のところ守られている。
「今日はかぼちゃをお肉で巻いたやつがいいな」
2週間にも及ぶ体調不良からやっと復活した息子が、本当に久しぶりにご飯のリクエストをしてくれた。
食欲がもどってくれたこと、そして蒸篭料理を選んでくれたことが嬉しい。
かぼちゃに黙々と肉を巻いていく。
そのほかの野菜を切る。
今日は少し丁寧に、美味しい自家製タレを作ろう。
「あぁ、久しぶりに母親をしているな。」
映える並べ方なんて出来ないくせに、あれこれ試行錯誤しながらふと思う。
この2週間、しんどそうな息子の背中をさすることしかできなかった。
長かったトンネルからやっと抜け出せた気分だ。
蒸篭の蓋を開けるたび、息子は「わぁー!」と必ず歓声をあげる。蒸篭を買ったあの日からずっとだ。
その度に心から思うのだ。あの時、買ってよかったと。
ふわっと蒸篭の湯気がたちのぼる。
今日はたくさん召し上がれ。
ꕤご報告とお礼ꕤ
先日、『🏡ゆる丁寧に暮らす|無印良品週間で整える。ズボラ主婦の推しアイテム3選』が
note公式の「今日の注目記事」に選ばれました。
これもひとえに、日々読んでくださる皆さまのおかげです。いつも本当にありがとうございます🙏


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