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日本製鉄(5401)が上方修正で+4%。増益535億円の110%は製鉄セグメントだった|USスチール買収は「依存」ではなく利益源の移動

こんにちは、「ラジトレ🏥高配当×個別株×インデックス投資家」です。

8月4日の引け後、日本製鉄が2027年3月期の通期最終利益を2,200億円から2,900億円へ、31.8%の上方修正を出しました。翌8月5日の終値は672.0円、前日比+4.02%です。

報道の見出しは揃っていました。「USスチールが業績牽引」。そして同時に、こういう言い方も出てきます。「国内事業は減益で、買収した米国事業が穴埋めした」と。

わたしも最初、後者の読み方をしていました。国内が弱いのを買収益で隠している決算だと。

でも短信のP8にセグメント情報が載っています。事業利益の増減を事業ごとに全額分解できる表です。そこを開いたら、その読み方は雑だったなと思いました。

この記事では、増益535億円がどこから来たのかを、自分で検算できる形で並べます。数字はすべて決算短信(IFRS・連結)PDF全10ページから取ったものです。



まず決算の数字を押さえる

1Qの主要な数字を短信P1から。

日本製鉄(5401) 2027年3月期 1Q業績サマリー
日本製鉄(5401) 2027年3月期 1Q業績サマリー

前年同期が1,958億円の赤字だったので、黒字転換のインパクトは大きく見えます。ただ前期1Qは減損などで大きく沈んだ期なので、比較の起点が低い点は差し引いて読む必要があります。

通期予想の修正はこちら。

日本製鉄(5401) 2027年3月期 通期予想の修正
日本製鉄(5401) 2027年3月期 通期予想の修正

売上の修正は+1.8%しかないのに、利益は+18.9%・+31.8%。売上ではなく採算で稼ぐ形に変わったという修正です。今回の性格はここに出てると思ってます。

セグメント分解|増益535億円の内訳

短信P8のセグメント情報から、事業利益の増減を全額分解します。単位は百万円です。

日本製鉄(5401) 1Q セグメント別 事業利益の増減分解(単位: 百万円)
日本製鉄(5401) 1Q セグメント別 事業利益の増減分解(単位: 百万円)

検算しておきます。4セグメント合計は前1Q 102,624・今1Q 167,278で、そこに調整額を足すと92,023と145,511。短信P1の連結事業利益と一致します(1〜2百万円のズレは短信が百万円未満切捨てのため)。

増益は535億円。そのうち製鉄セグメントが590億円で、寄与率110.3%です。100%を超えているのは、調整額のマイナスが111億円拡大して足を引っ張っているからで、それを製鉄が押し戻した形になります。

つまり今回の増益は、ほぼ製鉄セグメント一本です。ケミカル&マテリアルが+60億円で地味に効いていますが、規模が違います。

「国内が減益」と「製鉄が増益」は矛盾しない

報道では「国内需要低迷と鋼材マージン悪化で実力ベース事業利益は前年同期比650億円減の1,084億円」という数字が出ています。一方で短信の製鉄セグメントは590億円の増益。逆方向に見えます。

矛盾ではありません。日本製鉄のセグメント区分は地域別ではなく事業別で、USスチールを含む海外製鉄事業も国内高炉も、まとめて「製鉄」に入ります。だから製鉄セグメントの中で、国内のマイナスと米国のプラスが相殺された結果が+590億円ということになります。

なお「実力ベース1,084億円・650億円減」は報道ベースの数字で、短信本体には出てきません(会社の補足説明資料の数値です)。わたしは他媒体で裏を取れなかったので、参考値として扱っています。

製鉄セグメントの売上と利益率を見ると、中身がもう少し見えます。

日本製鉄(5401) 製鉄セグメントの売上と利益率
日本製鉄(5401) 製鉄セグメントの売上と利益率

売上が+43.3%増えて、利益率も0.84pt改善しています。連結売上の増加8,124億円のうち、97.2%が製鉄セグメントの増収です。これは実質的にUSスチールの連結が乗った分と見ていいと思います。

そして増収分に対する限界利益率を計算すると7.5%。既存の製鉄事業の利益率(前1Qで4.68%)より高い。つまり乗ってきた事業のほうが、もともとの事業より採算が良かったということになります。

だから「依存」ではなく「移動」

ここまで数字を並べて、最初の読み方を修正しました。

「国内が弱いのを買収益で隠している」という見方は、順序が逆です。国内の鋼材マージン悪化は中国の過剰供給という構造的な問題で、当面直りません。直らないからこそ2兆円かけて米国に出たわけで、その米国が効き始めているというのが今回の決算です。

国内で戦えば中国とのコスト勝負になる。米国は輸入関税で守られていて、鋼材価格が高く維持されます。価格が取れる市場へ利益源を移す。そういう話です。

依存ではなく、戦略が数字になり始めた段階だと思ってます。買収した会社の利益は買収した側の利益で、そこを割り引いて見る理由はありません。

ただし性格は変わりました。国内市況リスクが米国市況リスクに置き換わったのであって、消えてはいません。しかも米国の鋼材価格は関税政策と直結しているので、日本製鉄はいま通商政策に業績を握られた会社になったとも言えます。強みと弱みの両面です。

もうひとつ、貸借対照表に買収の痕跡が残っています。減価償却費が前1Qの965.93億円から今1Qは1,672.90億円へ、73%増えました。有形固定資産も5.90兆円から6.07兆円へ。償却負担が年間で数千億円規模で増えた状態で、それを吸収してなお増益になっているという読み方ができます。

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