聞こえる午睡(8/17東京新聞「平和の俳句」2026)
東京新聞「平和の俳句」(17日目)を鑑賞します。
〈平和の俳句〉
戦争の音の聞こえる午睡(ごすい)かな
北村朋香(16) 埼玉県狭山市
午睡は夏の季語。その午睡の中で、夢かうつつか「戦争の音」がきこえた、というのが掲句のおおよその意味。
この「戦争の音」から、私がすぐに思い浮かべたものがある。外国人排斥の声が大きくなっていることである。
いつ頃からだろうか。選挙運動で聞こえてくる演説に、ヘイトスピーチ紛いの言葉が飛び交うようになったのは。
「取るに足らないこと」と捨て置くことはできない。「外国人のことだから関係ない」と等閑視してもならない。なぜか。
戦争は、ある朝突然、何もないところから始まるものではないだろう。その前には、人と人との間に線を引く言葉があり、かりそめであれ誰かを敵とみなす空気があり、それを「仕方がない」と受け流す沈黙がある。
これは、言うなれば、社会全体に可燃性のガスが蔓延するような状況にたとえることができる。そこへ、何か一つ引き金となる出来事が起きたらどうなるだろう。
NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』に、印象的なシーンがある。アメリカの海軍戦略家アルフレッド・マハンが秋山真之に、民衆感情を刺激する些細な出来事があれば、アメリカとスペインは開戦するだろうと告げるシーンである。
(※このセリフは、原作である司馬遼太郎『坂の上の雲』には存在しない。)
火花は、たちまちガスに引火する。だからこそ、社会を分断するような動きに無関心でいてはならないのだ。
渡辺白泉〈戦争が廊下の奥に立ってゐた〉のように、ある日突然、目の前に戦争がいるかもしれない。
そのように考えると、16歳の作者がとらえた「戦争の音」という言葉がじつに恐ろしく響きだす。
夢かうつつか。
夢であれば、寝直して別の夢を見ることもできる。が、うつつであったとしたら、その時私たちに何ができるのだろうか。
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