【Raika & Rei 短編 #015】👽️100人、歯ごたえランキング
今日は企画に参加しようと思います。
Raika & Rei - Strange Music Clubのテイストで🐱
👽️100人、歯ごたえランキング
その日のお弁当は、少しだけ宇宙だった。
透明なフタの上に巻かれた帯。
少しだけポップで、やけに楽しそうな文字。
「👽️歯ごたえ100人ランキング」
コンビニで見かけたら、たぶん迷わず手に取る。
そんな軽さで、そんなノリで、買ってしまっただけだった。
銀河の塩、数量限定、謎の監修マーク。
全部がちょっとだけふざけていて、
でもどこか本気みたいに見えた。
カチッと留め具を外すと、空気がふわりと軽くなる。
中に入っていたのは、からあげでも、たまごやきでもない。
見たことのない色、聞いたことのない気配、
触れると少しだけ逃げる「何か」。
——まあ、食べてみればわかるか。
そう思った時点で、もう少し遅かったのかもしれない。
一口目の前に、すでにこのお弁当は、
ただの食事じゃなくなっていた。
最初は、ゼリー状の火星人。
赤くて、やわらかくて、
「これは簡単そう」と思った瞬間、ぷるんと逃げた。
ラップの海をすべるみたいに回転して、
またこちらを見ている。
なんとか口に入れると、
舌の上で軌道がひとつ増えた気がした。
噛んだはずなのに、
逆にこちらが噛まれたような感覚だけが残る。
次は、土星リング。
見た目どおり、サクサク。
音も軽くて、期待どおり。
でも、不思議だった。
中身がない。
きれいに、気持ちいいくらいに、空っぽで、
その空白がなぜか「昨日」に似ていた。
ふたを大きく開けると、星屑が舞う。
おかずたちは空中で整列する。
ミニトマトみたいな彗星。
光を巻くたまごやき。
ラムネ味の青い血。
泡になって浮かぶ飲みもの。
どれもお弁当みたいで、
どれも地球じゃない。
「おかわりは?」
ブラックホールが、笑った。
全部を吸い込んで、
それでもまだ足りない顔をしている。
青い血のやつを噛んだ瞬間、
ラムネみたいに弾けたのは、味だけじゃなかった。
知らない夏。
知らない空。
知らない記憶。
しゅわっと流れ込んできて、すぐ消える。
甘いのに、少しだけ怖い。
それでも、手は止まらない。
ふわふわのおかず。
くるくる回るスプーン。
無重力のテンポで、口がひらく。
気づけば「食べる」というより、
漂ってきたものを迎え入れているだけだった。
百人目は、透明だった。
つかんだ感触も、噛んだ音もなく、
食べたかどうかすら曖昧なまま、
光だけが指のあいだからすり抜けていく。
そこにいたはずなのに、
最初から何もなかったみたいに消えた。
「地球はデザート?」
誰かが囁く。
冗談みたいで、
でも少しだけ本気に聞こえる。
もし最後に食べるのが地球なら、
この涙も、この青さも、
全部、甘いものとして溶けてしまうのだろうか。
ラムネの星を割ると、
しゅわっと音がして、笑い声だけが残った。
味は消える。
形も消える。
でも、楽しかった気配だけが、
真空の中をふわりと漂い続ける。
銀河の灰がまぶたに降るころには、
もう味覚はただの味覚じゃなかった。
噛むたびに閃光。
飲み込むたびに、言葉の泡が膨らんでいく。
お弁当の時間は、終わっているはずなのに、
誰もふたを閉めない。
満腹のふりをして、また火を起こす。
足りないわけじゃない。
ただ、終わらせたくないだけだ。
箸だけが、ふわりと踊っていた。
食べ終わったはずの宇宙に、
余韻だけを残して。
Reiのひとこと:
ランキングって、普通は「どれが一番か」を決めるものなのに
食べれば食べるほど、自分が混ざっていって、
最後には“評価する側”がいなくなる。
この断片は、
「Raika & Reiの断片」に集めています。
おまけ
そのうち短編にしようと思っている曲
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